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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『風が君の髪にあまえて』

ふいに吹いた風は、僕と君の隙間を駆け抜ける。
「冷たいね」と君は苦笑する。
風が君にあまえて、君の長い髪を乱すさまは美しかった。
君には悪いけれども、もう一度、吹いてほしいと思ってしまった。
君の長い髪は洗髪材のCMよりも輝いていた。
「そうだね」と笑う。
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ドジで、間抜けで、おっちょこちょいの幼馴染。
親同士が仲が良いから、幼馴染のことは『任せた』と言われた。
人当たりが良い振りをしている少年は『もちろんです』と答えた。
そんな幼馴染が『好きな人ができたの』と言ってきた。
今さら嘘だろう。
恋の告白をするにはプライドが許してくれない。
狂気に落ちた同胞との戦いはひと段落した。
結界の外で待っていた少女が青年を抱きしめる。
「おかえりなさい」と少女は涙をこらえて言う。
それに気がつき青年は少女の頭を撫でた。
「今日は湯船に入りましょうね」と少女は視線を合わせる。
血と汗でまみれた体には、ちょうど良いのかもしれない。
「あのね」と彼女が切り出した。
いつもしている手袋がない。
探すのを手伝った欲しい、といった用件だろうか。
そんなことを思っていると「手を繋いで歩きたい」と言われた。
僕は寒いのに、胸まで熱くなった。
遠慮がちに、彼女の指先に指を絡める。
それで精いっぱいだった。
バカップルなのかも。
『言葉の丘にすわって』

借りた詩集だったけれども、読みごたえがあった。
情景を綴る詩集は、一篇一篇、趣が違った。
言葉の丘にすわって、詩人の世界を覗きこんでいるようだった。
少年はパタンと詩集を閉じた。
そして、まだ熱がある瞳で空を見上げた。
まだ言葉の丘にすわっているように。
『今日は思い出にしよう』

今日はついていない。
寝坊するし、寝ぐせで跳ねた髪を治すことができなかったし、電車を一本乗り送れるし。
そのせいで、あなたと一緒にいる時間が少なくなってしまった。
それなのに、あなたはにっこりと笑顔。
「今日は思い出にしよう」と優しく言ってくれる。
『星の電球をかえて』

ある日、お姫さまが使用人を呼びつけました。
「星の電球をかえて。最近、輝きがぼんやりとしているから」と無邪気に言いました。
使用人は困りました。
輝く星が電球ではないことを教えるのは、ひどく残酷なような気がしたのです。
天の神様にお願いの手紙を書きました。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

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僕は声が震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
「君にもらったものは全部返す」と。
勇気も、微笑みも、温もりも、全部返す。
これから先の未来は、暗いから。
ここで別れてしまえば傷は浅いだろう。
・・・うまく笑えたかな?
薄情のように見せられたかな。
公園のベンチでソフトクリームを食べていた。
今年最後のソフトクリームになりそうだ。
思ったよりも寒かった。
するとお隣さんの幼馴染がやってきた。
まだまだランドセルが似合う年頃だ。
「僕にも一口、ちょうだい」と言う。
「どうぞ」と差し出すと頬をなめられた。
「子供をなめちゃいけないよ」
私はちょっぴり背伸びをして、バーに入った。
成人はしているし、生年月日の入った顔写真付きの身分証明書も持っている。
それでも一人でバーに行くのは勇気がいった。
愛想の欠片のないバーテンダーがメニュー表を差し出した。
私はメニュー表を睨む。
さっぱり分からないカクテルが並んでいた。
俺はソファの上でうつらうつらと微睡んでいた。
そこへ泣き顔で、妹が飛びこんできた。
俺は一瞬で目が覚めた。
「どうしたんだ?」幼子をあやすように妹の頭を一撫でする。
妹は俺の両手にしがみつく。
「どうすれば大人になれる?」涙を流しながら妹は尋ねる。
「お子様ランチには興味がないって」
『二人でしたのに
 恋ではなかったみたいね。』

通い慣れたバーで揃いのリングが光る。
飲み慣れているはずのカクテルが喉にしみる。
「二人でしたのに恋ではなかったみたいね。偽物だったんだ」
とファジーネーブルを飲む彼女はかすれたように笑った。
「このカクテルみたい」と小さく零す。
『ほら、頑張ってウソをついておいでよ。』

後輩が『相談したいことがある』と暗い顔で言った。
用件は何となく分かってしまった。
そんな後輩の背を叩いて言う。
『ほら、頑張ってウソをついておいでよ。泣き言はそれからだよ』と笑顔を浮かべる。
後輩はハッとした顔をした。
その背を見送る。
『空っぽの封筒に名前だけ』

いまどきなのだが、遠距離恋愛の彼とは文通をしている。
メールやLINEと便利なものがあるのに、文通は続いている。
ある日、空っぽの封筒に名前だけ書かれたものが届いた。
私はすぐに返事を書いた。
返信は早かった。
『君にもあの星空の空気を届けたかったんだ』
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
・・・どうしようもないな。」

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僕は愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
「今とても幸せだよ」と。
悲しくて胸が破裂しそうなほどなのに。
君につく最後の嘘だからと笑顔で告げる。
・・・どうしようもないな。
これからも付き合っていく現実の前で、嘘で逃げ出そうとするなんて。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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