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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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大金を積まれて、それに飛びつかずにいられる善人はどれぐらいいるだろうか。
罪を許してしまう人間の方が多いだろう。
たとえそれが少女の心を傷つけるものであっても。
両親はなかったことに、と目を瞑る。
大金を受け取り、こちらこそ悪かったのです、と言った。
罪はなかったことにされた。
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幼馴染が「もしかして怖いの?」とからかうような口調で言ってきた。
季節外れの肝試しは冷たい北風が吹いて、それはそれは寒かった。
僕はぎこちなく、自分の両手を握り締める。
「寒いだけだよ」と言った声が震えていた。
「手を繋いであげようか?」幼馴染が提案してきた。
「大丈夫」僕は言う。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

------

僕は、声が震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と君に向かって言った。
心の底では、とっくのとうに諦めているというのに。
嘘をつくことで君の心が軽くなるのなら素敵だ。
嘘だと言えたら、どんなに楽だろうと思っても。
帰り道、あなたが私の手を繋いだ。
二人は付き合っているわけではなかった。
だから、これは不自然なことだった。
昨日も手を繋いで帰った。
だから私は尋ねてしまった。
「いつから当たり前になったの?」と訊けば、あなたは「ずっと君の手を繋ぎたかったんだ」とまるで自然なことのように言った。
水に濡らすと文字が浮かび上がるおみくじを引いた。
どんなカラクリがあるのだろうか。
消えない文字を読む。
どうやら今年のおみくじは運がないようだった。
一番高いところにおみくじを結ぶ。
一度でいいから大吉を引いてみたいものだと思った。
友だちは大吉を引いたのだから、余計にそう思った。
あなたはベルトを締め直すと、鋭い目で遠くにいる敵を見た。
迫りくる敵に私がおびえていると、あなたは振り返る。
「行こう」とあなたは私の手を取る。
生命を賭けた戦いが始まろうとしていた。
独りきりではない、という安心感を覚えて、私は無言で頷いた。
あなたと共に平穏のために駆けだした。
今日は二人が出会った記念日。
クリスマス会に出席して、僕が君に一目ぼれ。
ゆっくりと時間を重ねて、二人は晴れて恋人同士。
けれども、今年の記念日には一緒に過ごせないと言うと、君は瞳からハラハラと涙を零した。
僕は仕方なく、両手で君の両手を包む。
「仕事が終わったら連絡するから」
「iotuは、さりげなさを装って最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
胸の痛みは消えやしないな。」

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僕は、さりげなさを装って最後の嘘をついた。
それは無数にできた傷をいやすための嘘だった。
心配そうに君の瞳が僕を見上げる。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と、君に嘘をついた。
胸の痛みは消えやしないな。
嘘に嘘を重ねれば当然だろう。
せめて君の前では強い自分でありたい、と思った。
ふいに眠気が襲ってきた。
時計を見れば、いつもの眠る時間。
体にスイッチでも入っているのだろうか。
船をこっくりとこっくりと漕ぐ。
このままではパソコンの前で寝落ちするのが分かった。
布団まで行かなければならない。
ふらふらしながら、引きっぱしの布団に向かう。
眠りはそこまで来ている。
皮膚を刺すような寒さに手がかじかむ。
ボールペンで書かれた文字も揺れている。
隙間風が寒くて、エアコンの設定温度を上げる。
来月の電気代の請求が怖かったけれども、こればっかりは仕方がない。
ボールペンを置いて、手を摩り合わせる。
少しでも早くあたたかくなることを願って指先をこする。
寒いを言い訳にして堂々と、あなたの指先にしがみつく。
私と異なる体温は、あなたの心のようにあたたかかった。
それだけなのに、不意に涙がにじんだ。
私たちは同一には慣れない。
伝わってくる体温に涙を零したものだから、あなたは慌てる。
あなたはそっと、壊れ物のように私の指を握り締めた。
「iotuは、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、何もかも悟ったような顔で最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
覚悟なんてできていなかったのに。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と堂々と言った。
心の中にひとつ傷が増えた。
純粋な君は瞳を瞬かせて僕を見た。
頼むよ、どうかこのままごまかされてください。
誰かに届けばいいと願っていた。
ネットの海で独りきりだと思っていた。
青い鳥に託した文字列に返事が返ってくる。
会ったこともない、声すら知らない、本当の名前も知らない。
そんな人たちと緩く繋がっている。
願いは叶ったのだ。
私は今日も呟く。
ネットの空を青い鳥が誰かさんに想いを届ける。
手紙の差し出し人の名前を見て、私は開封するか悩む。
宛先は紛れもなく私宛だった。
じっくりと悩んで、開封することにした。
それは君からの最後の手紙だった。
几帳面な文字が感謝の言葉を綴られていた。
写真が同封されていた。
今はいない君が元気に写っていた。
二人最後の写真に私は慟哭した。
これは罰ゲームだからと、何度も心の中でくりかえす。
そして私は堂々と、あなたの指先にしがみつく。
高鳴る鼓動、上気する頬。
それでも、これは罰ゲームだからと、言い聞かせる。
あなたの手にふれられるなんて、なんて素敵な罰ゲームだろう。
その喜びを隠しながら、私は長い指先にふれ続ける。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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