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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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会社の同僚はどうやら泣き上戸だったらしい。
ずいぶん酒が回ってきたのだろう。
ロンググラスを片手に泣き顔で、僕の腕を指先でつつく。
「私の話、ちゃんと聞いている?」と同僚が尋ねる。
厄介ごとになったなと思いながら「ちゃんと聞いていますよ」と答えた。
「ありがとう」と涙ながら言う。
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『手袋を売りに』

妻がせっせと編んだ手袋を売りに、山から下りる。
そろそろ村の人間にも手袋が必要な時期だろう。
妻が編んだ手袋は色とりどりで、あたたかく手を守ってくれる。
「行ってくるよ」と妻に声をかける。
「気をつけてくださいね」と妻は編み棒を置いて、俺を見送ってくれる。
『私は人を愛せない』

私は人を愛せない。
そうプログラミングされているから。
誰か一人を愛してしまったら、狂ってしまう。
だから人も愛さず、今日も平等に小さな世界を見守っている。
鉱物も、植物も、動物も、何もかもを愛している。
けれども、人を愛せないということは寂しいものだった。
『それ、間違ってますよ』

無礼講になった酒の席だった。
たまたま隣に後輩がやってきた。
「先輩はいつも飲み会に出席していますが、寂しがる相手はいないんですか?」と後輩は鋭い言葉を言った。
「いたらいいんだけどね」と俺は微苦笑する。
「それ、間違ってますよ。相手は作るものです」
「私はずっと願っていることがあるの」と君が言った。
その表情が少し寂しそうだったから「どんな願い?」と尋ねてしまった。
君は僕の左胸を軽く叩く。
「一番心臓に悪い存在になりたいって、思っていたの」君は諦めたように言った。
「でも貴方の一番は私じゃないでしょ?」君の言葉通りだった。
後悔するのを分かっていて、つい大袈裟なことを言った。
恋人がいると、意地を張ってしまった。
生まれた年だけ、恋人がいない歴を更新中だというのに。
「今度、その恋人さんに出会わせて」と君は言った。
ここまで来たら嘘だとは言えない。
「都合が合えばね」と嘘に嘘を重ねた。
君は微笑んだ。
国王陛下に挨拶するのは悲願だった。
荒らされた領地に慈悲を願うものだった。
少しでも税金を軽くしてほしかったのだ。
領民たちは食べる物すら困って、瘦せ細っていた。
領地に蓄えていた種もみすら食べつくした。
もしも、困窮を助けてくれるのなら末代まで国王一家に誓う。
それほど困っていた。
僕たちの出会いは普通ではなかった。
聾唖学校で二人は出会った。
二人そろって耳が不自由だった。
だから初めましての挨拶は優しく、手のひらを指先でなぞるものだった。
手話すらできない僕たちが、名前を知ったのはずっと後のことだった。
分厚い辞書を引き、筆記で名前を知らせあったのだった。
『心の王様』

私には心の王様がいた。
優しくて、あったかくて、民思いで、理想の王様。
いつか綺麗なドレスを纏って、舞踏会で、そんな王様に出会って言うのだ。
「あなたを敬愛しています」と心から告げるのだ。
そんな夢みたいなことを考えていた。
心の王様は架空のものなのに、恋をした。
『禍神の願い事』

死してもなお強い欲求があるから、禍神は生まれる。
それは地上においては、厄介なことだった。
地を腐らせ、風に悪臭を混ぜ合わせる。
強い願い事があるのから、禍神になるのだ。
そんな禍神の願い事はささやかなものだった。
また日差しを浴びたい、と叶わないものだった。
『悪事の免許』

時代が流れるというのは厄介なものだ。
今の時代は悪事をするのも免許制になった。
適切な悪事を働くために、また一度から勉強のし直しになった。
歳をとったせいか細かい文字が読みづらい。
ルーペを取り出して教科書をめくる日々だ。
それでも悪事というのは、やりがいがある。
玄関で見送るあなたに寂しさを感じてしまう。
独りで待つ時間は長すぎる。
いつまでもドアノブを見つめてしまう。
専業主婦はそんなに気楽なものではないと、実感した。
ドアが開いて、あなたが帰ってきた。
「忘れ物?」と私が尋ねると、あなたは頬にキスをした。
「忘れ物」と笑った。
「大丈夫だよ」と青年は微笑んだ。
少女の不安を拭うように。
ほらまたそうやって笑うから、何も言えなくなる。
本当は言いたいことがたくさんあった。
神剣・神楽を押しつけてしまったことに、少女は何度も後悔をしている。
押し黙ってしまった少女に、青年は困ったように寝癖のついた頭をかく。
あなたがいたずらな表情で小箱を取り出した。
その中には誕生石が嵌めこまれた指輪が入っていた。
指輪を貰うような関係ではなかったはずだ。
それでも心がときめいた。
天国の鐘が鳴る音がした。
そこで夢から覚めた。
目覚まし時計を止めて起きる。
もう少し夢を見たかったな、と思い二度寝する。
『この恋を詫びろ』

「好きな人ができたの」と恋人から言われた。
確実な失恋の言葉だった。
僕は別れの言葉を覚悟した。
「でも、あなたのことも好きなの」恋人は都合の良いことを言った。
思わず「この恋に詫びろ」と言ってしまった。
こちとら純粋に君のことを好きなんだ。
あまりにも不純だ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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