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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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都合の良い事だと分かっている。
そもそも二人が別れたのは、私に好きな人ができたからだ。
あなたは物分かりの良い顔をして『それじゃあ仕方ないね』と恋人関係を解消してくれた。
独り身が寂しい季節になったからとはいえ『もう一度好きになって』とあなたに頼むのは残酷な選択肢だろうか。
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憧れていた先輩に告白した。
ストレートに「あなたが好きです。付き合ってください」と僕は言った。
先輩は悪戯っぽく笑う。
「付き合っているのを秘密にできるのならいいよ」と先輩は甘く囁く。
OKを貰えたのは嬉しいけれど隠さなきゃいけないことは不満だった。
「君はできるかな?」先輩は笑う。
とぼとぼとコンクリートで舗装された道を歩く。
足音は一つきり。
月光に照らされて道は明るい。
立ち止まって夜空を振り仰ぐ。
満月には満たない月が燦然と輝いていた。
俯きがちだった顔が自然と上がる。
今頃、君は何をしているのだろうか。
二つだった足音を名残惜しく思いながら、月を見上げる。
この時期は起きるのが辛い。
元から低血圧というのもあって、目覚めても布団の中でゴロゴロしている。
あったかい布団の中は二度寝へと誘う。
現実と夢の狭間で揺れ動く。
すると兄がやってきて、堂々と、両手のひらを握り締める。
あまりの冷たさに「冷たっ!」と叫びをあげると兄に笑われた。
『29歳、都合の悪い恋。』

中途採用された彼の左の手の薬指には、シルバーの指輪が光っていた。
私も、もう29歳だ。
色んな恋をしてきた。
これは都合の悪い恋。
そう分かっていたのに、ずるずると彼へとはまっていった。
まだ若い彼から、様々な刺激を受ける。
それはまるで初恋のようだった。
『せめてサヨウナラを
 こんにちはみたいな笑顔で』

二人の間に落ちた沈黙はどれほど長いものだったのだろう。
身勝手な僕に、涙ひとつ零さない君。
バーに流れるピアノがふっと途絶えた。
君が言葉を待つように。
「せめてサヨウナラをこんにちはみたいな笑顔で」君は笑顔を浮かべて言った。
『君は僕と合鍵を置き去りに』

君は僕と合鍵を置き去りに消えた。
もうだいぶ前の話だ。
消えたとしか言いようがないほど、部屋の中には君の物があった。
書置きひとつすらなく、君は姿を隠した。
僕は電気のついていない部屋に落胆した。
置き去りの合鍵の色違いのキーホルダーが切なく揺れた。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
こんな愚か者にも、進むべき道があった。
それは茨の道でも進んでいく。
だから、嘘をついた。
それは前へ進むための嘘だった。
「今とても幸せだよ」と君に向かって言った。
未来では不幸せになっているだろう。
君に嘘だと言えたら、どんなに。
私が悲しい時には傍に寄り添ってくれる。
私が辛い時は手を握りしめてくれる。
私が泣きたい時は抱きしめてくれる。
そんな幼馴染との関係は保育園にいたときから続いている。
疑似的な兄妹のつもりかもしれないけれども、恋と、錯覚してしまいそうだった。
それだけ二人の距離は近すぎるのだった。
ふわふわと風に乗ってシャボン玉が空高くに向かっていく。
男の子は器用にシャボン液で、いくつもシャボン玉を作っていく。
それが私には面白そうに見えた。
だから「私にも貸して」と言ってみた。
男の子はおどろいたような顔をしたけれども「いいよ」と言ってくれた。
私はストローを受け取った。
虚栄を誇った金持ちの令嬢と出会った。
場所はチェーン店のラーメン屋だった。
まあ、何かの縁だ。
相席することにした。
ラーメン屋にふさわしくない服装の令嬢は、一番安いラーメンを頼んだ。
没落はしたくないものだ、と俺は思った。
令嬢の輪郭を視線でなぞる。
元から細かったが痩せた気がする。
『醜い天使の子』

絵画に描かれるように天使は美しい。
その存在だけでも華やかで、神の使いにふさわしかった。
そんな中で私だけが醜い。
童話にあるように大人になったら美しくなれるかもしれない。
そんな甘い考えは霧散した。
神も憐れむように、私を頭を撫でる。
醜い天使の子なのが悲しい。
『花冠の渡し方』

シロツメグサを編みながら花冠を作る。
花冠は一つじゃなくて二つ。
二つ目を編み出した私にあなたは不思議そうに「どうして二つ?」と尋ねてきた。
もう少しで出来上がるから、答えなかった。
不器用ながら編んだ花冠をあなたの頭に乗せる。
「王子様みたいね」と私は言った。
『明日死ぬ私より 敬具』

新聞を取りに郵便受けを開けるとひらりと紙が一枚落ちた。
そこには見慣れた文字で書かれた一文。
『明日死ぬ私より 敬具』と書いてあった。
慌てていたのかチラシの裏だった。
悪戯にしては手が凝っている。
紙を拾って家の中に入る。
未来の私に手紙を出すために。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をついた。
それは君をあざむく、たぶん最低の嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と僕は言った。
最後の家族を喪って、施設に入ることが決まっていた。
本当は寂しいに決まっている。
君とも離れ離れだ。
けれども本音は仕舞い込んだまま笑う。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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