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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『行き先は風の強いところ。』

「お姉ちゃん、どこへ行くの?」まだ幼い妹が尋ねた。
こっそり一人で旅立つつもりだったのに、見つかってしまった。
「お姉ちゃん」と妹は服の裾をつかむ。
しゃがんで目線を合わせる。
「行き先は風の強いところ。風に乗って見知らぬ街へ」と声を潜めて言った。
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『庭に思い出を一粒、植えてみて。』

祖母は時折、不思議なことを言う人だった。
『おばあちゃんは魔女だから、魔法が使えるのよ』と微笑んで言う人だった。
大人になり、家を持つようになった私に、いつもの笑顔。
『庭に思い出を一粒、植えてみて。とても素敵な庭になるでしょう』と言った。
『未来に死ねよ。』

ここから飛び降りたら、死ねるかな。
今、道路に飛び出したら、死ねるかな。
いっそのこと絶対に引きちぎれない縄で首を吊ったら、死ねるかな。
遺書ってどう書けばいいんだろう。
そんなことを毎日、考えていた。
そんな私に「未来に死ねよ。俺よりずっと先の」と言われた。
肉親を唐突に失った君が悲しくないはずがなかった。
親族の方が親切で、お葬式は任せっきりにできたのが救いだった。
何度か遊びに来た家だったのでお葬式に出ることにした。
「ありがとう」少し寂し気な笑顔を君は浮かべた。
「君の代わりに、泣かせてください」僕は用意してきた言葉を言った。
少女にとって外の世界は初めてのことばかりで楽しかった。
家でこもっているばかりではつまらないだろうと、青年は休みの度に提案する。
「どこか行きたいことはあるか?」青年は尋ねた。
「なら、海に行きたいです。波を見ていたんです」少女は目を輝かせて言った。
「分かった」と青年は頷く。
あなたが私の髪を撫でる。
心の中に嵐が起きたようにドキドキする。
そんな私の感情を無視して、あなたは私の髪にふれ続ける。
「綺麗な髪だね」あなたは満足気味に笑った。
「普通だよ」思わず私はつっけんどんな言い方になってしまった。
赤面したのがばれないかな。
あなたの優しさにくるまれて。
ふれそうでふれない手。
二人並んで歩くのは、いつまで続くのだろう。
君の手を握りたくてぎこちなく、自分の両手のひらを握る。
一度さわってしまえば二度と離したくなる。
だから、僕は我慢していたのに、君が片手にふれる。
僕は指を解き、君の手を繋ぐ。
「記念日だね」と満面な笑みで言った。
『心が君を想っていた』

気がつかなければ幸せだったのだろうか。
でも、気がついてしまったからには止めることなんてできなかった。
心が君を想っていた。
『愛している』って告げることもできない君に、恋をしていた。
きっと、ずっと前から。
そんな不毛な恋だというのに幸せを感じていた。
『別れの詩』

君はいつでも詩集を持ち歩いていた。
暇さえあれば頁をめくっていた。
気になって「どんな内容なの?」と尋ねたことがあった。
君は「ナイショ」と微笑んで、詩集を鞄にしまった。
見せてもらえないと余計に見てみたくなる。
君が席を外した隙に詩集を開く。
別れの詩ばかりだった。
『あの頃、私達は最強だった。』

もう過去のことだ。
あの頃、私達は最強だった。
怖いものは何一つなかった。
どんな壁だって乗り越えていけた。
それが今や、独りぼっちだ。
最強だった私達はいない。
そんなものは幻想だったようで、独りの脆さを痛感している。
もう戻れない過去の栄光に縋る。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

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僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは本音とは真逆の嘘だった。
「すべて夢でも構わない」と。
届きそうで手が届かない君への想いだったのかもしれな。
ほんのひとときでいいから、君と現実で恋人同士になれたら良かったのに。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに、と思った。
この度、告白が成功して、お付き合いすることになりました。
今まで異性にからかわれることが多く、恐怖症になりかかっていました。
それなのにあなたは違いました。
けれども近すぎるとまだ怖い、恋人同士になったのだから離れても嫌。
我ながら複雑怪奇な想いをあなたに抱くようになりました。
君は全天の中できらりと輝く一等星。
誰よりも苛烈に、誰よりも煌めく存在だった。
その点、僕は肉眼でギリギリ見える六等星だろう。
街に出たら見えることもないささやかな光を地上に届けるだけだ。
僕も君みたいに注目を浴びる存在になりたい。
誰もが知っている名前になりたい。と思ってしまう。
またどこかで邂逅するさ、と楽観視していた。
黒いフレームの中に納まった顔写真を見つめる。
黒と白の弾幕がピアノ鍵盤のようで、流れている曲も相まって、彼が弾いているような気がした。
もう道で交わることはないのだと思ったら、涙が溢れそうになった。
拳をぎゅっと握りしめる。
永訣の刻だ。
『神の花嫁』

里一番醜い私を恋してくれる人などいなかった。
年頃になっても嫁に行かない私に両親は困っていた。
そんな時、収穫前の稲が野分によって倒された。
備蓄している米は種もみを覗けば僅かだ。
今年一年が勝負時、という雰囲気だった。
来年の豊作を祈って、私が神の花嫁に選ばれた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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