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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『春が笑っている』

長い冬が終わり、春がやってきた。
冷たいばかりの星たちから、穏やかな花たちが咲く季節に変わっていくのだ。
木々の蕾が綻んでいく姿は、まるで笑っているようだった。
けたたましい暴力的な春は全ての始まりの季節。
僕の隣で、君が笑っている。
待ちに待った季節だった。
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『白紙に気持ちを吸い込ませて』

買って数年経つ日記帳はどのページも白紙だった。
これからも白紙だろう。
書くことはなく、記すこともなく、日記帳には気持ちが吸い込まれていく。
記録ではなく、記憶として。
溢れる想いを言葉にするのは陳腐過ぎる。
だから、このままで白紙で良いのだ。
『転写するのは君の星』

今日も夜空にはたくさんの星が輝いていた。
一つ一つ違う星の中から、君の星を探すのは厄介だった。
それでも、僕の心に転写するのは君の星だけでいい。
君の星だけがいい。
他の星を眺めていても、こんなに輝くことはないのだから。
煌めく星を見上げながら、僕は思う。
『輪切りの時計』

砂時計の砂が落ちていくように。
柱時計が揺れて時を知らせるのではなく。
アナログ時計の秒針がくるりと回って無言に進むのではなく。
デジタル時計が機械的に時を刻むのではなく。
私の中は輪切りの時計のように、心に知らせる。
『あなたが好きだ』と。
他の時計と違って。
「iotuは、内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

-------

たったひとつの嘘で君が笑顔になるのなら、僕は内緒話をするように声を潜めて最後の嘘をついた。
これから煌めく未来へと進むための嘘だった。
「君が幸せなら、幸せだよ」と囁いた。
君は何も知れないままでいて。
苦しみも、悲しみも、僕が全部引き受けるから。
だから、君は笑っていてと願う。
夢の君は、笑っていたのに、現実の君は涙を零している。
理由を訊いたけれども、教えてはくれなかった。
君の笑顔が見たいのに、どうすれば涙が止まるのだろうか。
僕は君を不安にさせてしまったのだろうか。
好きと思えるのは君だけだよ、と何度告げても君は不安げだった。
それが涙の元だろうか。
ハロウィン一色の大通りを二人は歩く。
君は僕をどう思っているのだろうか。
友だち?気になる存在?
夜も眠れないほど知りたい。
ふれそうでふれない手のように、二人の関係は曖昧だった。
思い切って告白をすれば、君は頷いてくれるのだろうか。
僕は今日も言い出せずに最寄り駅についてしまった。
国の破滅を免れたくないのなら、植民地として隷属するしかない。
国の未来を考えれば、全面降伏をした方が良い。
最後の一兵になってまで戦うよりも、庇護を受けた方が良いに決まっている。
女王は一人きりの部屋で涙を滲ませる。
父から受け継いだ国が属国になる。
もう少し強ければ良かったのに。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

------

大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら、君へ最後の嘘をついた。
心についた傷をいやすための嘘だった。
「君が居なくても何も変わらないさ」と言った。
こんなことしか言えない自分が情けない。
これで君とはお別れだ。
「それが答えなの?」君は縋るように尋ねる。
僕と一緒だと君はダメになる。
「なんでこの手を離してくれないの?」君は言った。
学校の屋上で。
白い封書が風に飛ばされないように置かれていた。
「離したら、飛び降りそうだから」僕は言った。
「あなたとは初対面よね。あなたに私の何がわかるというの?」泣き出しそうな悲痛な声を君はあげる。
本当は止めてほしいのだ。
彼女の誕生日に貴石のついたブレスレットを贈った。
それ以来、彼女の手首を確認する癖がついてしまった。
今日も彼女の手首は空席だった。
一生懸命に考えて店員さんとも話し合ってプレゼントしたものだ。
できれば身につけてほしい。
僕は気持ちを伝えた。
「なくしやすいから外でつけたくないの」
『お花見一緒にしようね』と君は蕾の桜を見上げて言った。
春もまだ浅い頃のことだった。
少しずつ良くなっている君の体調。
このまま退院できそうだった。
だから、僕も『いいね』と笑った。
君は上目遣いで、僕の両手を握る。
ひんやりしていて、生命が燃え尽きているような温度だった。
『約束よ』
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

無言でぎゅっと手を握りしめて二人は歩いていた。
国境沿いで手を離して、最後の嘘をついた。
輝く未来があると思っての嘘だった。
「すべて夢でも構わない」と少女に告げた。
この国を守るための生命がけの嘘だった。
・・・どうしようもないな、と思った。
少女は何も言わずに見送ってくれた。
切羽詰まった様子で少女がやってきた。
こんな夜遅く、どうしたのだろうか。
青年は本を閉じる。
「無理やり奪って、今すぐに」少女は詰めよってきた。
「何事にも順番があると思うのですが」青年はだじだじになる。
「お父様が嫁げと言ってきたの。だから、既成事実を作ってしまえばいいと思って」
生まれて初めて「好きだ」と言ってくれた彼女が自分以外の男と歩いていた。
その光景を見て僕は茫然とした。
好きとはそんな軽い気持ちなのだろうか。
とっても嬉しかったのに、そんな気持ちはしぼんでしまった。
自分から好きを伝えたことがなかったと気がつく。
彼女の心変わりを責められない。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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