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「 140文字の物語 」
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君は僕から離れていこうとしていた。
優しい笑顔で距離をとる。
僕は泣きそうになりながら、君の指に触れる。
君は「どうしたの?」と尋ねる。
勇気を総動員して僕は口を開く。
「君のことが好きなんだ。ずっと傍にいてほしい」思っていることを言った。
「あなたには敵わないな」君は小さく笑う。
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「願い事はありますか?」青年の問いに、少女は首を横に振った。
日々は恵まれている。
共に過ごす時間は穏やかで幸せをもたらす。
願い事はない。そう思えることは幸福なことだと知っている。
これ以上、望んではいけないことも。
欲張りは不幸せの始まり。
足りない、と思うことは今を否定する。
-
「忘れ物をしたのです」と青年はひどく焦った顔をして言った。
だから「大丈夫ですよ。すぐ見つかりますよ」と気安く言ってしまった。
「では、教えてください」青年は言った。
驚く間もなく、抱き寄せられた。
「あなたの心の中に僕の心を忘れてしまったのです」青年の胸の鼓動はしなかった。
「知られちゃいけないことができたな」と僕は呟く。
君は不思議そうに僕を見上げる。
そんな君の耳元でささやく。
「僕の弱点イコール君、だってこと」いつになく接近したからか、君の肩が揺れた。
「本当に、どうしてくれよう」と僕は君の頭を撫でる。
「ごめんなさい」君はすまなそうに謝った。
「何度も、電話をかけたのよ」帰るなり、玄関先で母に怒られた。
「携帯の充電が切れちゃってさ」少女は言い訳をした。
「それなら、持っている意味がないわね。ゲームをするために買ってあげたんじゃないのよ」
母の怒りはもっともだ。
「不審者も多いんだから」
「ごめんなさい」少女は謝った。
『将来何になりたい?』と教師役の漢学者が尋ねた。
子供たちはめいめいに答える。
「武士になりたいです!」少女が言った。
「女が武士になれるわけないだろう」と隣の席の少年が鼻で笑う。
喧嘩になりそうなところを漢学者は割って入る。
少女は悔しそうにうつむく。
銀の簪が涙の代わり揺れる。
軸が水晶のように透明なボールペンはお気に入りだ。
卒業の時に記念に貰ったものだ。
名前が彫られていることに照れる。
見る人見る人『そのボールペンは?』と尋ねられる。
それほど美しいボールペンだった。
インク乗りも良く、すらすらと書ける。
本当に重宝している。
仕事柄何本あってもいい。
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夜が来る前に君に会いに行こう。
夜は君を隠してしまうから。
太陽の下、笑う君がいい。
夜のとばりが降りる頃、君は影を帯びた瞳をする。
心細いのだろうか。
華奢な君の肩を夜が抱き締めようとしている。
僕は必死に引っ張るけれども、力が足りない。
ああ、明日の朝迎えに来よう。
さあ、お休み。
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手と手がふれあった瞬間。
何かが生まれました。
私とあなたの間に生まれてきた感情は、泣きたくなるような、笑いたくなるような。
ただ二度と離してはいけないことだけは分かっていました。
きっとあなたも同じ気持ちだったんでしょう。
言葉はいりません。
そんな無粋なもので形作ってはいけない
-
独りぼっちが寂しかった夜。
星ばかり見上げて涙をこらえた夜。
あなたから着信があった。
「どうしたの?」と明るい口調で尋ねた。
そしたら、あなたは「声が聞きたかったんだ」と照れているように言った。
ドラマじゃあるまいし、恥ずかしい理由だと思ったけれども、優しさに涙が零れ落ちた。
いつの間に心がすれ違っていたのだろうか。
同じものを見て、喜びを分かち合う。
同じものを見て、涙を零す。
二人は全く違うのに、ずっと前から一緒だったようにぴったりと合わせられていた。
それが今は違う。
君が何を考えているか、分からない。
二人はいつでも同じ気持ちだったはずなのに。
「酔ってるだろう?」道の先を行く彼女に声をかけた。
「酔ってませーん」とやたら陽気に答える。
千鳥足でふらふらと歩く彼女は完全な酔っぱらいだ。
車通りの少ない道とはいえ危険だ。
足早に僕は彼女に追いつく。
彼女はさりげなく、手のひらに指を絡める。
「どうして手が繋げないの?」と笑う。
あなたは「もう自分の為に生きられない」と小さく笑った。
あなたを襲った災難は、目にも無残な物だった。
だから、生命を終わらせたいと願うのも無理もなかった。
けれども、そんなあなたを引き留めたい。
「私の為だけに生きて」と我が儘を言った。
涙を零す前の目に光が宿る。
「そうだね」
子供の頃は毎日が虹色に染まっていた。
どんなことも楽しかった。
どんなことも嬉しかった。
歳を取るということなのだろう。
苦しいことを知るようになった。
辛いことを知るようになった。
幸せから遠ざかったような気がした。
痛みは目に見える物だけではないと気づいた。
もう虹色の世界は終りだ。
夫になった人は、毎朝、新聞を読む。
朝ご飯の最中に。
こちらに興味はないがないのだろうか。
好物と聞いたものを並べてみても、あまり好きではない物を並べていても、反応は一緒。
とても胸が傷つく。
空になった茶碗を差し出す。
「お替りですね」と笑顔を作り、茶碗に雑穀米を盛る。
「どうぞ」
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