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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

------

僕は、祈るような神聖な気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。そのための嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と君に言った。
こうして君と離れていくのが怖いのに、作り笑いで僕は告げた。
「それなら良かった」と君にも笑顔が浮かぶ。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
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君はアルバムを広げていた。
そんな君の存在感は薄く、今にも消えてしまいそうだった。
君は何枚かの写真をアルバムから引き抜く。
そしてその写真を僕に見せる。
どれも二人が笑顔で映っている写真だ。
「必要?」と君は尋ねる。
「君が必要なら」
「そのくらいなら、持っていくのを許してくれる?」
霞でも食べているんじゃないか、と思うぐらい君の食は細い。
少しでも栄養価のある物をと頭を巡らせて、僕はキッチンに立つ。
幸い君には好き嫌いはない。
できたての料理をダイニングに並べる。
君は「ありがとう。いただきます」と感謝の言葉を述べる。
「どういたしまして」と僕は笑顔になる。
外は雷鳴がとどろいていた。
雷が避雷針にひとつ落ちる度に、唇を噛む。
こんな日に限って、あなたの帰りは遅い。
雨に濡れて帰るあなたの心配よりも、たった一人きりで雷に耐える自分自身を優先させた。
あなたがいれば『大袈裟だな』と笑いながら、抱きしめてくれるのに。
部屋の片隅で縮こまる。
ビルの屋上、フェンス越しに裸足の君と目が合った。
僕がいるフェンス前には揃えた靴と白い封書。
どんな気持ちで君はそこに立っているのだろう。
かける言葉は見つからなかった。
だからさりげなく、君の手のひらに指を絡める。
フェンス越しの握手に君は仄かに笑った。
そして君はゆるりと解いた。
『重苦しい笑顔』

「生前は主人がお世話になったようで、ありがとうございました」
と未亡人になったばかりの女性が頭を下げた。
頭を下げるのはこちらの方だ。
むしろ胸ぐらをつかまれてもおかしくはない、そんな自分だった。
未亡人は重苦しい笑顔を浮かべて「感謝をしております」と言った。
『喜んでくれると思ったのに』

君の誕生日を知って準備をしていた。
どんな物を好むのか分からなかったら、無難な物にした。
君が喜んでくれる顔を想像して、恥ずかしかったけれども、雑貨屋さん巡りをした。
それなのに予想とは正反対の結果になった。
喜んでくれると思ったのに、涙が零れた。
『君は「夏にできる女」』

僕は知っているよ。君は「夏にできる女」だってことを。
背筋が凍え終えるほどの美しい冬とは違う。
柔らかで優しい春とは違う。
眩しいぐらい煌めく太陽と海が待つ夏、そのものだ。
君がいなければ夏は始まらない。
今は君の季節ではない。それだけのことだよ。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
・・・どうしようもないな。」

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僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それは本音と真逆の嘘だった。
こんな嘘を君についてどうするのだろう。
事態は変わらないだろう。
それでも言わずにはいられなかった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と尊い毎日に向かって言った。
本当に・・・どうしようもないな。
ここ数日あたたかかったから、体内時計が狂ってしまったのだろう。
枝に桜が綻んでいた。
もうすぐ寒波がやってくる。その時、この咲いたばかりの桜はどうなるのだろうか。
誰にも気づかれずに散ってしまうのだろうか。
それは哀しい。
手にしていたスマホで桜を撮影して、タイムラインに流した。
いつか遠い未来に郷愁を覚えるのだろうか。
僕は列車に乗りながら、変わっていく風景に目をやった。
生まれ育った町から遠ざかっていく。
今は寂しさを感じない。心の中は期待であふれていた。
君から最後に貰った手紙を開封する。
要点を得ない文章が並んでいて、おしゃべりな君らしいと脱力する。
修学旅行の班活動。
何故だか、みんな好き勝手に歩き出した。
予定表通りにはならない。
笑顔で『集合時間に再会しようか』と言って去っていく。
私と班長だけが残った。
「どうする?」と班長が訊く。「予定表通りに」と私を答えた。
班長は目を逸らしつつ、両手のひらを触れ合わせる。
嬉しかった。
『どうぞお好きにならせて』

最初はゲーム感覚だった。
どちらも暇と寂しさを持て余していた。
どちらが本気になるか、グラスにコインを滑らせていくようなものだった。
ルージュを塗った君の唇が笑む。
「どうぞお好きにならせて」とコインを落とした。
グラスは表面張力を失い、溢れかえった。
『真夏は都合の良い嘘を夜につかせて』

夜が短いから、一緒にいられる時間も短くなる。
だから真夏は都合の良い嘘を夜につかせて。
どんな嘘だっていいの。どれほど軽い気持ちでもいいの。
あなたと私にとって都合が良ければ、それだけでいいの。
一緒にいる理由なんてそんなもの。
短い夜の嘘。
『文字では伝わらないこと』

一生懸命に考えて考えてラブレターを書いた。
生れて初めての割には上出来だ。そう自画自賛するほどよくできていた。
後はこれを青い瞳の君に渡すだけだった。
「ゴメンナサイ。難しい漢字は読めないの」と君は言った。
文字では伝わらないことだ。
だから声にした。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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