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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『未練人』

ありったけの愛情を注いだ。言葉を惜しまずに伝えた。
けれども、君は離れていってしまった。
まだ君のことを思い出せる。僕の名を呼んだ声も、どんな風に呼んでくれたかも。
君は『僕の愛が重い』と言っていた。
それならばどうすれば良かったんだい?
今晩の僕は君に未練人だった。
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『絶滅危惧種:ホモ・サピエンス』

博物館にはいろいろな展示があった。
すでに絶滅してしまった動物や植物を展示されていて、初めて見るものに思わず目を輝かしてしまった。
そして階段を上って、新しい展示室に。
そこには人間が飾られていた。
プレートには『絶滅危惧種:ホモ・サピエンス』。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
・・・どうしようもないな。」

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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と君の頭を撫でる。
言葉ばかりが歩いていく。本当の気持ちは秘めたまま、すれ違っていく。
君へ告げるべきではなかったのかもしれない。
・・・どうしようもないな。と僕は笑顔を作る。
一緒にいられることに夢中で、一番初めにした約束を忘れた。
期限が決まっていたことすら、覚えていなかった。
それほどまでに美しい天女を手に入れた。
天井裏に羽衣を隠して、天へと帰られなくした。
けれども天女は羽衣を見つけだした。
男との間に出来た子どもの頭を一撫でして、天へと帰った。
搭の天辺には禍つ姫が囚われているという。
それを聞いた少年は搭に飛びこむ。
災いを恐れているのか、門番すらいなかった。
少年は螺旋階段を駆け上がる。
そして、天辺までやってきた。
鎖でつながれた美しい少女がいた。
「忘却すら許されない妾にどのような用事があることやら」と禍つ姫は笑う。
『野良猫のソリチュード』

かつては飼い猫だった。
幼い主に抱きしめられて、あたたかい家でくつろいでいた。
けれども、どんな事情があったのだろうか、大人になった主は私を野に放った。
それ以来、野良猫として生きている。
時折、主が抱きしめてくれたぬくもりが恋しくなる。孤独と共に。
『雪の谷』

「君は雪の谷を見たことあるかね?」と手をこすりあわせながら、年老いた男性が尋ねた。
「残念ながら、僕は写真集だけしか見たことがないです」若い旅人は言った。
「懐かしい故郷だ。訪れてはくれないか?私は元気だと伝えてほしい」と男性は地図を手渡す。
新しい旅の始まりだ。
『驚気話集』

「最近は人生がつまらない、と思うことが増えたよ」と初老の男性は言った。[
「こう驚くような、気合が入った話はないものかね」と窓の外を見ながら、言葉を続ける。
「では先生がお書きになったら、どうでしょう?」僕は提案した。
「それはいい!名案だ。次の作品は驚気話集だ」
僕と君はつぎはぎだらけの恋模様。
コイントスでもしているかのように、好きと嫌いが裏表。
とんでもなく好きだと感じる時もある。
憎たらしくて口をききたくないほど嫌いになる時もある。
まるで紙の裏表。感情は簡単に入れ違う。
それでも僕と君は、繋いだ手を離さないのだから、とんだ天邪鬼だ。
「あ、雨だ」と昇降口で僕は呟いた。
こんな時に傘は持ってきていないし、置き傘もしていない。
職員室まで戻って傘を借りようかと思った。
「相合い傘で良かったら、入る?」と声をかけられた。
独り言のつもりだったから驚いた。
横を見ると、悪戯っぽい表情の君。
嬉しい誤算だった。雨に感謝を。
理科の先生にお願いして、望遠鏡を見せてもらった。
けれども冷酷にも、空は曇り空。
星も月も見ることができなかった。
「ありがとうございました」と僕は先生にお辞儀をした。
「あ、待って」と先生が呼び止めた。先生は立ちあがる。
引き出しの中から一枚のビニール盤。
「星座早見盤だ」と言う。
君の機嫌が悪いことに、薄々気がついていた。
どうやら僕は何かへまをしてしまったようだ。
君が一言も喋らない夕方の帰り道。心身ともに氷るように寒い。
さりげなく君の手を握ろうとした。
すると君は上目遣いで、指を折れんばかりに握る。
それだけの痛みの分、僕は君を傷つけてしまったんだね。
『雨は君の嘘と彼女の涙も、同じく流して。』

決まって雨の日に君は彼女のもとに訪れる。それを僕は知っていた。
「愛しているよ」と君は甘い言葉を彼女にささやくだろう。
そして彼女は涙ぐみながら「嬉しい」と言うだろう。
雨は君の嘘と彼女の涙も、同じく流して。夜まで振り続けるだろう。
『季節がなくなっても桜はさくの?』

「季節がなくなっても桜はさくの?」と澄んだ声が尋ねる。
尋ねられた方は困ったような顔をして、小さな頭を撫でる。
そして「祈ればさくかもしれない」と呟くように言う。
季節がなくなってしまったら花はさかないと知りながら、笑顔のために嘘をついた。
『夢を織る』

縦の糸に横の糸を通して夢を織る。
幸せな夢、甘い夢を規則正しく織っていく。
もう誰も悲しみを感じないように、織り続けていく。
そのことで誰かが苦しい思いをしなければいい。
私は他人の夢を織り続けて、自分の夢を見ていないことに気がつく。
それが私に与えられた罰なのだ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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