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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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二人はもつれこむように路地裏に隠れた。
「あんたの責なんだからね」少女が少年を睨みつける。
「ごめん」と少年は謝った。
少年は優しく、少女の腕に指を絡める。
すると仄かに光り出して、少女の腕から一振りの剣が生まれてくる。
痛みを耐えるように、あるいは恍惚するように少女は瞳を閉じる。
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『どんな君も好きでした』

卒業式が終わった後、部活の先輩を呼び止めた。
上京する先輩とはもうお別れだ。
最後に想いを告げたかった。
それなのに涙が後から後からあふれてきて、言葉にならなかった。
先輩は微苦笑をして、ハンカチを差し出した。
「どんな君も好きでした」と先輩は言った。
『サヨウナラは二人の意味も知らずに』

サヨウナラは二人の意味も知らずに、やってくる。
繋いだ手を離すこともできずに、ただ歩き続けた日々の中で。
『サヨウナラ』を言ったら二人でいられなくなることだけを意識して。
二人きりで、ぽつりぽつりと交わす言葉もつきかけて。
最後は笑顔で。
『朝日遅延交渉』

春が近づき、朝が来るのが早く感じられるようになった。
それでもぬくもりのある布団から出るのは辛かった。
一気に起きてしまえばいいのに、ずるずるとぬくもりの中に抱きしめられていたい。
朝日遅延交渉なるものがあればいいのに、と都合の良いことを夢と現の間で考える。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
どうかどうか、君には幸福になって欲しい。
それから出た願いだった。
「君と過ごした日々がすべて夢でも構わない」と囁いた。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けないだろう。
二人で過ごした過去を否定したのだから。
火照った体には、雨に濡れて気持ちいい。
傘を差さずに歩き続けた。
体には、まだ余韻が残っていた。
冷たい雨に降られるぐらいでちょうどいい。
それに雨に打たれていると、冷静さが戻ってくるような気がした。
自分でも意外な展開だった。
こんなことは初めてといってもいいだろう。
二度目はない。
「やましいことなんて一つもないよ」と僕が言う。
「それなら証拠を見せてよ」と君が言う。
「今までも、どれだけ言葉を費やしても信じなかったじゃないか。もう別れようか」と僕は切り出した。
君に振り回されるのに疲れたところだった。
君は泣き顔で、僕の指を指先でつつく。
「ごめんなさい」
『鎮恋剤』

学校の保険医となると、ケガや病気だけではなく、人生相談を受けることもある。
この日もそうだった。
暗い顔をした女生徒が保健室に入ってきた。
「先生。鎮恋剤ってありますか?」と女生徒は俯いたまま尋ねた。
聞いたことのない薬だったが、生徒の中で流行っているのだろう。
『弱ったふり』

私は人一倍、健康優良児だった。
そんな私が憧れるシチュエーションがある。
貧血で階段を踏み外して、男子に抱き止められる。
そんな少女漫画みたいなシチュエーションに心を踊らせていた。
階段を下りていると男子たちの明るい声が登ってきた。
私は弱ったふりをしてふらつく。
『僕はきっと邪魔なんだ』

お母さんはいつもイライラしている。
お父さんは僕を見ないで、お姉ちゃんばかりを褒める。
家族の中で僕だけ独りっきり。
僕はきっと邪魔なんだ。
いない方がいいんだ。
死ぬ覚悟はできないから、家出の準備をする。
僕は消えた方がいい人間だから、涙を流しながら。
学校で被災地に千羽鶴を折ろうという課題が出た。
時間内に折り終わることができず、家に持ち帰ってきた。
ダイニングで間に合うだろうかと黙々と折っていると、兄が帰ってきた。
「お腹空いた、なんかない?」と兄は母に尋ねる。
「もうすぐ晩ご飯にするわよ」と母が答える。
やっと折り終わった。
気心知れたバーで独りで呑んでいた時のことだった。
「隣いいかしら?」と妖艶な女性が声をかけてきた。
「どうぞ」と僕は頷いた。
やたら度数の高いカクテルばかりを注文する女性が心配になった。
「どうかしたんですか?」と踏み入ったことを尋ねてしまった。
鈍感だから絶好のチャンスを逃す。
寒いは通り越すと痛いになると知った寒い朝。
それでも制服のスカートを折るのはやめられない。
ちょっとでも可愛いって思ってほしいから。
「それにしても寒いな」と彼が電車のつり革につかまって言った。
「そうだね」と頷いた瞬間揺れる車内。
「捕まって」と言われて恐る恐る、腕を両手で包む。
『虹の歴史と貴方の記憶』

貴方の記憶よりも虹の歴史は長い。
比べるようなものではないけれども、分かりきったことだろうから。
貴方は熱心に虹の文献に当たる。
あの日、二人で虹を見てから、ずっと。
淹れた紅茶が冷めてしまったことが残念。
それぐらい貴方にとって虹は魅力があるのだろう。
『快男児製作所』

インドアの父親に似たのか、授かった三人の子どももインドア派だった。
休みの日は一日部屋の中で、こもっては何かをしている。
若いうちは色んな体験をしてほしいと思っているから、ため息が自然と零れた。
郵便受けに入っていたチラシには『快男児製作所』と書いてあった。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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