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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『笑う影』

ずっと僕は君の影だった。
光に当たることはなかった。
夜の世界の中で消えていく運命だった。
君はそんな僕のことを見返りもしなかった。
誰もが、僕の存在を忘れている。
だから僕は復讐をした。
光そのものの君を抹殺してやった。
笑う影は忘れていた。
光があるから影が生まれると。
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『一生魔法をかけていて』

静かな声で君が言った。
『一生魔法をかけていて』と内緒話をするかのようにささやいた。
『僕はどんな魔法を君にかけたんだい?』と聞き返す。
君の大きな瞳がさらに大きく開かれて、それからゆっくりと瞬きをした。
『あなたに夢中になっちゃう魔法』と君は微笑んだ。
君が好きで、嘘をついた。
それだけ僕にとって、君は大切な存在だった。
涙は見たくなかったから、作り笑いを浮かべた。
「今度も、大丈夫だよ」と僕は手を差し出した。
「本当に?」君の声が震えていた。
小指同士を絡めあう。
無事に戻ってくるという約束。
そんな保証はどこにもないと知っていた。
いつもいじわるをしてくる少年が小袋を持ってやって来た。
小袋の色はピンク。
少年らしくないチョイスだ。
無言で押しつけてきた。
少女は恐る恐る小袋を開ける。
カエルが出てくるのか、それとも虫の死骸が出てくるのか。
少女を驚かせるような物が入っているのに違いない。
小袋の中身は飴だった。
新聞受けから新聞を取りに行った少女が戻ってきた。
大きな瞳をキラキラと輝かせて青年の手を引く。
「虹が出ていましたよ!」と明るく笑う。
それが年頃の少女らしくて、青年は面倒だったが腰を上げた。
青空に大きなアーチが架かっていた。
「もっと、はっきりしていたんですが」少女は脱力する。
眠り姫のように健やかな眠りについている君。
僕はぎこちなく、その両手をぎゅっと握る。
あたたかな温もりが伝わってくる。
永遠の眠りについているわけではない。
そう分かっていても、怖くなる。
二度と君のまぶたが開かれないかもしれない、と。
だから、君の上下する胸を見て僕は安堵する。
『君のせなか』

君のせなかを見るのが好きだった。
大きくて広い君のせなかに寄りかかるのも好きだった。
君のせなかは私に休みを与えてくれる。
寄りかかると、ホッと安堵した。
君のせなかを独り占めできるのが、とても幸福だった。
お喋りしたことはないけれど、もたれかかった夜は数度ある。
『相変わらずあなたが好きです』

遠く離れた恋人に手紙を出す。
空色の便せんはお気に入りのものだ。
『遠く離れても、空は繋がっている』と言ったあなたの言葉が守りです。
ボールペンで書き始める。
前略、相変わらずあなたが好きです。
どこにいてもあなたとの想い出を想い出してしまいます。
『ちゃんとした理由でふられた』

「ふられたのに元気そうね」親友は不思議なものを見るように、私を見た。
「ちゃんとした理由でふられたの」と私はグラスを空ける。
「好きな人がいるんだって。思わずくっつくことを祈っちゃったよ」と私は微笑んだ。
「本当にいい子ね」と親友は苦笑する。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
・・・まだ、泣いちゃだめだ。」

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僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
それは現状打破のための嘘だった。
このままではだめなのは分かっている。
「もう、迷わないよ」と、君に嘘をついた。
・・・まだ泣いちゃだめだ。
君に心配をかけてはいけない。
作り笑顔を浮かべて、君が立ち去るまで待て。
泣くのはそれからだ。
寄せては返す波打ち際を少女は楽し気に歩く。
寒くはないのだろうか、と青年は見守る。
一通り歩いていたのか、少女は青年の元に帰ってきた。
「海が好きなんだな」と青年は言った。
「原始の母ですから。全ての生命は海から生まれてきたんですよ」と少女は微笑んだ。
そんなものかと青年は思った。
家のカレンダーに赤いマジックペンで花丸をつけた記念日。
いつもよりも手のこんだ料理を作って、帰りを待っていた。
いつ帰ってくるだろうか、ドキドキしながら待っていた。
けれども日付が変わっても帰ってこなかった。
気持ちを無視されて目を潤ませる。
こんな関係になっちゃったのだろうか。
「あ、久しぶり」まるで昨日も出会っていたような気軽な挨拶だった。
君が故郷を離れてから、両手の指では足りないほど時間が過ぎたようなのに。
君は全然、変わっていない。
だから私は怒り顔で、両手に爪を立てる。
「変わっていないようだな」と君は苦笑する。
しばらく言葉を交わしてあげない。
僕は立ちあがれないと思った。
もうこれ以上、歩き続けるなんてできないと思った。
座りこんだ地面は冷たかった。
ここで諦めてしまおうか。
そんなことを考えながら、首を横に振った。
君に会うための道だ。
こんなところでへこたれることはできない。
足に力をこめて、僕は再出発をした。
『最後に傷がほしい』

何も欲しがらない君が『最後に傷がほしい』と言った。
あっけにとられていると『女に傷をつけるのは嫌?』と真剣な目でこちらを見つめる。
『これが最後なら、飛び切りの痕をつけて。忘れられないぐらい』と君はねだった。
俺はすべらかな白い肌に最後の赤い傷をつけた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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