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「 140文字の物語 」
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「どうして生きていなきゃいけないの?」少女が訊ねた。
頬には涙痕がくっきり残っている。
「死なせてよ」少女は言った。
どんな言葉をかければ、少女を救うことができるのだろうか。
こんなとき、言葉は無力だ。
少女を強く抱きしめる。
「死なせない」と言うと腕の中の少女は静かに泣き出した。
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「約束です」少女は小指を差し出した。
青年はそれに自分の小指を絡める。
「約束だ」
「約束を破ったら針千本飲んでもらいますからね」世俗のことに若干疎い少女は言った。
約束を破ったら青年は死んでいることに気がつかない。
そんな少女の無垢さにありがたさを感じる。
出会えて良かったと思う
休日の駅前は混んでいる。
待ち合わせの時間より早くついてしまったのは期待しているから。
約束の時間まで、まだ間があった。
「ねぇ、一人?」声をかけられた。
「どこ住み?俺この辺、詳しいよ」見るからに苦手なタイプだった。
返答に困っていると「いい度胸してるね?」と待ち人がやってきた
-
貴方の声は揺り籠のよう。
優しく胸に響く。
飲みこんだ言葉も柔らかく解してくれる。
眠れぬ夜に明けぬ夜がないと教えてくれる。
目を閉じるのが怖い、と子供のような我が儘に付き合ってくれる。
眠りの落ちる瞬間まで手をつないでくれる。
自分とは違う体温に心が安らぐ。
もう少しこのままでいて
いつか来る別れのための予行演習は何度もした。
二人が同じ道を歩いていけないのは知っていた。
『ずっと』はないのだと気がついていた。
それなのにいざ別れの瞬間が来たら未練がましくなってしまった。
泣きそうになりながら、指先に指を絡める。
この温もりを想い出にしたくない。
そう思った。
僕らにとっての世界の終わりがきたようだ。
いつか思い出した時、寂しくないように笑顔でお別れをしよう。
君と過ごした時間は、どれもこれも新鮮で刺激的だった。
出会いは無駄ではなかった。
そう思えるほど幸せだった。
すべてを過去形にして、つないだ手を離そう。
君の涙をぬぐうのも最後だ。
恋人が隠し事をしているのは気がついていた。
嘘をつくのが苦手なタイプだ。
ふいに増えた残業の時間。
休日出勤までしている。
仕事にのめりこむ性格ではない。
恋はこんなファミレスで終わるのだろうか。
「言ってくれなきゃわからない」とぶつけた。
すると恋人は指輪の入った小箱を取り出した。
「お願いがあるの」少女は言った。
「話だけなら聞いてもいいけど?」少年は溜息まじりに言った。
「本当?」
「嘘をついてどうするの」
「あのね。週末お花見に行かない?」少女は期待に目を輝かせる。
この瞳に弱い。
混雑するところが苦手な少年にとって避けたい場所だ。
それでも頷いてしまう。
大切な話がある、と恋人が切り出した。
恋人は深刻な顔をしてテーブルを凝視していた。
家族連れでにぎわうファミレスには不釣り合いな光景だった。
「別れてほしい」と恋人は言った。
こちらの目も見ずに一方的に突き付けてきた。
そんな予感はしていた。
笑い飛ばしてしまいたかったのに失敗した
陽光と月光が対等でないように、二人の生まれは対等ではなかった。
神のわずかな慈悲だろうか。
父母は二人を比べずに愛してくれた。
対のように生まれてきたのだ、と。
二人に差はないのだ、と。
何度も口にしていてくれた。
でもそれでは進むことはできない。
二人には別々の道を用意されていた。
「たとえばの話をしようか」青年は言った。
縁側でふてくされた少女と目が合う。
「君は隣国の姫様」青年の言葉に少女の瞳に光が宿る。
「僕はただの騎士。姫様の護衛を申しつけられた末端貴族」
「それで?」少女は結末を知りたがる。
「この先は思いつかないから、二人で考えよう」と青年は言う
戦い前に神剣・神楽と向き合うのはいつもの習慣だった。
神経を研ぎ澄ませる。
落ち着いた気持ちで神剣・神楽を握る。
それなのに今日は胸がざわめく。
浮足立っていては勝てる戦いも勝てなくなる。
青年は息を整える。
少女の元に無事に帰ってくる義務がある。
少女のことを考えると心は凪いでいく
神社仏閣めぐりの趣味のクラスメイトに付き合って、神社にやってきた。
森林に囲まれた空間は非日常だった。
一歩、外に出ればどこにでもある街並み。
ここはそこから切り取られていた。
御朱印をもらっている間、絵馬を眺めていた。
「私のものにならないなら死んで」
なんて物騒な願い事だろう。
今朝見た時、部屋の室礼は完璧だった。
主が目覚めるのを待つかのように道具たちは鎮座していた。
それが昼餉の準備が整ったことを知らせようと入室すると嵐が起きたかのように様変わりしていた。
主が癇癪を起こしたのだろう。
「呆れた?」主が言う。
「手間のかかる子ほど可愛いと申しますし」
二人は秘密の恋人同士だ。
周囲が反対するのが分かっている。
だから、一度は離れ離れになった。
距離を置くと置けば置くほど、好きという気持ちが膨れ上がった。
姿が観たい。
話をしたい。
だから、人前では赤の他人の振り。
好きだという気持ちを押し殺してふるまう。
恋の炎は身を焦がすほどだ。
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