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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『夕日のすすめ』

「夕日はいいね」と初老の作家が窓を見ながら、誰に聞かせる気もないように言った。
同じ部屋に編集者の私がいることすら忘れているようだった。
それだけ落ちていく夕日を見つめていた。
「こんな夕日を見ていると、思い出が湧きあがってくるようだよ」と微笑みながら呟く。
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『先生から私を守ってくれた悪童』

彼は悪童と呼ばれて、先生すら要注意していた児童だった。
私は、ある日先生が作った大切なプリントを駄目にしてしまった。
どう謝れば許してくれるのか、そればかりを考えて泣いていた。
「名乗り出なさい」と先生は言う。
彼は「俺がやりました」と言った。
「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

------

僕は、心がズキズキと続く痛みに耐えながら最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。少なくとも言うべきことではなかった。
「君が幸せなら、幸せだよ」とウェディングドレスをまとった妹に言った。
誰よりも愛している人の祝福をする振りをする。
そんな僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。
そこは静寂だった。僕が歩く足音すら聞こえない。
わざと大きな音を立てようと、思いっきり足音を立てた。
それなのに僕の耳には、その音は届かなかった。
先導してくれていた神官が振り返り、微笑んだ。
怒られるのだろうか。僕は首をすくめる。
「ここにくると誰もがするのですよ」と神官が言う。
俺を長年閉じこめてきた家が炎に包まれていた。
狼狽した鼠たちが慌てて、逃げ出してきた。その様子の滑稽ないなこと、心から笑う。
俺はようやく自由を手に入れたのだ。そのことに喜んだ。
もう奴隷のように扱われることはないのだ。
俺は明るい未来へと一歩、踏み出した。
鼠たちの声は知らない。
僕は『今度こそ言うぞ』と意を決する。
そっと、自分の手のひらを軽く握る。緊張してきて、上手く言えそうになかった。
そんな僕を見て、ふいに君は笑った。馬鹿にしたような笑いではない。慈しむような優しい笑顔だった。
「仲直りしてくれる?」と君は小首を傾げた。
そんな君に僕は夢中だった。
『上手に朝になれず布団のなかで』

朝がやってきたのは、窓からの気配で分かっていた。
けれども、体を起こすのが難しく、横たわったまま目を開ける。
揺れるカーテンに金の光。
上手に朝になれずに布団のなかで、それを見つめていた。
今日も変わらずに朝がやってきたのだ、とためいきをつく。
『知らない神祟り』

人々は集会に集まると報告話をした。
そのほとんどが最近の天気についてだった。
田畑の実りが芳しくない。このままでは、来年に撒く種に手をつけかねない。
雨の量も少なく、代わりに酒を呑む。
知らない間に神に祟られていたのだろうか。
人々は白すぎる雲を見上げて祈る。
『神話が噂話だった頃。』

神話が噂話だった頃。
季節は常春で、人々は飢えることを知らなかった。
もぎった果実で腹を満たし、青空を見上げては、噂話をしていた。
人と神の距離は近く、まるで隣の家の芝生を見るようなものだった。
だから、人と神との間に子が生まれるのも当たり前だった。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは明るい明日へと、希望を携えて歩き出すための嘘だった。
見送りに来た君に向かって微笑む。
「欲しいものは手に入れたから、もういいんだ」と君に向かって最後になる嘘をついた。
・・・どうしようもないな。
独りで旅立つのが怖いのに。
こんなことで泣きたくなるのは間違いだ。
泣く時間があるのなら、努力へ費やした方がいい。
チャンスの神様を今度こそ、捕まえる。
また捕まえることができなかったら、捕まえられるまで何度でも。
諦めた瞬間が終わりの時間だった。
だから涙を拭って未来を見据える。
今度こそをチャンスをつかむ。
人は夕暮れ時に恋をする。そう言われた時は、不思議に思ったものだった。
けれども、今は納得していた。
寂しそうに夕暮れを見つめる君に、僕は恋をした。
青空の明るさでも、夜空の悲しさではなく、夕空の切なさに、恋に落ちた。
それは刹那の時間だった。
もう二度と見られない君の横顔に恋した。
今でこそ宇宙で繫栄している人類だったが、忘れてはいけないことがある。
一番初めに地球圏を飛び出したのは、人間ではない。
実験をくりかえした犬が宇宙船に乗せられた。
それは人情がない片道切符だった。
そのことを思うと心で泣く。
それから、何度も人間がロケットに乗って、今の繁栄がある。
あれはデートと呼んでいいものだったのだろうか。
お飯事の延長線にあったものだ。
こじんまりとした遊園地に二人は遊びに来た。
もちろん、親の許可はとった。それほど幼い二人のデートは波乱があった。
慣れた遊園地なのにはぐれたのだった。
ようやく見つけた君は泣き顔で、指先を両手で包む。
『月も終わったってことか』

夜空から星々が次々に消えていった。
朝になったわけじゃない。依然と常闇が広がっていた。
やがて月も少しずつ欠けていった。
「月も終わったってことか」と男は呟いた。
冷たい風の中、コートをはためかせながら、男は終わりゆく月を見つめ続けた。その果てを。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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