忍者ブログ
ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

束縛をしたいわけでもないが、自由に羽を伸ばしている姿を見ると寂しくなった。
一緒にいても君は違うものを見ている。
そう分かっているから、もっと傍にいたいと思う。
何も握っていない手に、僕の手を滑りこませる。
君は驚いたような顔をして僕を見た。
それから子供扱いするように頭を撫でた。
PR
彼の人は責任という言葉から最も遠いところにいた。
風のように自由気ままに、人生を渡っていた。
それが羨ましくて、それが少しばかり切なくて、私は憧れた。
「将来はあなたみたいになりたいです」と言ったら、彼の人は狼狽する。
珍しいこともあるものだと思ってしまった。
「良いことはないさ」
去年の先輩たちは行けなかった修学旅行に、僕たちは行けるようになった。
「楽しんできてね」と卒業間近な先輩が言った。
どんな気持ちで言ったのだろうか。
僕は優しく、自分の両手のひらをぎゅっと握る。
「お土産たくさん、買ってきますね!」と僕は言った。
すると先輩は少し寂しそうに笑った。
「先輩、見てくださいよ」と後輩がスマホを取り出した。
そこには可愛らしい女性が映っていた。
「可愛いな」と無難に言った。
「うちの嫁がこんなに可愛いのは当たり前ですよ」と後輩は上機嫌に言った。
だいぶ酔っているようだった。困ったものだと、心の中でためいきをついた。
一口、酒を飲む。
祭と名付けられた理由をずっと知りたいと思っていた。
それを言えずに、ずっと黙っていた。
聞けば答えてくれるかもしれないとは分かっていたけれども、俯いていた。
いつの日か、教えてくれることを信じていた。
どこかで期待していたのかもしれない。
だから、自分からは理由を訊けないでいた。
神社でお守りをどれを買うか悩む。
すると足音が近づいてきた。
長いことを見ていていたから、邪魔をしているかと思ってどこうとした。
すると「お手を拝借してもいいかな?」と着物を着たロマンスグレーのおじさまが尋ねた。
「占って差し上げよう」
「お気持ちだけで充分です」と私は微笑んだ。
お風呂掃除をしていたら、泡立ったスポンジを踏んで、派手にこけた。
その音が響き渡り、恥ずかしくなる。
ドタバタとした足音が近づいてきた。
「大丈夫か?」と心配性の兄がドアを開けて尋ねた。
「うん大丈夫」と私は言った。
差し伸べられた手に恐る恐る、両手のひらを握り締める。
「ありがと」
「iotuは、穏やかに微笑んで最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

------

僕は、穏やかに微笑んで最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
いつでも君とは真っ直ぐに言葉を交わしていたから、嘘をつかなければならない事態に驚いている。
「君が居なくても何も変わらないさ」と想いとは裏腹の嘘をついた。
君は俯いた。
どうせならいっそ笑い飛ばしておくれよ。
こんなにも愛おしく思っているのに、愛の言葉が思い浮かばない。
どうすれば、この心を伝えることができるのだろうか。
君へ届けたい想いで頭の中が真っ白になる。
まるで灼ききれてショートした回路のようだ。
君への想いは、好きでも、大好きでも、愛しているでも物足りない。
もっと想っている。
生まれ持った性格だからだろうか。
私はときどき強く物事を言いすぎる。
そして相手をへこませてしまう。
そんなつもりで言ったわけじゃないのに。
ほらまた、君に言い過ぎた。
君は涙をこらえて謝罪の言葉を口にした。
そんな言葉を聞きたかったわけではないのに。
私はしてもしきれない後悔をする。
その映像には色んな種類の靴が映っていた。
子どものスニーカー、学生のローファー、女性のハイヒール、男性の革靴。
それだけの映像だったが、丁寧に撮られた被写体は輝いて見えた。
僕は思わず息を飲む。
完膚なきまで打ちのめされる。
才能の差を見せつけられたようで僕は映像から視線を逸らす。
君はこの瞬間に上目遣いで、僕の両手に触れる。
もう別れなければならない道で、僕たちは立ち止まった。
君は何か言いたげだったけれども、言葉にしない。
僕は君の言葉を待っているというのに。
君の大きな瞳に僕が写りこんでいた。
それだけでも、明日という希望に繋がるような気がしていた。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

------

僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
幸福にはわずかに足りない幸せのためだった。
「もう、迷わないよ」と僕は言った。
君はハッとした表情を浮かべた。
悩んで、困って、迷っている優柔不断の僕は、微笑んで。
どうかちっぽけな嘘だと気づかないで。
どこにでもある別れの情景だった。
夕陽はとうに沈み、頼りのない街灯の下、二人は立ちつくしていた。
僕は重たい口を開く。
「君に出逢わなければ幸せだった」と僕の言葉に、アスファルト雨でもないのに濡れていく。
俯いたままの君の顔は分からない。
絞り出すように「私は幸せだったよ」と言う。
葉を落とした木は寒そうだと純粋に思った。
それが朝の通勤の時だった。
帰り道またその木に出会う。
LEDが巻きつかれてイルミネーションが人工の光を発していた。
それを見て脱力する。
寒いのは僕の心だけだったのだ。
少なくとも木は大切にされて、必要とされているのだと分かったら泣けてきた。
PREV ← HOME → NEXT
プロフィール
HN:
iotu(そら)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH