君はお酒が入ると饒舌になる。
話題は決まって過去の自慢話。
何度目か分からない話を新鮮な気分に見えるように相槌を打つ。
知らないふりが上手くなった。
繰言を聞いて、適当に笑う。
君が未来の話をしなくなったのは、いつからだろう。
これが歳を取るということなのだろうか。
過去ばかりを見る
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僕の知らない人と君は楽しそうに笑っていた。
それはとても幸せそうな光景で、僕は声をかけることができなかった。
僕の知らない君の横顔。
僕は選択を間違っていることを知った。
君は優しくしてくれる人が必要だったのだ。
僕のように冷たい言葉しか話せない人物は不必要だった。
それを思い知る
電車を乗り継いで海までやってきた。
少女はさっそく靴を脱ぎ、波打ち際で戯れていた。
青年は流木を拾い砂に文字を書く。
波にさらわれて消える文字に、この時間が永遠に続くものではないと知る。
歳相応にはしゃぐ少女を眺めながら、終わりなんてこなければいいのにと思った。
浜風が頬を撫でた
「結婚指輪、金で良かったの?」
何度目かの確認だった。
日本ではプラチナ主流なので18金の指輪は珍しい。
店員さんにも、何度も言われた。
少し野暮ったい印象を与えてしまうのだろうか。
それでも18金が良かった。
祖母の薬指にはまっていた指輪が18金だったからだろう。
美しいと思った。
「キスしたことがないの?」と不思議そうに言われた。
それは馬鹿にされたというよりも、奇妙な生き物を見るような目だったので辛かった。
今までの人生、異性を好きになったことがない。
だからといって同性に恋しているわけではない。
恋愛自体に興味がないのだ。
理解されづらい感覚なんだろう
寒さを言い訳にして、もっとくっついていようよ。
こんな機会は二度とない。
君の冷たい手を握りしめながら、ベッドへのお誘いを考えている。
どうすれば僕の部屋に来てくれるだろうか。
理由なんて後から考えればいいと思う。
凍えた身体を重ね合わせて、温まろうよ。
話はそれからでいいと思う。
平年よりも開花の早かった桜は、もう葉桜になっている。
花見客でにぎわっていた公園も今は穏やかな昼下がりを楽しむ人たちが散見するだけだ。
夏日の今日はベンチに座っているだけで眠気に誘われる。
自由な時間が無為に過ぎていくのは、休日らしい過ごし方で気に入っている。
陽気に身を委ねる
目をあわせたその一瞬、恋に落ちました。
一目惚れというのは世に存在するのだ。と、初めて知りました。
その人の声も、その人の性格も、全く知りません。
それでも、その人がいるだけで胸の鼓動が跳ねたのです。
二度と逢うことができないかもしれません。
だから、その人のことを心に刻みました
息が上がる。
青年はいったん路地裏まで避難をする。
神剣・神楽があったとしても、一対多数は辛い。
しかも敵は連携が取れている。
できるなら一対一にもっていきたいところだ。
無事に帰ると、少女と約束したのだ。
青年は神剣・神楽の柄を握り締めた。
鞘払うと、夜の街に身をくりだした。
「あなたのことが嫌い」と少女は言った。
「僕は君のことが好きだよ」目の前の少年は困ったように微笑んだ。
「嫌われても一緒にいたいほど」少年が言った。
少女はどうしても素直になれなかった。
簡単な嘘くらい見抜いてよ、と自分勝手なことを考える。
今更、好きだと言っても伝わらないだろう
「死にたい」あなたはポツリと零した。
あなたの瞳には輝きというものがなかった。
心まで磨り減ってしまったのだろう。
ただ『楽になりたい』という気持ちが漂っていた。
ここで死んでしまった方が楽なのだろう。
「私の為だけに生きて」エゴをぶつけた。
「あなたがいないと寂しいの」と言った。
「ねぇ」彼女が切り出した。
嫌な予感しかなかった。
「お花見に行かない?」彼女は言った。
これが昼間だったら、それほど違和感のある言葉ではなかっただろう。
でも今は深夜。
夜桜のライトアップも終わっている時間だ。
「今から?」僕は念のために尋ねた。
「もちろん」彼女は微笑んだ。
君を好きになってから、どれぐらいの月日が流れただろう。
君のことを考える時間は増えていった。
ずっと仲良いの良い友だちでいられたら、どんなに素敵だっただろう。
でもそれだけでは我慢ができなくなっていった。
だから僕は告白した。
「ごめんなさい」と君は言った。
知ってたよ、君の答えは
「生きる」理由なんて、とうになくしていたのに。
あの日、君の手を離してしまった時に。
それなのに未練がましく生を繋いできた。
首を掻っ切る度胸もなく、胸にナイフを押しつける勇気もなく。
君が傍にいないことを、毎日確認している。
それだけで一日が終わる。
涙は昔に枯れ果てて零れない。
恥ずかしがらずに、好きだって言ってよ。
そうしたら、僕ら最強に両思いだ。
二人の間には、たくさんの想い出があるよね。
積み重ねてきた日々がとても愛おしい。
僕が君を好きで、君が僕が好き。
シンプルな構図じゃないか。
二人だったら、何でもできそうな気がする。
君だってそう思うだろう。