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「 140文字の物語 」
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君は白い顔をさらに白くしてやってきた。
夜分遅くやってきた君は言葉を忘れてしまったようだ。
黙って椅子に座っていた。
どれぐらい時間が経過したのだろうか。
出した茶の湯気が消えるぐらい沈黙は続いていた。
「明日死ぬんだってさ、晴れでよかったよ」
「逃げよう」悲痛な表情で君は言った。
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恋愛遊戯も政治論争も飽き飽きしていた。
グラス片手にひとりパーティー会場を眺めていた。
良い酒なんだろうが悪酔いしそうだった。
ふいに人波をかき分けて、幼馴染がやってきた。
「ダンスを踊る相手もいないんでしょ」と幼馴染が言う。
「特別に私が躍って差し上げる」堂々と、両手に触れる。
泣き顔で、自分の指先を握り締める彼女にかける言葉が見当たらなかった。
まだまだ子供の自分は出来ることが限られている。
永遠の別れになるかもしれない。
分かっていても慰めの言葉も優しい言葉も出てこない。
このまま誰も知らない街まで逃避行をしたいと思った。
出来るわけないと知っている
いつでも壁の花。
最初のダンスを兄と踊ってから、それからは華やかなパーティーを眺めているだけだった。
いつか私だけの王子様がきて、変えてくれることを期待していた。
その日も、壁の花になっていた。
異国からの客人が手を差し出した。
たどたどしい言葉でダンスに誘われた。
いつだって想っている。
まるで向日葵になってしまったように。
まるで惑星になってしまったように。
貴方という太陽を追いかけてしまう。
それ以外は、興味が薄れるほど好きになっていた。
貴方がいないと生きていけない。
息の仕方が分からなくなる。
だからその気持ちを告白した。
返事はいらない
あなたは優しい人。
その心根のように、彼を見つめた。
言葉にすることもなく、ただ優しい感情を降り注ぐだけ。
あなたはそれを、恋といった。
僕の中では、激しい嫉妬が渦巻いていた。
あなたが彼に向ける優しさのカケラでも欲しいと思った。
そんなことありえないことは分かっていた。
優しい人。
背が高くて痩せすぎな体型。
レースやフリルがあしらわれた可愛い服が好きだった。
買いたくてもちょうど良いサイズはない。
でも、どうしても着てみたかった。
だから、苦手な裁縫を頑張って自分サイズの可愛い服を作った。
似合わないくせにね。
鏡の中に映った自分は悲しいぐらい不格好だった。
普通って何?
好きな人がいて、勉強を頑張って、色付きリップを塗って、それから……。
親からもらったお小遣いで過ごして、門限前に帰ってきて。
その後、家族で食卓を囲んで、流行りのドラマを見て。
そのくりかえしを普通と呼ぶなら、とても窮屈な生き方だと思う。
でも、それ以外は知らない。
「そっちも美味しそう」と幼馴染みがへらへらと笑う。
自動販売機の側で喉を癒しているところだった。
「一口頂戴、なんて簡単に言わないで」と私は言った。
「ケチ」幼馴染みは唇を尖らせる。
「僕のも一口あげるから。交換しようよ」となおも食い下がる。
間接キスになることに気がついている?
君の視線が彼を追っていることは知っていたよ。
まるで向日葵のように見つめていた。
君が彼のことを好きなのは気がついていたよ。
それでも言わずにはいられなかった。
どうしても意識して欲しかった。
君は僕が人畜無害な人物だと思っているから。
君のことを好きな男の一人だと知って欲しかった
みんなで賑やかに夏祭りに行くのは楽しかった。
いつも一緒の仲良しグループだったから一緒に行動するのも悪くなかった。
でもね、ふたりっきりでいたかった。
浴衣を着て、髪形も変えて、めいっぱいおしゃれをした。
その姿を褒めて欲しかった。
打ち上げ花火を見ながら他愛のない話をしたかった
いつもの放課後。
一緒に歩きながら、季節が変わっていくのを感じる。
そんな風に二人の関係も少しずつ変わっていく。
ただの幼馴染みから『ただの』が『大切な』幼馴染みに変わる。
「ねえ、好きだって知ってた?」と幼馴染みが言った。
「そうだったらいいな、と思っていた」と素直に答えた。
「一生、傍にいてほしい」紛れもないプロポーズだった。
「うん」思わず照れてしまう。
目を逸らしつつ、指先を握り締める。
「エンゲージリング、はめられないんだけど」と言われる。
パッと手を離す。
いつもの癖で指先にを握ってしまっていた。
左手の薬指に指輪を通してくれた。
誕生石が煌めく
せっかくの休日。
溜まっていた家事を片付けて終わるのはもったいなかった。
珍しく休みが重なったのだから、どこかへ出かけたかった。
それなのに彼は横たわってスマホをいじってゲームに熱心だ。
悪戯心を起こして無防備な足の裏をくすぐる。
「かまってほしいなら素直に言え」と彼は顔を上げた
硝子の欠片が心に刺さったような痛みだった。
化粧をして喪服に袖を通す。
いまだに彼がいないということが信じられない。
棺桶の中、眠る彼を見ても実感が湧かなかった。
もう笑いかけてくれることはないのだ、と思うと辛い。
彼が煙になって日常から欠落したことに気がつく。
泣きたいのを耐える
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