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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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青年はベルトを緩めて、同胞の血をたっぷり吸ったシャツを脱ぐ。
神剣・神楽のおかげで青年の身体には傷跡ひとつなかった。
ただぼんやりとした痛みが残っていた。
自分が選んだ道だ。
途中で放り投げるつもりはなかった。
着替えを終わらせたタイミングで、少女が顔を出した。
「洗濯、頼めるか?」
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終電近くの電車の中。
君は泣き顔で、僕の手のひらにしがみつく。
疲れた会社員と酔っぱらった大学生ぐらいしか乗っていない電車だった。
だから君が思う存分泣いても迷惑をかけることはないと思った。
僕は慰める言葉の代わりに、君の手をずっと握っていた。
それぐらいしかできることがなかった。
『これは恋じゃないとさ』

「君は恋に恋しているだけ」と決めつけられた。
これは恋じゃないとさ。
それなら何なんだろう。
あなたを見る度に締めつけられる胸を。
あなたの声を聞く度に弾む心を。
それなのにあなたにとっては価値のないものだったんだと知ると、恋の花は小さくしぼんでいった。
『見事に散った恋の打ち上げ会場にて』

私の恋は、打ち上げ花火のように見事に散った。
それを見守っていてくれた親友は微笑んだ。
「馬鹿だよなぁ。こんないい女を振るなんて」親友はそういうと肩を抱いてくれた。
泣くなんて私らしくないけれど、みんな打ち上げ花火を見ているのに忙しい。
『ばれた嘘泣き』

その日もしくしくと彼女は泣いた。
まるで悲劇の舞台に上がった女優のように、頬にハンカチを当てて泣く。
それは本当に良くできていた。
「いつまで嘘泣きしているの?」と意地悪く尋ねた。
ばれた嘘泣きに彼女はからりっと笑った。
「悲劇が終わるまでよ」と堂々と言った。
「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

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僕は、心の痛みを堪えながら最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
今、抱えている痛みを見て見ない振りをしているようなものだった。
まるで魔法をかけるように大袈裟に「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と言った。
そんなことしか言えない僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。
君が上目遣いで、僕の手のひらに爪を立てる。
まるで構って欲しい子猫のように、鋭く、柔らかく。
そんな君が可愛くって僕は頬を緩ませてしまう。
どんな君でも僕にとっては一番星。
誰よりも大切で、誰よりも特別なんだ。
君にとっての一番が僕だといいなと思ってしまう。
一方的なバカップルかな。
『マチガイ婚』

そもそも結婚したのがマチガイだったのかもしれない。
僕と君、まったくもって生活リズムが違う。
最後に一緒にご飯を食べたのは、いつだっただろうか。
独身だったから、周囲の勧めで結婚したけれども全くもってマチガイだった。
不思議と離婚届を貰ってくる気にはならない。
『花が咲いたら僕は。
 散ってしまったら君は。』

「花が咲いたら僕はどうなるんだろうね」と白尽くめの部屋の中で青年は言った。
「すると退院でしょうね」と君は笑った。
それは花が咲くような笑顔だった。
散ってしまったら君は。とは訊けなかった。
離れ離れになる未来が待っているから。
『可愛くない話』

「私の話を訊きたいって?」と紅いルージュが笑った。
馬鹿にされたのだろうか。からかわれたのだろうか。
「私ができるのは可愛くない話だよ。そこら辺のお嬢ちゃんを捕まえて話を訊いた方が愉快だろうよ」と女はマドラーを一周させる。
「可愛くない話でいいならするよ」
「暇をつぶせるものってないの?」君が言った。
「DVDぐらいしかないな」と僕は答える。
「観ようよ」と君は嬉しそうに言った。
僕はソファから立ちあがる。
適当なDVDを選び、再生する。
すると艶めいた女性が出てきた。
慌ててテレビの電源を切る。
「兄貴のが混じっていたんだな」と言い訳をする。
今日は二人が初めてデートをした日だった。
学生時代だったから映画を見て、カフェで感想を話すだけのデートだった。
そんなささやかな記念日をあなたは覚えていてくれたのかな?
今日のデートは映画だった。
真っ暗な館内でさりげなく、私の指先をあなたの指先がなぞる。
意味深に左手の薬指に。
『汚れを落とした悲しみに』

それは泥だらけの珠だった。
そんなものを抱えていながら、段ボールの中で過ごしていた。
涙が一滴、二滴と珠に滑り落ちる。
声すら出ない涙は、誰にも気づかれないまま、朝を迎える。
珠はすっかりと綺麗になった。
汚れを落とした悲しみに微笑んだ。
日差しと共に。
『あなたの為のピカレスク』

あなたは自分のことを悪党だという。
それは半分は私のせいだろう。白いドレスを纏って、誓いの言葉を告げる瞬間に、あなたがさらってくれた。
私にとって、最高の悪役だった。
あなたの為のピカレスクではない。
私にとってのピカレスクだった。
もう手放さない。
『狂い花にさよなら』

花の少ない時期に、狂い咲きした花は艶があった。
道行く人々が立ち止まって、ためいきをつく。
そして記念のようにスマホで写真を撮っていく。
事務所から毎日が栗花を飽きもせずに眺めていた。
老いていく姿を見つめながら、さよならの準備をする。
いつかの日のために。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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