君はスマホの液晶画面をまじまじと見ていた。
先日リリースされたばかりのソシャゲだ。
飽きっぽい君が課金までして遊んでいるのだ。
僕も興味が湧いてきた。
「それって面白い?」と僕が尋ねると「乙女ゲーだよ」と君が苦笑した。
そして液晶画面に視線を戻す。
君が面白いなら面白いに決まってる。
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君が傍にいなくなってから孤独を感じるようになった。
君は今も流れ星を追いかけているのだろうか。
僕の心に引っかかる。
もう遠い約束だ。
君宛の手紙は積み重なって、零れ落ちるぐらいだ。
『君がいない』と言うだけで簡単に孤独になる僕の心。
君の代わりに、僕も流れ星を夜空に追いかけるよ。
「お留守番よろしくね」と母は働きに出かけた。
最後まで不安そうにしていた。
「大丈夫だよ」と僕は胸を張った。
それから一時間、弟が目覚めた。
母がいないことに気がついた弟はわんわん泣きだした。
それに僕は困った。
仕方なく、僕は弟の指先に触れる。
弟の好きな特撮のヒーローのように言う。
『ゴーストフィクション』
僕は人を驚かせるのが好きだ。
趣味だと言ってもいい。
「家にゴーストを飼っているんだ。今度見に来ない?」と言うと好奇心に負けるのか、大概の人物が家に訪れる。
そして玄関で悲鳴を上げる。
それを聞くのがたいそう楽しみだった。
フィクションのゴーストが笑う。
『夜にずぶ濡れになった帰り道』
天気予報は外れた。
コンビニで傘でも買えばよかったのだろうか。
わずかな金を惜しんで素通りをした。
夜にずぶ濡れになった帰り道。
誰も見ていないし、誰も迎えてくれない。
久しぶりに湯船に浸かろうか、と思った。
一人の孤独を感じながら、帰り道を歩く。
『カンカン照りのサヨウナラ』
暦の上では冬を迎えたというのに、妙に暑い日だった。
昼間なんてカンカン照りだった。
まるで夏に戻ったかのような天気だった。
だから、私は切り出すことにしたのかもしれない。
時雨みたいにしみったれた日に言う言葉ではない。
別れの言葉はカラッと晴れた。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」
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僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と笑顔のまま言った。
そんなことができるはずないのに、最期の嘘になることが分かっていてついた。
君の背が小さくなっていく。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
見えなくなるまでは。
幼少の頃は、光の速さで伝わるメールがすごい発明だと思った。
スマホを手にする頃には、思い出の一つになってしまったけれども。
怒らしてしまった恋人に送るメールの文面を考える。
さっきから少しも文字数は増えず、心が痛がる。
悪かったのは自分の方だと分かっているが謝ることができない。
「そろそろ帰るぞ」と俺は立ち上がろうとした。
けれどもバランスを崩した。
「あと一杯だけ」と泣き顔で、同僚が指先にしがみつく。
「そう言って、さっきから呑んでないじゃないか」と俺は言った。
「もう少し一緒にいてくれてもいいじゃないか」と酔っぱらいは駄々をこねる。
「あと一杯だけだ」
『ラブレターの裏紙にサヨウナラを。』
最初で最後のラブレターを書いた。
生れて初めてのそれは、心とは正反対に優しいピンク色。
便箋には君への想いを書き連ねる。
明日の朝、君の家の郵便受けに投函するつもりだ。
君が夢から覚める頃、僕はいないだろう。
サヨウナラの文字を読んでほしい。
『シークレットバイバイ』
バイバイは言わないよ。
言ったらきっと泣いちゃうと思うから。
私のことなんて忘れ去って、新しい恋人なんかができちゃうんだろうね。
それが時の流れってヤツだと思うよ。
だから別れの言葉は言わないよ。
飽きたとか、他に好きなヤツができたとか、思われてもいい。
『星もない夜に東京がみた夢』
ネオンの明かりで一等星でも見えない街。
その代わりに地上の星が泣くように輝いている。
一つ一つが生命の輝きだ。生きている、ここにいる、と紛い物の星が唄う。
そんな本物の星もない夜に東京がみた夢は、幻のよう。
儚く消える粉雪のように夢は溶けていく。
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」
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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
別れを見送りに来た自分にとっては、ふさわしいのかもしれない。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と新しい生活に飛びこんでいく君に言った。
これが嘘だと言えたら、どんなにいいだろうか。
それでも生きていく。
感染症も治まってきたので、お礼参りに二人で神社に向かった。
無言でお願い事をする。
今年、受験生の二人にとっては重要なことだった。
「なんてお願い事をしたんだ?」気になって訊いてみた。
「ランクを落としても同じ大学に行けますように」と答えが返ってきた。
なんて物騒な願い事だろう。
少女はテレビを流しながら、作り置きの晩ご飯を食べていた。
食べるというよりも、咀嚼していると言った方が近いだろう。
母が忙しい中、栄養バランスを考えて作ってくれたものだ。
愛がこもっているのは忘れない。
けれども、一人で食べる晩ご飯は味気のないものだった。
テレビがノイズに感じた。