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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『今宵も床不上手になりて』

まるで死体を抱いているようだ、と言われはしないかと緊張する。
相手を喜ばす方法も知らずに、今宵も床不上手になりて、緊張から固まっている。
それでもなお、毎夜体を求められる。
いつの日か、床上手になれるのだろうか。
不安に揺れながら相手に身を任せる。
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部屋の片隅でポロポロと泣いていたら、飼い猫が近寄ってきた。
私の手を一生懸命に舌で舐める。
それは慰めるような動作に思えて、小さな生き物が必死になっているように見えた。
本当は食事の時間になっても餌をくれない飼い主の様子を見に来ただけだと分かっていても。
とても哀しいと思えた。
君が長く伸ばしていた髪をバッサリと切った。
失恋でもしたのだろうか。
それとも心機一転をしたかったのだろうか。
君から答えを聞けずに、僕は瞳から視線を逸らした。
「好きになった人がショートカットの方が好きなんだって」と明るく君が言う。
その言葉に僕は脱力する。
考え過ぎだったらしい。
『ある物語の脇役恋愛記』

夢中になって読んだ物語があった。
今でも枕元に置いて頁をパラパラとめくる。
主人公も素敵だったが、ハマったのは脇役の一人。
弱虫で、臆病の彼が自分とシンクロするようだった。
久しぶりに本屋に行くと、脇役の彼が表紙になった本が置いてあった。
続編だろうか。
『睡眠薬の心地良さ』

くりかえし見る夢にうなされて、真夜中に目覚める。
まだ夢に囚われているのだ。勇気を出して心療内科の門をくぐった。
いくつかの話を訊かれた後、睡眠薬を処方された。
眠る前に飲む一錠の飲み薬。
そんなものに縋りつくように飲みほした。
夢を見ることなく朝を迎えた。
『注文の少ない料理店』

月末になると電卓をたたいて、帳簿をつける。
そしてためいきを一つ。
席はガラガラどころか、客一人いない。
店主の趣味だから、赤字でも良いのかもしれないけれども頭が痛い。
「ほら、賄い」と出されたのはできたての野菜炒め。
注文の少ない料理店は賄いも美味しい。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

------

僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
大切な人を亡くした君に声をかける。
「僕はいなくなったりなんてしないよ」と大嘘をついた。
近い将来、僕の生命も尽きる日が来るだろう。
どうかそれまでは嘘だと気づかないで。
涙を振りきって、僕は笑う。
僕は一番大切なものをもって逃げ出した。
繋いだ手、よろけそうになる歩み、息切れする肩。
まるで悪夢を見るように、村が燃やされていく。
異端な彼らをあぶりだすように。
村へと戻ろうとする君の手を握りしめる。
世界は彼らを手放さない、ことを知っていたからだ。
捕まって、世界へと繋がれる。
いつも遠回りをして君と帰っていた。
途中で別れる君は知らなかっただろう。
一秒でも長く、一瞬でも長く、誰かと一緒にいたかった。
家に帰っても独りぼっちだったから、それぐらいなら遠回りをしたかった。
その気持ちを君にも解って欲しい、と思っていた。
同情でも良かった、傾けてくれるなら。
この邂逅は運命が用意したものだったのか、天に向かって問いかける。
馬を並べて遠乗りに出かけた友だった。
イチジクの実を分けて食べあった友だった。
なのに、剣を抜き、お互いの首にあてるような関係になってしまった。
それはまるで太陽が沈みゆく空色のようだった。
答えは返ってこない。
いつもよりもピッチが速く呑んでいく君が心配だった。
まるで中毒になったように酒を吞んでいく。
1時間後には立派な酔っぱらいができていた。
時計を見ると、終電が近かった。
「そろそろ帰らないか?」と俺が言うと君は堂々と、俺の両手のひらを握り締める。
「最後まで付き合えよ」と君は言う。
『夢凪の夜にできることは』

バクに食われてしまったのだろうか。
夢を見ずに目覚めてしまった。
薄暗い部屋の中で目覚まし時計を見ると、朝と呼ぶには早い時間だった。
夢凪の夜にできることは、蜂蜜を垂らしたホットミルクを飲むことぐらいだった。
そして夢を見るように願いながら飲み干す。
『肩出し文学』

それはオフショルダーのような小説だった。
誰が言い出したのか、肩出し文学。
そう呼ばれた小説家は嬉しそうに微笑む。
自分一人だけの呼ばれ方だったからだ。
これからも型破りの赤裸々な小説を書いていこう、と小説家は思った。
そして、その姿勢は晩年までも変わらなかった。
『夜を編む魔女のひとり言』

窓際に座った魔女が編むのは夜。
慣れた手つきで魔女は編んでいく。
一目も落とさずに夜は続いていく。
編んだ端から夜になっていく。
そんな魔女が手を止めて、編みあがった夜を見つめる。
「誰もが良い夢を見られますように」夜を編む魔女のひとり言が室内に響く。
昼休みを挟んだ古典の授業は、どうしてこんなに眠くなるのだろう。
窓際の席だということもあるのかもしれない。
こっくりこっくりと船をこいでしまう。
クラスの半分は居眠りをしているだろう。
先生の朗読の声が耳に気持ちいい。
テストになれば後悔をするのを分かっていながら微睡みに身を任す。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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