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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「あなたの腕時計になりたい」と女が言った。
そして、俺がしている腕時計の文字盤をなぞる。
「どこにでもついていけるでしょ?」と女は微笑む。
「風呂と寝る時は外すけど」と俺が言うと「それは残念ね」と女は欲望をあらわにする。
「私が見ていない間は託すわね」と女は腕時計にキスをした。
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「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「君が幸せなら、幸せだよ」、と。
・・・うまく笑えたかな? 」

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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
「君が幸せなら、幸せだよ」と。
・・・うまく笑えたかな?
本当は君と一緒に幸せになりたい。
君だけが幸せじゃ意味がない。
君と他の誰かが幸せになるのは論外だ。
けれどもそれを口にする資格は僕にはない。
だから笑む。
ジュエリーショップで、ペアリングを見る。
ショーケースの中の指輪はどれも自信をもって輝いていた。
今日は付き合って一年目の記念日。
恋人の証が欲しいと言われて店に入った。
けれども、君は店員が進める指輪に首を横に振るばかりだ。
結局、何も買わずに店を後にした。
「指輪よりも愛がいい」
霜柱を踏んだ。
本格的な冬の訪れだった。
長すぎた夏の反動だろうか。
冬らしい冬にためいきをついた。
暗い朝に白く濁って溶けた。
こんな寒いのなら、夏をもっと堪能すればよかった。
朝日が昇る前に、夜のような空を見上げて、電車に滑り乗る。
街はまだ静かで、揺れる電車の座席であくびをする。
何となく眠れなくて青年は階段を下りた。
台所の電気がついていることに不審に思った。
少女は目覚めるには早すぎる時間だ。
足音を忍ばせて台所に行くと髪を下したパジャマ姿の少女がいた。
「ちょうど良かったです」と少女はマグカップを差し出す。
青年はそれを見つめる。
湯気の立ったココアだ。
この夏はどこにいても暑い。
蝉時雨が暑さを増していくような気がした。
木陰を探して歩いているけれども、無駄なような気がする。
エアコンのある部屋は姉に占拠された。
だらだらと汗をかいて図書館に向かう。
図書館の広い机の上に課題を広げる。
隣に座った君が優しく、手のひらを指先でなぞる。
『昨日に薄汚れた明日で』

昨日に薄汚れた明日で、君に会おう。
過去に引きずられた未来は、ぼた雪のように視界を奪うだろう。
それでも、君が『いいよ』と言ってくれるなら、会いに行こう。
そして、互いの手を繋いで『寒いね』と笑い合おう。
今日を通り越して、薄汚れた明日の約束をしよう。
『恋の収束はあと何年』

君に出会って、君に恋をした。
見つめるだけの恋だった。
追いかけるだけの恋だった。
それでも、忘れられない恋だった。
胸に灼きつくような恋だった。
恋の収束はあと何年が必要だろうか。
君がいなくなっても、僕は君に恋をしたままだ。
今でも君の影を追いかけている。
『結局、君のうそに』

僕は結局、君のうそにまんまと騙された。
君は僕にこう言ったじゃないか。
『大丈夫』と。
君は約束してくれたじゃないか。
『退院したら結婚式だね』と。
それなのに、どうして君は桐の箱で白無垢のような衣を着て眠っているんだい?
僕は用意していた指輪を薬指にはめる。
上手くいかないんじゃないか、と薄々と感じていた。
君は僕に依存しているくせに甘えることはなかった。
二人の未来は見えていた。
「君とは、幸せになれないから」と僕が言った。
君は大粒の涙を零した。
「だから、僕が幸せにしてあげるよ」と僕は続ける。
君はゆっくりと目を瞬かせた。
君の為だ。
奴隷の少女はがりがりに痩せていた。
顔色も悪い。
長袖のワンピースは汚れていた。
「脱げ」と青年は命令した。
少女の瞳は不安げに揺れていた。
「誰がご主人様だと分からせられたいのか?」青年は言った。
少女はビクビクしながらワンピースを脱いだ。
白すぎる肌に打撲と切り傷の痕があった。
君と別れてから、こんな寒い日は心の傷が疼く。
早くあたたかな季節になるように祈る。
赤い糸が結んだ『運命』なのだろうか。
君と邂逅した。
偶然でもいい。
僕は『運命』だと名づけて、歓喜した。
もう二度と君から離れないと誓う。
こんな痛みを抱えるのはごめんだった。
今度こそ君を大切にする。
失くしてしまった恋にベッドの上で泣いていた。
何もかもを失った気分だった。
そこへ、幼なじみがやって来た。
一部始終を知っている唯一の相手だった。
「運命の相手じゃなかったんだよ」と穏やかに言う。
私は泣き顔で、幼なじみの両手を指先でなぞる。
小指のところで止める。
「僕でいいの?」
『泣いたんだから。
 キラキラと、
 綺麗な思い出にしてよ。』

あなたを想って泣いたんだから。
キラキラと、綺麗な思い出にしてよ。
あなたの胸の中で輝く一等星にしてよ。
悲しくて、苦しくて、辛くて泣いたんだから。
せめてあなたの心の奥底でキラキラと煌めかせて。
最後のお願いだから。
『あなたになりそこねたわたし。』

あなたは純粋だった。
あなたは無垢だった。
あなたは驚くほど優しかった。
あなたは他人を労わる心をもっていた。
そんなあなたにわたしは憧れた。
あなたのような大人になりたいと思った。
しかし、現実はどうだろうか。
あなたになりそこねたわたし。
滑稽だ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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