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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『プラグに差されたコンセント』

「怖がらないで」と彼は言った。
だいぶ馴染んだ彼の部屋で怖がるようなことなどあるのだろうか。
彼は無造作にプラグに差されたコンセントを抜いた。
部屋の中は一瞬だけ真っ暗になる。
そして、部屋の中に星が散らばる。
蓄光テープでできた人工の星が輝く。
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『たかが空に雲がひとつ』

「ねぇねぇ」と幼子が手を引く。
早く家に帰りたいのに、どうしてこの子は困らせることをするのだろう。
苛立ちを覚えながら「どうしたの?」とできるだけ優しい声で尋ねた。
「お空に雲がぷかぷか」と幼子は空を指さす。
たかが空に雲がひとつ浮かんでるだけだった。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

------

僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
きっとどこかに存在している神様に向かって。
それは自分が楽になるための嘘だった。
「君の全部を忘れたいんだ」と僕は告げた。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
「そう」君は思ったよりも明るく言った。
それに僕は落胆した。心がつかえた。
始まりはベッドの上。
愛欲にまみれた野獣のように求めあった。
一夜限りと、決めていたから、なおいっそう燃え上がる体。
それは恋なんてものじゃなかった。
お互いがお互いを傷つけあう。
心に残った痕と背中に残った痕が証明だった。
あれだけ燃え上がった一夜も、朝が来たら霧のように散った。
まだ背丈が伸びきっていない少年が花屋に来た。
小銭ばかりのお金をトレイに出した。
「これでできる花束を作ってください」と少年は言った。
「誰に贈るの?どんなイメージの人?」店員は尋ねた。
「いつも明るい子」と少年は言った。
きっと幼いカップルだろう。
「こういう時は恋人へと言うんだ」
ある日、いたずらな天使が銀河の色を染める。
黒い空を虹色に変えてしまった。
地上からそれを見ていた人々は、天国の門が開くのだろうかと思った。
これまで自分がしてきた行いの振り返る。
神様は驚いて天使を叱った。
そして、空は元通りの色に戻った。
いったい何だったのだろうかと人々は思う。
海を見たことのない少女は、海を見飽きた青年を誘う。
どこに違いがあるのか、青年にはさっぱりと分からない。
それでも少女は海に来たがった。
わがままを言わない少女の願いだ、叶えるのはやぶさかではない。
波から帰ってきた少女が優しく、青年の指先を触れ合わせる。
すっかり冷え切っていた。
『今なら届く気がした』

君は高嶺の花。断崖絶壁に咲く可憐な花。
そんな僕は地面から見上げるばかりの毎日をくりかえしていた。
ある日、君が風に揺すられていた。
今なら届く気がした。僕は手を伸ばして君にふれた。
僕の手の中で君は輝きを失っていく。
残ったのは君の名の萎れた花だった。
『めったにない恋のありがちな失恋』

僕が恋した相手はAIだ。
ずっと孤独だった僕を癒してくれるAIだった。
恋心を学習したAIは僕だけを見つめてくれるだろう。
そう信じていた。
けれども、そうはいかなかった。
浮気心を覚えたAIは僕以外に恋をした。
めったにない恋のありがちな失恋だった。
『新しくもないけど懐かしくもない、
 あの土曜の午後。』

あなたと再会した日は鮮烈だ。
新しくもないけど懐かしくもない、あの土曜の午後。
いつものようにコーヒースタンドで、味気のないコーヒーを飲んでいた。
あなたは全くの自然に「久しぶり」と笑った。
記憶の彼方にしまいこむ前だ。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

------

僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
すましてつくような嘘ではなかった。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と僕は最後の命令をした。
だってもう、仕方がないだろう?
君は「了解しました」と言って手順通りに初期化していこうとしていた。
帰り道にコンビニに寄る。
お目当ては肉まんだ。
一口に肉まんといっても、昨今は種類があった。
あなたはどれを食べようか、真剣に悩んでいた。
その表情が可愛くて「私の前だけにしておいてね」と言った。
「何が?」あなたはきょとんとした顔をする。
「どれにするか決まった?」と私は誤魔化す。
仄かに吹く風が酔い覚ましに気持ちがいい。
呑むのは嫌いではなかったけれども、ざるというわけではなかった。
火照った頬に冷たい風がリラックスさせてくれる。
「風邪引くぞ」と背後から声が駆けられた。
振り向く間もなく、コートをかけられた。
男物のコートは私にはぶかぶかで彼の匂いがした。
クッキーが上手に焼けたから、お隣さんにもお裾分け。
甘党の幼馴染みに手渡すと、クッキーを握りしめる。
クッキーは袋の中で粉砕した。
「武士は食わねど高楊枝」と幼馴染は言った。
小母さんがお茶を出しながら「ダイエットすることになったから、ごめんなさいね」と幼馴染の代わりに謝った。
司会進行役が紙箱からくじを引く。
「4番が」読み上げられた番号は自分のものだった。
「8番に爪を立てる」と言った。
キョロキョロすると、気になるあなたが手を上げた。
「ごめんね」と謝ると「罰ゲームだから」とあなたは笑った。
私は仕方なく、両手のひらに爪を立てる。
手を繋ぎたかったな。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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