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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『惜別ユートピア』

楽園から追われ、夢想したユートピア。
存在するはずのない惜別ユートピアに手を振る。
苦い味はしなかった。ただ塩辛い風が頬を撫でていった。
罪の果実をお互いに食べあって、追い出された先に見た夢のような世界だった。
そことも別れの季節が来たのだと風が知らせた。
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『彼岸花と鬼』

客が来たら必ず通す部屋があった。
目の前にお茶を置かれた客は「これは見事な屏風ですな」と褒めたたえた。
赤い彼岸花が咲き乱れる中、赤い血に染まった鬼が描かれている。
よくある主題かもしれないが、どんな客に見せても同じ反応をする。
この絵を描いた画家はもういない。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
ここで失敗してはいけない。その思いが声を震えさせる。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と僕は魔法をかけるように言った。
「そうだね。くだらないね」君は微笑んだ。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
あなたの夕陽の中の横顔は憂いていた。
「泣きたいくせに、意地っ張り」と私が言った。
するとあなたは私を見つめる。
「これでいいんだよ。多くを求めてはいけないからね」とあなたは寂しそうに笑った。
そんな顔をするぐらいなら、外聞なんて考えずに泣いてしまってもいいと私は思ったのだけど。
ご主人様が忙しいのは知っているの。
毎日、夜遅く帰ってきて謝るように僕を撫でる。
ご主人様の顔色が悪くなっても、僕へのご飯は毎日、用意された。
それが悲しくって、それが悔しくって。
ご主人様は寝る間を削って、今日も家で仕事をしている。
ときどきでいいから僕を構って欲しいなんて贅沢。
妹が高熱を出して、下がらない。
貧民の僕らでは薬を買うお金なんてなかった。
日々、脆弱していく妹を見るのが辛くて、僕は暗闇の中を走った。
鉱山へと続く道を静かに歩いていく。
ここで宝石を手に入れれば、妹に薬を買ってやれる。
僕は無心に掘り続けた。
すると輝く石を見つけることができた。
二人が真夜中に会うのは、何度目か。
周りの目が厳しすぎて、真夜中にこっそりと出会うことしかできない。
それすらも音もたてずに、公園で出会うだけだ。
「月が綺麗だね」と君は言った。
僕は目を逸らしつつ、君の両手のひらに触れる。
月なんか見ていないで「本当に月が綺麗だね」と僕は言った。
『ぼくの物語には隙がある』

ぼくはぼくの物語を歩いていた。
最初は両親に囲まれて、それから兄弟と、その後は友だちと。そして君と。
ぼくはぼくの物語に満足していていた、あの日まで。
ぼくの物語には隙がある。
隙間風のように冷たい風が吹く。
一生懸命、隙を埋めたけれども元通りになる。
『結局僕の人生の主役は僕だった』

僕はスポットライトが当たらない端役だと思っていた。
名前すらない通行人Aだと思っていた。
それなのにどうだろうか。人生が終わる瞬間、泣き出しそうに人々に囲まれている。
結局僕の人生の主役は僕だった。それに気がつけただけでも、幸せで嬉しかった。
『からむ季節をほどいていた』

君と出会った春が懐かしかった。
生命が歌うように輝きに満ちていて君の笑顔が眩しかった。
それから、どれぐらいの時間が流れていっただろう。
僕は気がつけば、からむ季節をほどいていた。
また君とやりなおせるように、もつれ、からまった季節をほどいていた。
「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それはどうしようもない嘘でした。
「全部忘れていいよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

------

僕は、胸をえぐられるような痛みに堪えながら君に最後の嘘をついた。
それはどうしようもない嘘だった。
嘘にしてしまうのが苦しいほどの嘘だった。
「全部忘れていいよ」と君に微笑んで告げた。
君は大きな目をさらに大きくして僕を見上げた。
僕のせめてもの願いだ。君は何も知らないままでいて。
君はすぐに目を移りする。
まるで唱歌に出てくる蝶のように花から花へと移り変わる。
そして都合よく私に「最後に帰るのは君の元だよ」とささやく。
こんな君に恋した私が悪いんですが、あまりにも酷い仕打ちだった。
私もこれからは花から花へと渡り歩いてやろうかしら。
その時の君の顔が見たい。
一番そばにいるのは僕だと思った。
けれども、君は僕以外の男性を選んだ。
仲睦まじく歩く姿を見ているだけで、嫉妬の炎で胸が焦げるほどの思いだ。
どうして君の隣を歩くのは、僕じゃないんだい。
悔しい気持ちで胸がいっぱいになってしまった。
これからは君の二番目になるかと思うと苦しかった。
二人そろって、寝ぼけ眼で空を見上げていた。
燦々と注ぐ日差しが春を告げていた。
いつの間にか空になっていたペットボトルに気がつく。
俺は二つ分のペットボトルを持って、立ちあがる。
君は「あ」と気がついたように声を出す。
「俺が捨ててくるよ。ゆっくりしていろ」と俺は君の頭を撫でる。
君は怒り顔で、僕の手のひらを握り締める。
「こんなところに何の用?」と君が尋ねる。
僕は女性用のワンピースを眺めていた。
カウンターの奥に身綺麗にした女性スタッフがいた。顔立ちは君に少し似ている。
「あのワンピース、君に似合うと思って」と僕は言う。
「嘘ばっかり」と君は頬を染めた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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