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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「危ない!」大きな声と共に、手を引かれた。
その一瞬後、本棚が傾ぐ。
少女がいた場所に重たい本たちが滑り落ちてきた。
危機一髪だった。
少女は顔を上げて礼を言おうとしたが、気が変わった。
目を逸らしつつ、救世主の両手に爪を立てる。
「怪我はない?」
「大きなお世話よ」と少女は言った。
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『私を守ったくだらない者達』

私が花だというのなら、それは悪の華でしょう。
鮮血よりも鮮やかに咲いてみせましょう。
処刑台で誰よりも艶やかに笑って見せましょう。
それが私の最期だと思っていた。
私を守ったくだらない者達がいなければ、達成できたでしょう。
私は生を繋いで現実を見る。
『なりたかったのになれなかった』

僕は君を守る勇者になりたかった。
どんな悲しいことからも、どんな辛いことからも、守りたかった。
君が流す涙を拭う立場になりたかった。
けれども、なりたかったのになれなかった。
君の勇者は他にいて、僕は村人Aだった。
物語の主人公にもなれなかった。
『ふたりでコトコトよりそって』

子どもの頃、寒い日に食べるシチューは幸せな味がした。
どうしたらこんな味になるのか、母に尋ねた。
けれども母は意味深な微笑みを浮かべて答えてくれなかった。
今はふたりでコトコトよりそって、幸せを感じる。
他ならないあなたとだから、幸せを感じた。
デートの終わりは、いつでも寂しい。
『次に会える日は?』と質問しても『仕事が一段落したら』という曖昧な答えが返ってくる。
『最後のキスをして』と私はねだる。
あなたは困ったような顔をして、私の額にキスをする。
いつか唇にキスをしてくれるだろうか。
今日観た映画の主人公たちのように。
クラシカルだと思う。
けれども、これが自分に一番似合う。
万年筆が原稿用紙を進む。
書くという作業は、すべてここから生まれる。
雷鳴が轟くシーンがやってきた。
今まで滑らかに動いていた万年筆が止まる。
登場人物を怯えさせようか、果敢に進ませようか。
プロット通りにはいかない作業だった。
たまの休日。
ソファの上でくつろいでいた。
どこかに出かけることもなく、夕飯はどこかですませばいいかと思っていた。
すると満面の笑みを浮かべながら、君は指先に爪を立てる。
のんびりさせてはくれないようだ。
エサ入れを見ると空っぽ。
お腹が空いたらしい。
エサ入れを満たすとニャーと鳴く。
『見逃した流れ星の行方』

「ほら、星が流れたよ」と君が指をさし言った。
残念ながら、私は見ることができなかった。
一瞬の煌めきの流星を見つけられないほど、私は器用じゃなかった。
君は得意だったけれど。
見逃した流れ星の行方はどうなるのだろう。
流れ星は燃え尽きた星の破片だと聞く。
『君の朝に私はいない』

私は夜そのもの。
月のように夜ごと形を変え、星のようにささやかに輝く。
君の朝に私はいない。
太陽の光を浴びたら灰になる吸血鬼のように。
私は私の姿を保てなくなる。
陽光の中で素顔をさらしたくない。
だから、君が目覚める前にキスをして私はベッドを滑り降りる。
『どうせいつかさようなら』

どんな大切にしていても失われる。
最初とは違う歪な形で。
だから最初から約束をしないで欲しいの。
私は永遠を信じていないから。
あなたにも信じて欲しくないの。
どうせいつかさようならなら、あなたの恋人にはなりたくない。
別れる時、胸が裂けるほど痛むから。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
・・・うまく笑えたかな?」

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僕は愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
「世界は希望で溢れている」と。
絶望という暗闇の中だから希望が輝くことは知っている。
それでも、希望を信じたい。
君の前で・・・うまく笑えたかな?
僕はいくら傷ついてもいいから、君には笑っていてほしい。
都合の良すぎることだと分かっている。
別れの言葉を言ったのは私の方。
嫌いになったわけじゃない。
何となく違うな、と感じたから、距離を開けた方がいいと思っただけ。
君は「そっかぁ」と笑ってくれた。
二人はただの知人に戻った。
それなのに今さらになって『もう一度好きになって』と思う。
殺すのも、殺すことも、惰性になってきた。
人と同じ白い肌を斬るのも、人と同じ赤い血を浴びるのも、慣れてきてしまった。
神剣・神楽を初めて握った時の勇気はどこに行ってしまったのだろう。
自分の生命さえ、どうでもよくなってしまった。
それでも少女が涙だけは変わらない。
だから、戦える。
受験前の楽しみは修学旅行だった。
好きな人と同じ班になれたのは、飛び切りの幸運だった。
お姉ちゃんが言うところの徳を積んだおかげだろう。
彼にとって幼い頃に住んでいた街ということで「新鮮味がない」と零していた。
「ここの道、危ないから」彼は言う。
ぎこちなく、手のひらにしがみつく。
『幸運調整申請書』

最近、ついていないことばかり。
お気に入りの靴はヒールが取れるし、買った鞄の持ち手は外れるし、まだ残りがあるルージュがぽっきりと折れるし、仕事が立てこんで残業続きでクマができるし。
ある日、枕元に一枚の紙があった。
「幸運調整申請書」声に出してしまった。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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