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「 140文字の物語 」
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あいつとあの子はお似合いなぐらいなバカップルだった。
周囲に冷やかされながら、節目を迎えた。
真っ白なモーニングと真っ白なドレスで赤い絨毯を歩いていく。
一度もおめでとうと言ったことがなかった私にも招待状を送ってくれた。
私は泣きそうになりながら、両手を軽く握る。
化粧が落ちる。
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少女との想い出は夏が多かった。
少女がまだ学生だったからだろうか。
二人は自然に惹かれあい、自然に恋人同士になった。
一番行った場所は海だっただろうか。
泳ぐ目的ではなく、砂浜でシーグラスを集めるではなく。
波打ち際を歩くにとどまった。
「もう一度、あの夏で想い出を作りましょう」
聖女様は月光の化身のようだった。
闇夜を照らし、安寧をもたらす。
人々に休息を与える。
太陽とはまた違った慈愛を持っている。
いざ対面すると緊張で言葉が出なくなった。
「何をお望みですか?」聖女様は問いかける。
望みなんて大それたものを持っていなかった。
ただ聖女様に会ってみたかった
闇のように真っ黒な猫が路地裏に走っていく。
興味が惹かれて猫を追いかけた。
雑多物であふれる空間はスチームパンクで出てきそうだと思った。
猫は水色のゴミ箱の上でくつろいでいた。
思わず手が伸びる。
撫でたくなるような毛並みだった。
猫は上目遣いで、指先に爪を立てる。
まるで女王様だ。
「話があるの。帰りに時間をとれる?」好貴が訊いてきた。
嫌な予感が押し寄せてきた。
別れ話だろうか。
楽瑠から無理矢理付き合ってほしいと、懇願した関係だ。
他に好きな人ができたのだろうか。
女々しい思考回路に言い訳をするが、上手くいかない。
「大丈夫だよ」物わかりの良い笑顔で答えた。
ロケットへの憧れは純白のドレスよりも大きかった。
両親に孫の顔を見せられないのは申し訳なく思った。
それでも自分が設計したロケットが宇宙へと発射される。
科学に貢献できる。
そんな未来を思い浮かべると情熱の方が打ち勝った。
まだまだ下っ端だがいつか青空へと打ち上げられる姿が見たい
石鹸で洗っても消えない。
まるで刺青のように手の甲に書かれた文字は、はっきりとしていた。
油性のボールペンで書いたのが良くなかったのだろうか。
筆記する場所がなく、とっさに自分の手に書いた。
「メモを取るから待ってほしい」そう言えなかった自分を悔やむ。
さっきから手を洗っている。
与えられた自由は狭く、息が詰まるほどだった。
「誰のものだとお思いで?」と令嬢は扇越しに笑った。
仕える主は美しい代わりに、棘があった。
まるで咲き誇る薔薇のようだった。
「貴方様のものです」僕は答える。
「よろしい。分かっているわね?」令嬢は念を押す。
「はい」と僕はうなずく。
元は野良猫だった。
がりがり痩せていて、平均の半分ほどしか体重がなかった。
人間を見ると怯えて、動物病院に連れて行くのも大変だった。
それが月日が流れたせいか、人間に慣れてくれた。
ざらざらとした舌が手をなめる。
すっかり飼い猫のようになった。
野良猫だったとは思えない姿だった。
月光を浴びた緑は昼間と違った顔を見せる。
独りで見るとなおさら違って見えた。
涼しい風が吹いて緑を揺らす。
木の葉のこすれる音は、どこか寂しかった。
ここにはいない君は元気で過ごしているだろうか。
小さな町を飛び出してから、ずいぶんと経つ。
僕は君が好きから幸せであることを祈る。
君と手を繋いで歩きたかった。
けれども、君は自由だ。
いつでも僕の一歩手前を歩く。
二人並んで歩くなんて出来なかった。
そんな君の手を掴みたかった。
臆病者の僕は君に嫌われたくなくて勇気がなかった。
嫌々ながら、自分の手のひらを軽く握る。
昔からずっとそうだった。
僕は君を追いかけた。
「貴方のことは尊敬しています。でも恋ではありません」秘書官は言った。
それを聞いた王様はためいきをついた。
「愛してくれてはいるのだろう?」王様は言った。
「勿論、敬愛しています」秘書官は生真面目に答える。
「妃になって欲しい」王様は求婚する。
「何回言ったら信じてくれますか?」
TVも新聞も飛行機落下事故を伝える。
夫が乗っていた便だ。
まだ「愛している」と言い足りない。
こんな別れは想定していなかった。
ふと玄関に気配がした。
帰ってくるはずのない人がいた。
「仕事に時間がかかって乗る飛行機を遅らせたんだ」
夫の無事の姿に、子供のように泣く。
「心配かけたね」
初めて二人で迎える夜だった。
清らかな交際だったから、二人分の布団に途惑う。
それは彼女も同じだったらしい。
花嫁は目を逸らしつつ、僕の指をぎゅっと握る。
緊張で震えているのが伝わってくる。
だから僕は安心できるように、額にくちづけを落とす。
「怖かったら言って」僕の言葉に頷く。
私が私でいるために、恋を捨てた。
終わりの見えている恋に縋りつくことができなかった。
そんな可愛くない私だから、貴方も頷いたのだろう。
貴方と共に歩いた海に、今日は独り。
海に沈めたあの日の思い出は、浮かび上がることはないだろう。
寄せては返す波を見ていたら、涙があふれてきた。
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