「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
・・・うまく笑えたかな?」
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僕は特別に優しい声で嘘をついた。
それは悪あがきのような嘘だった。
「世界で一番、大嫌い」と。
・・・うまく笑えたかな?
君を傷つけてでも、僕は幸せになる。
これが最後の嘘なのだから、君は盛大に泣けばいい。
僕は君以上に泣いたのだから。
道化師のような笑顔の下で、涙を飲みこんできた。
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『早く結婚してくれれば良いのに』と思った。
そうすれば高嶺の花だと諦められる。
それなのに彼女ときたら『みんなが結婚出来たら、私の番かな』と笑う。
そんな優しい笑顔を見たら、いつまでたっても未練が残る。
お似合いの相手がいるのだから、さっさと結婚すれば良いのに。
俺は溜息をついた。
立冬を過ぎ、朝日が差しこむまでの時間が長くなった。
目覚まし時計を止めて、ベッドから降りる。
床は冷たく、一気に目が覚める。
窓を開けると、冬の風が室内に入りこむ。
風が髪をさらっていく。
漆黒の空は、まだ夜の時間だろうか。
月のない夜空に星が煌めいていた。
体冷えるほど見惚れていた。
背伸びして胸まであくドレスを着た。
少しでもあなたの目に留まるように。
私の挨拶の番になった。
あなたに会釈する。
あなたは私の肩に手を置く。
「意中の殿方でもいるのかな?」と腰を曲げて、私の耳元でささやく。
それはあなたです、と言えたらどんなに良かっただろう。
私は赤面して頷いた。
出会いを求めて、らしくなく合コンに出た。
当然、盛り上がる級友とは別に、ちびちびとジュースを飲んでいた。
そんな中、君と目が合った。
運命の相手だと、直感が告げていた。
「そろそろ帰らなきゃ」と君は席を立った。
僕は無理矢理、君の指先を軽く握る。
「駅まで送っていくよ」と僕は言った。
『毒薬口に甘し』
この恋は、しびれるほど甘い毒薬だった。
惹かれてはいけない人だと知りながら、惹かれていく。
一緒に呷るお酒は甘美な酔いをもたらす毒薬だった。
『愛している』という言葉は虚しく、終わりを見つめながら囁く合言葉。
目を目を合わせて、共に奈落に落ちていきましょう。
『終わりを告げたい』
傷つくばかりの恋だ。
『今度こそ大丈夫』と思っても空振りを起こす。
この恋も私の心を切り裂くような恋だった。
どうして私が好きになる人は、私以外の好きな人がいるのだろうか。
それでいて愛をささやくのだろう。
そして、それに騙されるのだろう。
終わりを告げたい。
『ベッドの余白に残る温度』
あなたほど、朝に強くないから、起きるのは私が後。
無防備な寝顔を見られているかと思うと恥ずかしい。
うつらうつら眠りの海に揺蕩いながら、探る。
ベッドの余白に残るあなたの温度を。
まだあたたかい温もりはあなたがいた証拠。
それを体全体で受け止める。
『うまく言えなかった言葉のしまい方』
あなたにうまく伝えることができなかった。
大好きも、愛しているも。
うまく言えなかった言葉のしまい方ばかりが上手になっていく。
遠く離れていくあなたに笑顔で「さようなら」と手を振る。
あなたも笑顔で手を振ってくれた。
胸の引き出しにしまう。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」
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声が震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
君の幸福のためだった。
「まだ一人で生きていける」と作り笑顔を浮かべて言った。
どうか君よ。いっそ笑い飛ばしておくれよ。
そんなことはできないと見抜いてほしい。
そんなことを思いながら最後の嘘をつく。
いつもいじわるをしてくるクラスメイトが声をかけてきた。
またいじわるをされるのだろうか。
怖くなって硬直をしてしまった。
「もう夜も遅いだろう。送っていく」とクラスメイトは言った。
親切心からだろう言葉は普段と違って気持ち悪かった。
帰り道に新しいいじわるをされるのだろうか。
君は泣きそうになりながら、僕の両手のひらを折れんばかりに握る。
痛かったよ。
手のひらも、僕の心も。
君が泣くのを我慢している様子を見て、僕は非力さを覚えた。
勇気を出して、自分の気持ちを伝えることすらできなかった。
そんな僕は弱虫だった。
ただ君を慰める言葉を吐くしかできなかった。
『ごめん。なんでもないや。』
君を引きとめたかった。
これで最後の別れだと思うと、胸にこみあげてくるものがあった。
それでも、私は物わかりのいい笑顔を浮かべる。
「ごめん。なんでもないや。気にしないで」と微笑みながら君に告げる。
本当はここから助けて欲しかったのに言えなかった。
『君の嫌いな人になったよ』
あれから時間は駆けるように過ぎ去った。
君との想い出を胸に、毎日を過ごしている。
君はどうしているだろうか。
たぶん、二度と君と出会うことはないだろうけれども。
だって僕は、君の嫌いな人になったよ。
君はそんな僕を見て嫌悪感を覚えるだろう。
だから、さ。
『私が泣いて君が笑った日』
唯一の理解者だった君が受験を合格した。
第一希望の大学だったから君は笑った。
私は心の中で泣いた。
上京させてくれるほど私に理解のない両親のもとで、身を粉にして働かなければならない。
全ての運命を決めた日だった。
君と別れ、もう私には味方がいないのだ。