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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と正反対のことを口にした。
これが本音なら、楽だったのに。
君を抱きしめながら、生きていることを確認する。
この小さい生命が喪われるのは嫌だった。
だから僕は最期の嘘をついた。
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人間にとって、いや生きとし生けるものにとって、生死は永遠の課題だった。
生き続けるものはない。
必ずやってくる冬のような死は、別離を思い起こさせる。
君がいなくなったら嫌だけれども、僕が先に逝けば君は悲しがるだろう。
手元をじっと見つめる。
大きくも小さくもない手のひらで君を包む。
君と子どもじみた大喧嘩をした。
こうなると君は口をきかなくなる。
二人の間に不揃いな沈黙が漂う。
このまま夕飯になると気まずいものになるだろう。
僕は恐る恐る、君のひんやりとした指先を両手で包む。
「ごめん」と僕が謝ると「どうしてあなたの方が謝るの?」と君は言った。
「僕が悪かった」
『鴉と狼とデスゲーム』

狡猾な鴉と獰猛な狼とデスゲームを繰り広げるのは、難易度が高すぎる。
生命がいくつあっても足りはしない。
脆い爪と柔らかな肌しか持ち合わせていない人間には、このデスゲームの結末は見えているようなものだった。
それでも見送ってくれた恋人のために生還したい。
『ねこの哲学』

吾輩は猫である、のねこの方ではない。
私は立派な人類の女の子だ。
ねこっけで釣り目でだから『ねこ』という愛称を生まれてこの方、貰っている。
両親には可愛がられていると思う。
友だちにも恵まれていると思う。
そんな私の哲学があるなら、人は見た目ではないということだ。
『人類の未来史』

私はタイトルを見て驚愕した。
探し求めている本は、どんな本でも手に入る。
そう謳い文句の本屋に依頼した本が手元に届いたのだ。
代金を払って、さっそく本を広げる。
白い紙からインクの文字が踊りながら飛んでいく。
逃げていく文字たちを追いかけるが素早くて、追えない。
「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

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僕は、ずっと続く痛みに堪えながら最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と僕は言った。
こんなことしか言えないなんて。
君よ、それは嘘だと言ってくれ。
ここに確かにある繋がりは幸せだと答えてくれ。
僕のため、真実を映す鏡を用意してくれ。
小鳥のように甲高くさえずる君。
「今日もすっかり乾きましたよ。ふかふかです」と取りこんだばかりの洗濯物を見せる。
「しまってきますね」と君は俺から離れていこうとする。
そう簡単には逃がしてはやらない。
君の手首を握る。
俺という名の鳥籠で永遠に唄っていてほしいから、手を放せない。
「無人島にひとつだけ持っていける物があったら、何にする?」と君は謎かけのように言う。
「ひとつだけなら、辞典かな?飽きたりしないように」と僕は答えた。
「そう言う君は?」と尋ね返した。
君の瞳は面白そうなことを見つけたように輝いている。
「あなたかな」と殺し文句を言った。反則だ。
あなたという鎖に繋ぎ止められた私。
自分から望んで囚われた。
退屈晴らしに本をめくってみるけれども、少しもページが進まない。
今頃、あなたは恋人と仲良くしている、と思うと目が霞む。
あなたからの連絡を待って一日が過ぎていく。
目には映らない鎖にがんじがらめにされて身動きができない。
二人だけで旅行に出た。
僕たちはどんな関係に見られているのだろう。
兄妹?友だち?恋人?
そのどれもが当てはまらない。
二人の関係に新しい一歩を踏み出すために、僕は目を逸らしつつ、君の指先を握り締める。
君は驚いたように僕を見つめた。
けれども、僕の手を振り払うことはしなかった。
『怪獣のためのヒーロー』

見た目が変わっているからといって、怪獣扱いされるのは辛かった。
こう見えても、傷つく心を持ち合わせているのだ。
怪獣と子どもに囃したてられると、泣きたくなった。
その姿すら醜ければ、ますます気持ち悪たげに思われるだろう。
そんな自分に現れたヒーローが。
『たぶん青春』

「あー、退屈だね」と僕が言うと、家庭教師の先生が微苦笑した。
「何言っているの。青春真っただ中でしょうが」先生は懐かしむような目で見る。
先生にも青春があったの?と訊きたくなったが、答えが怖かった。
そういうことを思うのは、たぶん青春をしているからだと思う。
『故郷には間に合うだろうか』

カタンコトンと電車は規則正しくレールを滑っていく。
握りしめた切符が不規則に揺れる。
懐かしい故郷へと帰っているはずなのに、心が震える。
果たして故郷には間に合うだろうか。
昨夜の電話が気になって飛び乗った電車ではあったが。
近づいていく故郷が遠い。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、君から目をそらしながら最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
僕の心は堂々巡り。
それを解消するために嘘をついた。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と情けないぐらいに小さく呟いた。
本当は寂しくてたまらないのに。
本音は仕舞い込んだまま、君のために笑顔を浮かべる。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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