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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『母は目が見えない』

母は目が見えない。
それだけ書くと目が不自由な人のような気がするけれども、現実は違う。
母の目は眼鏡をかけなくても、自動車を運転できるほど良好だ。
そんな母は兄のこととなると溺愛して、目が見えなくなる。
一番初めに産んだ子だからだろうか。
兄に対して盲目だ。
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『寂しさの余白』

真四角の便箋には余白があった。
文字が書かれていない余白には寂しさが漂っていた。
それは当たり前のように存在していた。
白い余白が迫ってくるようで、だからといって書くようなことなんてなくて、余白は余白のままだった。
寂しさの余白を指でなぞる。
変わることはない。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

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僕は、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
それは新しい輝きを持つ前へ進むための嘘だった。
嘘をつかなければ前へと進めない弱虫の僕。
「これ以上関わらないでくれ」と君に言う。
本当は君と一緒にどこまでも行きたかった。
けれども、それは許されない。
どうか嘘だと気づかないで。
『見守っていて』少女はそう言った。
どんな思いでそう言ったのか、青年の好奇心が疼く。
少女はこれから、魔法学校の組み分け帽子をかぶる。
青年とは性質が違うから、同じ寮に入ることはないだろう。
そう分かっていても知りたいと思ってしまった。
青年は少女に頼まれたように成り行きを見守る。
幼馴染は空色のブックカバーをした本を読書中だった。
私はというと冬休みの課題に取りかかっていた。
ドリンクバーがあるファミレスは、ほどよく混んでいて、家にいるよりもあたたかかった。
「課題は終わった?」と幼馴染が尋ねた。
手元を見るとぽつりぽつりと、穴埋めが終わっていなかった。
冬本番といった寒さの中、幼馴染と初詣に行くことになった。
今年は本厄という受験生の二人は、大師様にお祓いをしてもらうことになったのは、当然の成り行きだった。
思ったよりも電車は混んでいて、吊革に手が届かない私は踏ん張る。
幼馴染が手を差し出してきた。
仕方なく、指先にしがみつく。
『魔法使いの泪』

人と違う時間を生きていく魔法使いは、見た目と実年齢が違うことがままある。
永い時を暮らして、様々な経験を積んだ魔法使いは、泪を零すことはほとんどない。
全くないと言ってもいいぐらい無表情だった。
それなのに拾い子は旅立つ時、魔法使いの泪を見ることになった。
『ドラゴン拾いました』

子どもが犬や猫を拾ってくるのは珍しくないだろう。
段ボールの中に捨てられている動物たちは哀れだった。
だからといって面倒を見られない子どもが拾ってくると迷惑だ。
必ず元の場所に戻してくるように言った。
ある日「ドラゴン拾いました」とトカゲを連れてきた。
『拝啓 嫉妬様』

好きな人の隣に、可愛い女の子がいると嫉妬してしまう。
私は可愛くないから。好きな人に振り返ってもらえないから。
知りすぎている気持ちが手紙のように重なっていく。
書き出しは『拝啓 嫉妬様』だろう。
安物のボールペンで乱れた文字で書かれているはず。
私の心の奥底で。
君と別れる時間は、どんな時でも寂しかった。
僕は立ち止まる。すると君も不思議そうに立ち止まる。
繋いだ手だけが絆のようで、心細かった。
「幸せにする自信もないし、君が笑顔でいられる自信もない」と僕は切り出した。
君は無言で耳を傾けてくれる。
「一生分の君が欲しい」僕は言いきった。
家族と共にいても気まずい空気が流れている。
年老いた両親に合わせて、相槌を打つのも限界だ。
妹と目で合図をする。
「そろそろおいとまするね」と言うと、両親は「もう少しいてもいいじゃないか」と空気を読まずに言う。
自分勝手なそんなところが嫌なんだ。
「明日から仕事だし」と言い訳する。
太陽の隣に月を置く。
月は照れるのか青空の中、白い姿をさらす。
それを道行く人はシャッターを切る。
時に閉じこめて、記憶にする。
空は青空で、冷たい北風が雲を一掃したから、太陽の隣にいる月は目立つ。
太陽と追いかっけこをする月は夜に見る姿とは違った。
星に囲まれていないというだけで。
二人はソファの上に座って、撮りためたDVDを消化していた。
君は熱心に見ているけれども、僕は退屈を覚えてきた。
ソファの上に無造作に置かれた君の白い手。
僕は無理矢理、君の指先に触れる。
僕よりも小さな君の手を、なぞる。
君は驚いたように、TVから僕を見た。
作戦は大成功のようだった。
『クリスマス・アップルケーキ』

クリスマスケーキは白いホールのケーキでも、ブッシュドノエルでもなかった。
お母さん特製のアップルケーキだった。
香ばしい匂いとバターの溶ける匂いが室内に充満していた。
家族が揃う前にできたてのアップルケーキが食べたいと胃が大きく鳴ってしまった。
『時をかける始末書』

仕事始めに出勤した今日。
デスクの上には始末書が載っていた。
日付を確認すると去年のものだった。
どうやらこの始末書は新年を誰もいない職場で越したようだった。
それはそれで不憫なことだった。
時をかける始末書を読むために、椅子に座った。
じっくりと目を通す。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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