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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『冬に君はいない』

凍えるような冬に君はいない。
全ての命が歌うように目覚めの季節にしか君の姿を見ることができない。
枝についた固い蕾を見ながら、君のことを思った。
早く凍るような冬が終わればいいのに。
たとえ君が散っても、葉が残る。
青々とした葉を見て君を思い返すことができる。
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『夜に抱けぬものなし』

夜はどんなものも包みこむ。
悲しみも、苦しみも、喜びも、楽しみも。
全部を包みこんで、眠りへと誘う。
夜に抱けぬものなしだった。
膝を抱えている少年も、涙跡が頬についた乙女も、付き合いで呑んでいる夫も、苛立ちながら帰りを待っている妻も。
夜は抱きしめる。
『初入社日の入り口の先はギルドだった件』

スーツを着て、皮の鞄を持って、革靴を履いて、社会人一年生らしく電車に乗った。
似たり寄ったりの服装の人を見ると、少しばかり安心した。
これから始まる出来事に、不安半分、期待半分だった。
初入社日、地図通りにつくと入り口はギルドだった。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
君は君のままでいてほしいから、僕は口を開く。
「今とても幸せだよ」と、明日の僕は不幸せになっているような気分を抱えて言う。
君が幸せならそれでいいと思う。
本当に・・・どうしようもないな。
君との別れ際、いつもと表情が違ったから、僕はその手首を握った。
君の瞳が夕焼けの中で揺れている。
「なんでこの手を離してくれないの」と君は震えながら言った。
「ここで別れたら後悔しそうな気がするから」と僕は言った。
君は俯いて「明日引っ越す。もう転校先は決まっている」君は告げる。
水面を泳ぐ鳥たちが渡りの季節になった。
これから先、何キロも飛んでいく。それは辛いだろうと、それは大変だろうと思った。
いつまでもこの地に留まっていてもいい、と考えた。
けれども、渡り鳥は空に列を作って飛んでいく。
それが昔からの習いだ。
だから少しでも、たつ鳥を目に焼きつける。
今は廃墟になってしまった家にも虹色の時間があった。
立派な父と優しい母、仲の良い兄妹。
それがある瞬間から、ガラガラと崩れてしまった。
一家は親戚の家に頼り、肩身を狭い思いをした。
今でも幸福だった虹色を思い浮かべ、心が疼く。
もう二度と戻ってこない日常は思い出になってしまった。
少女は海が好きだった。
まるで遠い彼方を見るように、いつまでも海を見続けていた。
それに青年は付き合って、海を見ていた。
少女はここまで海に固執する理由は分からない。
少女はふらりと立ちあがって、波打ち際まで歩いていく。
止める言葉のない青年は、仕方なく、両手のひらをぎゅっと握る。
『要らなくなった話』

姉に甥っ子の面倒を見てくれないか、と依頼された。
ちょうど暇な日曜日だったから引き受けた。
久しぶりに出会った甥っ子は、想像以上に大きくなっていた。
「好きな子いる?」と甥っ子は尋ねてきた。
別れたばかりの身には辛い話だった。
要らなくなった話しかできない。
『殺意を描く』

彼女のキャンバスは死んだ色が塗りたくられていた。
何を描いているのか分からない。
ただ色という色が氾濫していた。
まるでそれは、殺意を描くようだった。
己の心を殺し、色をキャンバスに叩きつける。
それのくりかえしでできた作品は、誰もが立ち止まるような出来上がりだ。
『自由なき殺人』

殺す相手は決まっている。
自分の手を汚したくない連中が、どっさりと依頼をしてくるのだ。
殺すには忍びない子どももいた。
輝かしい未来が待っている若者もいた。
命がつきかけている老人もいた。
黙々と殺していった。
言い訳の準備のない自由なき殺人だ。
地獄行きだろう。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

------

僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それは君に対して、最初で最後の嘘だった。
今までたくさん嘘をついてきたから、罰があったのかもしれない。
「もう希望に捨てられるのはいやなんだ」と僕は君の瞳を見つめて言った。
頼むよ、ごまかされてください。これが僕にとって最後の嘘にするから。
いつの間にか寝てしまった君を抱える。
起こさないように慎重にベッドに下ろして、毛布を掛ける。
良い夢を見ているのだろうか。君の顔は微笑んでいた。
僕はスイッチを消して、書斎に足を運ぶ。
スイッチを消すのは、いつだって僕の役割だ。
『夜になるのは寂しいから』とあの日、君が言ってから。
「どうして星は光るんでしょうね」と少女は、星の欠片の中身を詰めこんだ提灯を振るう。
「生命は輝かずにはいられない」と青年は言った。
「答えになっていませんよ」少女は笑った。
「星が光るのは、お前の瞳が輝くのと一緒だ」と青年は苦し紛れに、星をかばう。
二人は夜空を見上げながら笑う。
好きなものが違うから、よく喧嘩になる。
傷つけて、傷ついて、口論の果ては重苦しい沈黙。
どうしても譲れないもの、ではなかった。癪に障るけれども、僕の方から謝ろうか。
そんなことを考えていた。
すると君が泣きそうになりながら、僕の両手のひらに触れる。
そして「ごめんなさい」と謝った。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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