空はぼんやりとした雲に覆われていた。
月も朧気な輪郭を地上に投げかける。
思わずためいきをついた。
今日も星空は見えないみたいだ。
流れる星に願いをかけたかったけれども無理のようだ。
淡い光の中、立ち尽くす。
今頃、君はまどろみの中にいるのだろうか。
見果てぬ夢を見ているのだろうか。
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ずっと一緒だと思っていた。
けれども君は未来を見ていた。
夢を追いかけて旅立つ君を笑顔で見送った。
君の願いが叶うなら、どんなに素晴らしいだろう。
だから僕は涙をこらえて星空を見上げる。
君と一緒に見上げた空。
君と繋がっている空。
君の夢が叶いますように。
心が折れずにすみますように
結界が溶け落ちる。
眩しいぐらいの朝がやってきていた。
青年は神剣・神楽の柄を握る。痛みが少し和らぐ。
少女は大きな瞳に涙をためて待っていた。
「ありがとうございます。何もできなくて申し訳ないです」大粒の涙が頬を伝う。
「いや、一緒にいてくれるだけで充分だ」と青年は淡々と言った。
「どうしよう」幼馴染みがテストの答案を見て呟いた。
どうやら芳しくない点数だったようだ。
「これじゃあ、夏休み中勉強させられちゃう」幼馴染みはこの世の終わりのような声を出す。
「そっちはどうだった?」鞄にしまってあった答案用紙を見せる。
「ずるい」と零された。
ずるいのはどっちだ
君は話し上手だ。
僕はいつでも君の話に丸めこまれてしまう。
今日もそうだった。
「こんな暑い日にはアイスを食べるのは当然だよ」と君は笑う。
「コンビニに寄ろうよ」非の打ちどころのない流れだった。
帰り道にあるコンビニでアイスを買って、食べながら歩く。
暑さが和らいだような気がする。
遠方の友人にボールペンで手紙を書いていた。
元気でやっているだろうか。
学生時代は、色なん事を一緒にしたな。
そんなことを思い浮かべる。
今は手紙のやりとりをするだけになってしまったが、親友と呼べる人物だった。
垂れ流していたテレビに速報が入る。
友人の住む場所で地震が発生したと。
眩しい季節に君は新しい恋をした。
たった一人を深く愛しすぎる君だから、僕はハラハラした。
今度こそはハッピーエンドを迎えるような恋だといい。
そんなことを思っていた。
けれども、その恋はあっけなく終わった。
まぶたを腫らして僕に報告した君を抱きしめたいと思った。
ただの友達は辛いよ
私は素直じゃなくて可愛くない女。
「俺のこと好きなんだろう?」と幼馴染みが言った。
「いや、嫌いだし」と私は答えた。
「だって、いつも一緒にいるし」とめげずに幼馴染みが言う。
「自信過剰」と私が言うと幼馴染みは落ち込んだようだ。
長い付き合いなんだから、簡単な嘘くらい見抜いてよ。
僕と君の間に、冬がやってきた。
木々は葉を落とし枝には電飾が巻きつけられていた。
寒さに反比例するように、街は光で溢れていた。
僕は初めての恋人が嬉しそうにする横顔を見ているだけで充分だった。
君がぎこちなく、僕の指先を握る。
耳まで赤くなっている君を見て、僕は力強く握り返した。
休日、街を歩いているとクラスメイトとばったりと顔を合わせてしまった。
「デートか?」彼女連れのクラスメイトは笑いながら尋ねてきた。
「ただの幼馴染みだよ」と僕は言ってしまった。
嘘偽りではなかったけれども事実でもない。
「色気のないことで」クラスメイトは立ち去った。
「世界が君と僕だけになってしまえばいいのに」と僕は言った。
君は眉を顰める。
「他人なんていらないよ。君は僕だけを見ていればいいんだ」僕の言葉に君はためいきをついた。
「なんて物騒な願い事を考えるの」と君は言った。
「だって、それが僕の本心だよ」僕の答えに君はますます困惑した。
それは些細なことだった。
仕事が上手くいかなかった。
暑さで苛立っていた。
だから、君のささやかな言葉に強く言い返してしまった。
君は泣き顔で、僕の指先にしがみつく。
「ごめんなさい。だから、別れるとか言わないで」君は嗚咽混じりに言った。
「こちらこそ、ごめん。ただの八つ当たりだ」
掠めるように一瞬、ふれあっただけだった。
それなのに心臓はバクバクと鳴る。
新しいステップを踏んだことで、言葉にできない感情でいっぱいになった。
初めてのキスは優しいものだった。
間近にある瞳に間の抜けた自分が写っていた。
世の恋人同士がキスをするのか分かったような気がした。
君は泣き顔で、僕の腕をぎゅっと握る。
「行かないで」蚊の鳴くような小さな声で言う。
いつものように頬を伝う涙を拭ってあげたかった。
けれども、それはできない相談だった。
「君を守りに行くんだよ」と僕は言った。
戦は怖かったけれども、大切なものを守るためだと思ったら、勇気が湧いた。
少女はポロポロと大粒の涙を流す。
それを少年はおろおろと見守るだけだ。
どうすれば少女が泣き止むのかわからない。
少年がほとほと困っていると、少女が手を差し出してきた。
少年は勇気を奮う。
本当は涙を拭ってあげたいのだけれど。
仕方なく、指を触れ合わせる。
少女は少年の指をつかんだ。