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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「手貸してー」と隣の席のクラスメイトに言われた。
僕はプリントをまとめていたから、左手を差し出した。
するとクラスメイトは嬉しそうに、手のひらに触れる。
指で僕の手のひらに文字を書く。
そしてクスクスと笑っていた。
ねぇ、過去の君。
なんて文字を書いてくれたの?
今更になって訊きたい。
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『夢のスクラップ』

折り紙の破片だったり、余ったマスキングテープだったり、古びた写真だったり、そのスクラップ帳は夢がつまっていた。
想い出という形で残しておきたい、と始めた不器用なノート。
隙間なんてないような夢のスクラップだった。
そのスクラップ帳は歳の数だけ増えていった。
『希望の種』

死の灰のおかげで土壌が汚された。
木々は葉を落して、そのまま枯死した。
新しい種をまいても、芽吹くことがなかった。
停滞した循環に人間たちは焦った。
戦争どころの騒ぎではなかった。
静かに死を待つことのできない研究者たちは、希望の種を生み出した。
それが今の林なんだ。
『もう片方の青春より。君へ。』

授業中に手紙が回ってきた。
ノートの端を切ったような手紙は折りたたまれていた。
先生の目を気にしながら手紙に視線を走らせる。
『青春してる?』と右肩上がりの細い文字。
隣の席を見ると君が手を振る。
余白に『もう片方の青春より。君へ。』と書くと折る。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と君を突き放すように言った。
「どうして?」君はあどけなく笑う。
その笑顔を見て、前言撤回したくなる。
我ながら本当に・・・どうしようもないな。と呆れ返る。
最後の嘘なのに。
「お兄ちゃん、聞いてくれる?」と末の妹が尋ねてきた。
他の家族は寝静まっていた。
ホットミルクを入れながら「何だい?」と微笑んだ。
「わたしのこといじわるする子がいるの」と妹は言った。
「熱いから気をつけて」とホットミルクが入ったマグカップを渡す。
「でも大嫌い、って言えないの」
あなたは深夜の高速道路を走る。
時たまの気まぐれに誘われた。
夜更かしをしていたことに感謝した。
いつもだったら気づかずに眠っていただろう。
あなたは車を走らせる快感に酔っていた。
私はそんなあなたの横顔を見れることに酔っていた。
心臓がドキドキするほどあなたはスピードを出して走る。
君のハートは雨模様。
ひっきりなしに涙を零している。
僕はといったら、なぐさめる言葉も尽きて、困っていた。
君は傍にいる僕を見ず、遠くを見る。
視線の先には、君を泣かせる存在がいるのだろうか。
傷ついたハートに応急処置として、ホットココアの缶を差し出す。
雨が止めばいいのだけれど。
「今日も寒いね」という言葉がくりかえされて挨拶みたいになっていた。
「そうだね」と僕は頷いてさりげなく、君の手のひらに触れる。
寒いと言った割にあたたかな体温。
このまま手を繋いでいれば、寒さなんて吹き飛んでしまうかもしれない。
そんなことを思っていると、君は包むように握り返す。
『私が恋をしたんだから
 世界はキット素晴らしい』

雨降りの朝だって、曇りがちな昼だって、心ひとつで違って見える。
私が恋をしたんだから、世界はキット素晴らしい。
たとえ虹が見えなくても、たとえ月が見えなくても、全ての生きている生き物たちに祝福を。
恋をしただけで世界は七色。
『ディスタンス.ラブ.ストーカー』

私とあなたの間には隔たりがあった。
私がこれほど愛しているのに、あなたはストーカーだと訴える。
あなたの髪一筋すら愛しているの。
薄情な女たちみたいに、あなたを見捨てたりしないわ。
骨になるまで寄り添ってあげるから。
だから、距離を開けないで。
『命の風船』

その日、友だちは病室に色とりどりの風船を持ちこんできた。
「何色が好き?」友だちが尋ねる。
「赤かなぁ」と僕は答える。
「命の色だね」とさりげなく友だちは言った。
そして、赤い風船を膨らませる。
看護師さんに見つかったら怒られるかな。
命の風船が病室の天井に浮かぶ。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

------

僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
実感のない気分だった。
まだ布団の中で眠っているのかもしれない。
そんな風にふわふわとしていた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「君を、信じきることができなくてごめん」と明るい調子で僕は言った。
こんなことしか言えないなんて。
君は誰も憧れる青年と恋に落ちた。
二人で落ちたのなら、どれほど素晴らしかっただろう。
残念ながら君の恋は君だけのものだった。
青年はお似合いの乙女と結ばれた。
その報告を聞いた君は涙を流した。
「報われないのはわかってたけど、辛いね」と泣き笑いする君を抱きしめた。
君の恋が終わった。
ひっそりとした生活に不満を覚えていた。
今頃は王都できらびやかな晩餐会に参加しているはずだった。
成り上がりと言われようが、華やかな社交場は魅力的だった。
けれども、王命で隠居生活をする辺境伯と婚約を結ばれてしまった。
辺境伯は穏やかな生活を送りたいのだろう。
私とは正反対だった。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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