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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『才能分配法』

一人の天才よりも十人の秀才の方が役に立つ。
それに気がついた国家は、ひとつの法律を作った。
長々しい名前を略して『才能分配法』と巷では呼ばれている。
一人の天才を作る英才教育は違法になってしまった。
生まれながらの天才も、その才能を凡人に分け与えるようになった。
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『エンドロールの住人』

今日観た映画のエンドロールにも名前があった。
見落とすようなありきたりな名前だけれども、何度も目にすれば自然と覚える。
色々な映画に協力しているようだけれども、その名前が話題に出ることはなかった。
いつしか会いたいと思ってしまったエンドロールの住人に。
『桂五郎流!お家での悲しみの癒やし方!』

その本は本屋で平積みされていた。
平積みされるぐらいだから人気作家の本なのだろう。
初めて見る名前に本を手に取る。
『悲しみは共有することによって癒される』という文字が飛びこんできた。
やっぱり独りでは悲しみは癒されないのだと分かった。
「どんなこともします。だから私を捨てないで」と君は目の端に涙を作りながら、唐突に言った。
「手放すつもりも、ないですけれど」と僕は答えた。
「私、完璧じゃないですよ。そのうち飽きられると」と君は僕の手をつかんだ。
「突然どうしたの?」と僕は不審に思って尋ねた。
君は視線を逸らす。
少女は廊下に張り出されたテストの点数の順位を見て俯く。
万年2位という順位が悔しかった。
今回のテストも満点を取った白金色の頭髪の少年が1位だった。
どうすれば満点を取り続けていられるのだろう。
同じ人間だとは思えなかった。
少女は顔を上げる。
次こそは1位の座を手にしてみせる。
枯れすすきを押し倒すほど冷酷な北風が吹いた。
誰もいない河川敷を男は歩いていた。
冷たい風に吹かれながら、冷たいアパートに独り帰ると思うと悲しかった。
外灯もまばらだということも手伝って、男は慟哭する。
泣いていなければやっていられない。
男は、誰にも言えない弱音を抱えこんでいた。
『運命勧進帳』

君の運命を変えるために、その寄付を求めて足を運んだ。
南から北へと、桜が咲くように身を粉にした。
どれだけの金を積めば君の運命を変えることができるのだろうか。
勧進帳を見せて、方々に寄付を求めた。
もう何年も会っていない君の声が聴きたい、そう思って空を見上げた。
『光ならず』

あなたの暗闇を照らす光になりたかった。
とぼとぼと夜道をうつむいたまま歩く君の一番星になりたかった。
太陽よりも明るく、君を照らしたかった。
あの日、僕の心を救ってくれたあなたみたいに。
けれども、僕は力不足のようだった。
恒星のように明るく輝けなかった。
光ならず。
『説得不可能』

丁寧に説明をした。
今の君では駄目なんだと粘り強く言った。
それなのに君はぶつかっていこうとしていた。
玉砕をした君を見たくないから、何度も言葉を尽くした。
けれども、説得不可能だった。
君の強い意志が僕に溜息をつかせた。
きっと君は玉砕しても笑っていられるんだね。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

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僕は、ぎゅっと手を握りしめながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
君のことをちっとも思っていなかった。
どれだけ君が傷つくか、考えてもいない嘘だった。
「まだ一人で生きていける」と寄り添いあって、ここまで来た君に言った。
別れるのに、こんなことしか言えないなんて。
読もうと、広げた新聞紙の上に愛猫が乗った。
そしてこちらを見て、甘ったれたように鳴く。
「そこにいられると読めないよ」と愛猫をどける。
するとすぐさま、新聞紙の上に乗る。
構え!構え!構え!!と言われているようだった。
猫の言葉は分からないけれども、長い付き合いだ。
何となく分かる。
快感が脳髄まで駆けあがる。
面白そうと始めたゲームだった。
最近、くさくさした気持ちを抱えてばかりいたから、たまにはいいだろうと思った。
ゲームショップで、パッケージ買いをした。
どうやら当たりのようだ。
自分に合っているのかコンボが重なる。
たまらない快感だ。
やめられないと思った。
禁断の果実であるリンゴを一かじり。
まあるいリンゴを君に渡す。
かじりかけのそれを君もかじりつく。
まるで何も考えていないように、空腹を満たすために。
アダムとイブを気取るには背伸びだったようだ。
君は意味も考えずに食べ切った。
そして満面の笑みを浮かべた。
僕は君を守ると心に誓う。
『かつて悪魔だった君達へ』

僕達は地獄の主たちに集められた。
人間の魂を集めて、悪魔を卒業できるはずだった。
色んな試練を乗り越えたら、人間に戻れるはずだった。
そのために僕達は頑張った。
その証拠に鋭い尻尾も、黒い羽もなくなった。
「かつて悪魔だった君達へ」と慈愛深く主は見る。
『昨日の勇者』

酒場で特徴のある剣を持つ男がいた。
彼こそ伝説の勇者だ。
僕は意を決して声をかけた。
「あなたはこの国を救った勇者様ですよね」と僕が言うと、男は暗い瞳をした。
「昨日まではな」と皮肉な笑みを浮かべてエールを呷る。
「一番大切なものは救えなかった」と元勇者は呟いた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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