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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『副業サンタ』

今年はクリスマスが平日で良かった。
恋人に『仕事があるから会えない。ごめんね』と言い訳ができる。
素直で可愛い恋人も、それを信じてくれるだろう。
実際、仕事は仕事なので嘘ではないのだけれど。
ただ世界中の子供たちの夢を壊せない。
サンタクロースの本業が会社員だと。
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『脚本通りの失恋』

雨の中、傘もなくとぼとぼと歩いている。
コンビニに立ち寄ればビニール傘を買えることは知っている。
濡れて歩きたい気持ちだったのだ。
道行く人に涙を気づかれないように。
今日、脚本通りの失恋をした。
出会いさえ作り物のような恋だったから、終わりもそうだっただけ。
「iotuは、ひどくためらいながら最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕はひどくためらいながら最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
「こんな敵、僕ひとりで充分だよ」と笑顔を作る。
頼みよ、ごまかされてください。
君には、こんなところで立ち止まってほしくない。
ダンジョンの最奥まで辿りついてほしい。
僕と君は最悪な形で出会った。
だからこんがらがったあやとりのように、もつれた関係になってしまった。
今さら素直にはなれない。
それはそっちでもそうだろう。
最初からやり直したい関係だった。
そんなことはできるはずはないと分かっているけれども。
出会いが違えば恋人らしくなれるだろうか。
子供の頃はこの時期に灯る電飾が星が落ちてきたのだと思っていた。
クリスマスまで街を華やかにするイルミネーションや大きなクリスマスツリーは心が躍る。
たとえ、クリスマス当日が仕事だとしても、嬉しいものは嬉しいものだ。
今年のクリスマスプレゼントは何にしようか。
そっと考える。
目に見える形で寒い日々がやってきた。
のんびり構えていたから、冷たい風に震えてしまう。
苦笑が落ちてきた。
「店内は暖かいから」と青年は言った。
そして目をそらしつつ、少女の指を軽く握る。
少女は寒さに反して、耳まで赤くする。
こんなスキンシップは反則だと抗議したかったが恥ずかしい。
『お母さんがしてくれた魔法』

「今日はうんと可愛くしましょうね」歌うようにお母さんが言う。
普段、お母さんがお化粧に使っているドレッサーに腰かける。
今日は特別なのだと思う。
優しく髪を梳いてもらうのがくすぐったくて笑ってしまう。
髪に赤いリボンを結んでもらった。
まるで魔法だ。
『午前9時、朝は来ず夜のまま』

悪夢に追いかけられて目を覚ました。
コンセントから外れたスマホを見ると午前9時だという。
それにしては薄暗い。
まるで日が落ちたようだと思ったら、カーテンがぴったりと閉まったきりだった。
通りで暗いはずだ。
このまま夜の時間を微睡んでもいいと思った。
『思い出進化をとげた残影』

何年ぶりの帰郷だっただろうか。
二度と帰るつもりがなく、逃げるように上京したのに。
町の景色は変わっていて、故郷の面影はなかった。
紹介されたその子は驚くほど君に似ていた。
思い出の中から出てきて、君がいるようだった。
あの頃の幼い君がそこにはいた。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

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ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは自分の幸せのための嘘だった。
これ以上、君と関わりあってはだめだ。
どちらも不幸になる結末しか待っていない。
「世界で一番、大嫌い」とハッキリと言った。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。
嘘だとバレてしまう。
これは自分のためなのだから。
「君に送る言葉なんてないよ」僕は言った。
別れ話を切り出されたのだ当然だ。
君は俯いて「ごめんなさい」と謝る。
人の心は絶えず、移ろい、ひとところに落ち着くことはない。
「幸せになって、なんて嘘だよ。僕以外の男を選らんだことを後悔すればいいと思ってる」
僕は正直な気持ちを吐き出す。
参考書の読みすぎだろうか。
目が霞む。
少女は目をこすりながら、テスト結果を張り出されている廊下に向かう。
途中で白金色の頭髪の少年とすれ違う。
「眠れる時は寝た方がいいよ。クマができている」と少年は言った。
少女の腹の底から怒りが湧いてくる。
唇を強く噛みしめて、順位表を見上げる。
魔法使いのランクは短杖の素材の枝で決まる。
少女は森に入ってふさわしい枝を探す。
星々の祝福を得て輝く杖を見つけた時は、歓喜が湧きあがった。
ライバルたちを追い抜くことができるだろう。
卒業試験で当たったのは貧相な短杖を持った少年だった。
勝てると思った。
それなのに打ちのめされる。
『夜とサヨナラに涙をひとつぶ』

あの夜に帰れたら、私は帰るでしょうか。
答えは『いいえ』です。
あの夜を何度やり直しても結果は変わらない、と分かっているので。
だから心配は無用です。
でも今だけはサヨナラをしたあの恋に涙をひとつぶ流させてください。
夜が明けるまで抱きしめていて。
『それでも僕は君を切ってみたかった』

傷つくことは分かっていた。
痛みを伴うだけだと知っていた。
お互いがお互いを信用していないとできないことだと思っていた。
君が嫌がることは想像についた。
それでも僕は君を切ってみたかった。
柔らかな心の奥を覗いてみたかったんだ。
僕がいるかを。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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