忍者ブログ
「 140文字の物語 」
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ここまで人間に愛される植物はあるだろうか。
出会いの象徴として、巣立ちの象徴として、別れの象徴として。
人生の節目節目を彩ってくる。
咲くまでハラハラさせて、1週間も持たずに散り始める。
まるで人の子のような花だった。
その花の名前は「桜」。
誰もが知っている植物であり、歌う花だ。
PR
-
正義の名の下に振るわれた暴力。
いつだって一番の弱いものが受ける。
どれだけ大義を掲げられても、今日いちにちを暮らすだけの民草にとって遠い話だ。
家族が温かな食事を囲み、暖かい寝床で眠れる。
明日の心配をせずに一日が終わる。
それだけが幸せなのだ。
誰の名の下であっても構わないのだ。
あれは悪魔の囁きだったのに違いない。
甘い誘惑に乗ってしまい眠ってしまった。
ただでさえ苦手な教科のテスト前。
睡眠時間を削ってでも、問題集の見直しとノート整理をしたかった。
苦手教科だということもあって舟をこぎ始めた。
仮眠をとるつもりが、アラームが鳴る時間まで爆睡してしまった。
朝、目覚めると音がなかった。
夜更けには強風で雨戸が鳴っていたというのに。
不審に思いながら、窓を開けた。
そこには一面の銀世界が待っていた。
雪が音を吸収していたのだ。
滅多に見られない光景に胸が躍った。
子供の頃のように雪だるまを作りたい。
わずかな積雪だから冷蔵庫サイズだろう。
少女は台所にこもって、なにやら支度中だった。
自分の他に誰かがいる。
忘れていた感覚だった。
人の気配を感じられるのは嬉しい。
台所から小さな悲鳴が上がった。
居間から青年は台所に向かう。
青年が現れたことに少女がびっくりしたのか硬直した。
青年は少女の頬についた生クリームを舐める。
強風が吹き、梢が揺れる。
木の葉を落とした枝は魔女の指先のようだった。
闇夜に紛れて、影が盗まれても分からないだろう。
少年は少女の手首をつかんだ。
此岸に持っていかれると思ったからだ。
指の腹から、少女の脈拍を感じた。
それが生命の拍子だということに安心した。
少女は消えたりしない。
鏡に向かって化粧をする。
仕上げに真っ赤なルージュを唇に引く。
ムスクが香る香水を吹きかける。
武装は完璧だ。
歳が離れているのは、どうやっても埋めることはできない。
だからせめて、歳よりも大人びて見えるように努力をする。
背伸びだということは分かっている。
本当は似合わないくせにね。
-
ずっと言いたかったことがあったんだ。
でも、それを言ってしまったらいけないような気がしたんだ。
だから静かに口を閉じた。
胸の奥底に仕舞いこんだ。
時間が経てば経つほど、それは大きく育っていく。
自分でもコントロールできないぐらいだった。
溢れだした気持ちは綺麗なものじゃなかった。
どちらかというと、クラスの中では埋没するような女子生徒だった。
美人ではないし、ムードメーカーでもない。
話の中心になるような存在ではなかった。
おとなしそうだから、次の彼女にしてみるのも楽しそうだ。
そんな風に舐めてかかったことを悔いる。
彼女は芯の強い、そう「大和撫子」だった。
幼なじみは綺麗になった。
木登りもしなくなったし、カエルの卵を持ち帰らなくなった。
一緒に遊ばなくなってから、ずいぶん経つ。
それでも朝夕一緒に通学路を歩いた。
制服がくたびれた歳になっても変わらない。
「告白されたんだ」幼なじみは言った。
「そう」うまく笑えてないのは自覚してる。
音楽を聞きながら雑誌をめくっていた。
グラスが空になったから「おい」と君を呼んだ。
そして気がつく。
君はもうここにはいない。
独りぼっちの空間は広すぎた。
君がいないことが信じられない。
でも返事がないのが答えだ。
目が潤む。
雑誌をテーブルの上に置き立ち上がる。
君の好きな曲をかける
最初に好きになったのは、僕の方だった。
初めて出会ったような気がしなかった。
長い歳月を経て、再び巡り会った恋人のように思えた。
ようやく見つけた。
そんな感動で心が震えた。
それなのに君は僕以上に想ってはくれなかったようだ。
ありふれた出会いの中で、告白されたから付き合ったようだ
「怪我も役目の内。なんて言わないでください」結界から出て投げつかれた言葉だった。
「神剣・神楽があれば時期に治るよ」青年は言った。
実際、痛みはだいぶ引いてきた。
「そんなために渡したのではありません」少女は大きな瞳に涙を浮かべる。
「ありがとう」青年は力強く、少女の指を握る。
彼女の自由奔放さに惹かれた。
自分の周囲にいないタイプだった。
こだわりにとらわれない姿は羨ましかった。
太陽の傍にいると錯覚した。
交際を申し込んだら快諾されて嬉しかった。
一緒にいる時間が増えると欠点が見つかる。
彼女の自由さが苛立つ。
もう黙っていることに疲れてしまったんだ。
居間で新聞を読んでいると焦げた香りと煙が漂ってきた。
少女がお菓子作りに挑戦していたはずだ。
失敗したのだろうか。
料理は上手でもお菓子作りは不得手なようだ。
母もそうだったと思い浮かべる。
青年は新聞を置くと台所を覗く。
「大丈夫か」尋ねると涙目の少女が炭化した菓子を持っていた。
PREV ← HOME → NEXT
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH