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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『君すぎた季節も』

君すぎた季節にも、ようやく慣れてきた。
今までどの季節にも君がいたから、君がすぎ去った季節に、時おり途惑うこともあるけれど。
君が好きだった。
君が通りすぎて、ようやく言える言葉だった。
白いためいきは、そっと夜の闇に溶けていった。
君との思い出と一緒に。
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「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
最後にふさわしく、それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「世界は希望で溢れている」とこれから旅立つ君への最後の言葉にした。
本音は仕舞い込んだまま。
苦難の道を行く君にせめてもの言葉を贈る。
ついていければどんなに良いだろうか、僕は思った。
静かに読書をしていた君が荒々しく本を閉じた。
本が痛そうだ、と思った。
君は目を三角にして、僕を見た。
「こんな終わり方なんて、望んでいない。こんなのハッピーエンドじゃないよ」と僕に訴える。
僕が書いた本ではないから、返答に困る。
書きかけの文章を見て、君が望む話にしようと思った。
夜更けに幼馴染からLINEが飛んできた。
『会いたい』とだけ送られてきた。
孤独に漂っているのも飽きてきたところだった。
『そうだね』とスマホをタップする。
すると『迎えに行く』と秒で返ってきた。
コートとマフラーを手に取ると慌ただしく支度をする。
君に感謝しなければならない、と思った。
部屋に沈黙が落ちてから、そろそろ一時間。
お喋りな君がそわそわし始めた。僕も大人げなかったと後悔し始めている。
どちらが先に切り出すか、勝負のようになってきた。
時刻を知らせる鐘が鳴った。
君は遠慮がちに、僕の指先を指先でつつく。
僕が振り向くと「ごめんなさい」と言った。
仲直りだ。
『自酔生活』

君は立ち去る前に笑いながら『自炊生活するんだよ』と言った。
何でも君任せだったから、何から手をつけていいのか分からない。
手を伸ばせば届いた距離にあったのは料理酒用の酒瓶。
それを抱えながら君がいた頃の夢を思い描く。
まるで自分に酔うような『自酔生活』の始まりだ。
『真昼の夢。
 真夜中の夢。』

あなたは真昼の夢を見た。私は真夜中の夢を見た。
どちらも同じ夢なのに方向は正反対。
あなたが見た真昼の夢の中には私はいない。
私が見た真夜中の夢にはあなたが立ち去っていくところだった。
似ているようで違う夢を私達は見た。
もう二度と見ることはない。
『君が待つサヨウナラまで、あと15Km』

あと15kmで僕たちは離れ離れになる。
短い距離だった。歩けばそれなりの距離だったけれども、車ならほんのすぐだ。
君が待つサヨウナラまで、あと15km。
渋滞につかまらないだろうかと願いながら、僕は運転する。
ちらりと助手席の君の横顔を盗み見る。
「サヨウナラ、愛しい人」と君は大袈裟に言った。
偽りの関係は今日でおしまいだった。
僕は君のことが好きだったけれども、君にとってはただの恋愛遊戯だった。
「最後ぐらい嘘をやめよう」と僕は言った。
「いつから嘘だってわかってた?」と君は微笑みながら、残酷な質問をした。
「最初から」
君は「消えない愛の証をちょうだい」と言った。
だから胸元にキスマークをつけた。
いつかは薄れていく痕に、君は嬉しそうに笑った。
そしてお返しというばかりに、僕の手の甲を強く吸った。
けれども痕はつかなかった。
だからか、甘噛みをして歯痕をつけた。
その痕を見て、君は嬉しそうだった。
複数人分の血の量に僕は狼狽する。
幼少の少女には、この無惨な光景はどう映っただろう。
大きな掛け時計の中に隠れたから、死から逃れられた。
犯人はいたぶるように一人ずつを殺していったようだ。
悲鳴は大きな掛け時計に消されてしまったのだろうか。
幼い少女は言葉を忘れたように話さない。
あれはまだ蝉時雨の中の記憶。真夏の記憶。付き合いたての僕たちの記憶。
夏期講習も終わり、本格的な夏休みに入った。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の両手を両手で包む。
「たくさん思い出を作ろうね!」と君は声を弾ませて言った。
一度きりの夏の記憶。
雪が舞う今日も君は僕の隣にいる。
『恋、キンキンに冷えてます。』

「どうですか?」と君は雪の中から出してきたモノを見せつける。
「僕が受け取っても良いものなのかな?」とたじろぐ。
「もちろんです。恋、キンキンに冷えています。喉ごしが良いですよ」とビールのCMのように君は言った。
「じゃあ、ちょっとだけ」と言う。
『ニューアブノーマル』

久しぶりに会った友だちは、一見して通り過ぎるような風貌に変わっていた。
「失礼じゃない?」と腕をつかまれては逃げることはできなかった。
「ずいぶん奇抜になったわね」辛うじて笑いというものを浮かべた。
「ニューアブノーマルと呼んでちょうだい」と言われた。
『あの夏に恋をした蝉たちへ』

蝉時雨が汗のように流れる夏でした。
あの夏に恋をした蝉たちへ。わずか一週間という短い恋でしたね。
それでもあなたたちの恋は成就したのですね。
私もあなたたちのように恋をしました。
気持ちは受け取ってもらえました。
だから私は蝉時雨に紛れて泣きました。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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