「春」のあなたに、初めまして。
「夏」のあなたに、こんにちは。
「秋」のあなたに、さようなら。
「冬」のあなたに、お元気ですか?
巡りくる季節の中で私とあなたは出会って、別れました。
また会うことができるのでしょうか。
そればかり気になるようになりました。
きっと寂しいからでしょうね。
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「iotuは、無理に笑顔を作って最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
本当に、ごめんね。」
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好きという言葉では足りない君。
そんな君に対して疑いの心は晴れない。
せめてもと無理に笑顔を作った。
「他に好きな人ができたんだ」たぶん最低な嘘だ。
「君もだろう?」と続ける。
君は悲しそうな顔をした。
「君を、信じきることができなくてごめん」と謝った。
本当に、ごめんね。
心で呟く。
最寄り駅についてしまった。
貴方の下車駅ではないのに、一緒に降りてくれた。
離れ離れになるのが寂しく感じたのは私だけではなかった。
心と心が繋がっているようで嬉しくなる。
「サヨナラにくちづけをしてもいい?」貴方は尋ねた。
付き合っているのだから自然だろう。
返事を待たずに額にキス。
少女は気を張るのに疲れてしまった。
万年2位の座も自分らしくていいじゃないか。
白金色の頭髪の少年が特別なのだ。
どんなに努力しても、勝つことはできない。
それでいいじゃないか。
そんなことを思い始めていた。
そんな矢先だった。
「おめでとう」少年は言う。
心に沈んでいたものが目覚める。
雷鳴の間隔が狭くなってきた。
雨が降っていないから、まだましなのだろうか。
ピカッと視界を純白に染めて、遅れて轟音。
怖くて、先ほどから母に電話をしているのだが気づかないようだ。
携帯電話は携帯しなければ意味がない。
何度も言っているのに、母はのらりくらりとかわすばかりだった。
街灯もまばら夜道。
かさっと音がして黒い影が横切っていく。
少女は小さく悲鳴を上げた。
「可愛い黒猫だね」少年はのんびりと言った。
少女は「べ、別に驚いていませんわ」と早口で言う。
次は林の方から鳴き声がした。
少女はさりげなく、両手にしがみつく。
「貴方が怖くないように繋ぐだけです」
書類が山のようにデスクに載っている。
てっきり文学的表現だと思いこんでいた。
実際に見ると壮観だった。
諦めの境地でためいきをついた。
どうやら、今日は帰れそうにない。
山を崩す作業を再開する。
地道にこなしていけば、やがてデスクは平らになるだろう。
今は、信じるしかない。
「それなぁに?」ほどほどの酔っぱらいに絡まれる。
「さつまいもの焼酎の水割り」呑んでいた酒を答える。
「美味しい?」どうやら絡み酒のようだ。
「職人が魂をこめて作った酒だ。美味しいに決まっている」
「じゃあ、次はそれにしようかな」見ればグラスの半分も飲み切っていない。
『空はこんなに青いのに』
空はこんなに青いのに君の瞳は雨模様。
空を見上げるほどの余裕もないらしい。
アスファルトには間断なく滴が落ちていく。
慰める言葉も思いつかず、青空に浮かぶ雲のように自由になれたら楽なのかもしれない、とぼんやりと考え事に耽ってしまう。
雨音を聞きながら。
『片割れる』
生まれる前から、人生の伴侶は決まっているらしい。
らしいというところがお伽話のようで胡散臭い。
決まっているのなら何故、離婚があるのだろう。
それとも本当の伴侶ではなかったということだろうか。
君に会うまで与太話は信じていなかった。
君を喪って片割れる痛みを知った。
『凪の後先』
今日も海は凪の時間になった。
心が落ち着かない。
凪はここにいない少女を思い起こさせる。
黒い瞳は最後の瞬間まで静まり返っていた。
凪の後先には万民の幸福が待っていたが、少女の姿はどこを探してもいない。
何故、手を離してしまったのだろうか。
最後の希望だったのに。
『流星に願いを込めて』
幾晩、空を見上げればいいだろうか。
幾年、祈ればいいのだろうか。
手をぎゅっと握り締めて諦めない。
きっと君の微笑みを独り占めにできる。
たった一人の大切な君。
お揃いの指輪をするような関係になりたい。
そんな未来を流星に願いを込めて、今日も夜空を見上げる。
「iotuは、馬鹿みたいだと自分に呆れながら最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」
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馬鹿みたいだと自分に呆れながら、これで最後だと嘘をついた。
未来のためについた嘘だった。
嘘をつかなければ前に進めない。
そんな自分に「欲しいものは手に入れたから、もういいんだ」と言い聞かせた。
こんなことしか言えないなんて、嘘で塗り固めてきた人生に後悔をする。
真実にしたい。
後宮も花街も大差ない。
そこには愛がなく、一夜の夢があるだけだ。
今日も格子越しに着飾った女たちが居並ぶ。
一銭でも高く売れるように、女たちは化粧をして、華やかな衣装を纏う。
見るからに貴族のお坊ちゃん風の青年が花街一高値の娘を指名する。
「私は高いわよ?」娘は妖艶な笑みを見せる。
漆黒の髪を持って生まれてきた。
貴族階級は明るい色の髪を持っている中で。
父は母の不貞を疑った。
領地から離れている間に、間男と睦みあったのではないかと母を責めた。
線の細い母は詰問に耐えきれずに、首を吊った。
それを見つけたのは私だった。
漆黒の髪は伝承通りに周囲を不幸にする。