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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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映像には幼い自分が映っていた。
七五三か正月だろう。
着物を羽織る姿が映っていた。
兄からのお下がりだろう。
どこか悔しさを滲ませていた。
袖が余っている姿がいじらしい。
記憶にはない姿を見れて良かったと思う。
これで疎遠な兄との会話には困らないだろう。
DVDに焼いて持っていこうと思う。
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先ほどから少女は手をこすり合わせている。
寒いのだろうか。
「手を繋ごうよ」と少年は遠回しに言った。
「誰があなたなんて」と少女は意地を張る。
少年は無理矢理、少女の指先を握る。
氷のように冷たかった。
「離してよ」と少女は言った。
その意地っ張りさが可愛くて、少年はぎゅっと握った。
『朝が怖かった話』

昔は朝がくることが怖かった。
いつまでも夜の世界にいたかった。
晧い月と銀の星々が煌めく世界で、揺蕩っていたかった。
朝がくれば世界は太陽に支配される。
楽しくもない日常が待っていた。
だから朝が怖かった。
けれども、それも過去の話。
今はあなたが傍にいてくれる。
『もったいない女』

「君はもったいない女だね」と、今日何度目かの言葉をかけられた。
「そうですね」と僕は曖昧な言葉を紡ぐ。
「俺に譲ってくれるかな?」と冗談にならない冗談を言われた。
彼女は「選んだのはオレだ」と男の首を掴む。
幼馴染の彼女の性認識は男だ。
それを見誤る人が多い。
『言葉だけせめて』

言葉だけせめて、着飾らせてよ。
華やかな振り袖姿の女の子たちの中で、思う。
擦り切れたジーパンと毛玉のついたセーター姿の私。
みんなと同じ年を迎えたかったのだから。
こんなみじめな姿の私は成人にはふさわしくないですか?
未来を見る資格はあると思いたいのです。
「iotuは、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。 」

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僕は、愚かだなと自分を笑いながら最後の嘘をついた。
それは最初で最後の嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
小さな幸せ探しをする君には残酷な言葉だっただろう。
これ以上、君が傷つくことに耐えられなかった。
これが本音なら、楽だったのに。
「あるよ」目に涙を湛えて君は言う。
「僕は笑顔の君が好きだ」と公衆の面前で言われた。
なんの罰ゲームなのでしょうか。
私は俯いてしまう。
「だから、もっと君の笑顔が見たい。君を泣かせたりはしないから付き合ってほしい」と男らしく言う。
それでも私には罰ゲームにしか思えなかった。
「ごめんなさい」と早口で言って逃げる。
彼に何も期待はしていなかった。
記念日とか、誕生日にはうとそうだったから。
おめでとう、と言ってもらえれば、それだけで満足だった。
そんな気持ちで迎えた誕生日。
やっぱり何もなかったな、と思っているとスマホが鳴った。
外に出ると白金色の指輪を持った彼がいた。
「遅れてごめん」と言う。
あなたが『わがままな女は嫌いだ』と言ってたからわがまま、を言わなかった。
あなたに好かれるために努力した。
それなのに、あなたは『一人でもやっていけるだろう?』というの?
『わがままな女は嫌い』だったんじゃないの?
私の胸が痛む。
泣きそうになりながら、自分の手のひらを握り締める。
『思い出交換』

「思い出交換しませんか?」学生服を着た少年が尋ねてきた。
「僕の嬉しい思い出とお姉さんの嫌な思い出を交換するんです」少年は不思議なことを言った。
そんなものが流行っているのだろうか。
「君に得はなさそうだけど?」と問い返す。
「こう見えても僕は、バクなんです」
『すべての嘘は天国に行く』

空調の効いた白尽くしの部屋で天井を見ていた。
天井もまた無機質に白い。
面会に来た相手は、見知らぬ他人だった。
黒い法衣をまとった若くないけれども、年老いてもいない男がいた。
「ご存知ですか?」と男は話しだした。
「すべての嘘は天国に行くのです」と。
『うしないじょうず』

「あなたは、うしないじょうずですね」突然、背後から声をかけられた。
私はびっくりして振り返る。
声の調子からわかったが、初老の男性がいた。
「うしないじょうず」と私は鸚鵡返しに尋ねる。
「幸せなことですよ」と男性は微笑んだ。
新興宗教だろうか。
私は踵を返す。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
少女の手を離す。
「大丈夫だよ」と今までついてきた嘘のように微笑む。
少女は一度だけ振り返り、走り去った。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
一瞬だけ脳裏を過った。
着物のレンタル会社をはしごする。
あれこれと試着して、ようやく決まった。
正直疲れてしまったが顔には出さなかった。
「なんだ?」と青年は問う。
「祝われる私よりも、祝ってくれる貴方が嬉しそうだから」と少女は誤魔化した。
「一生に一度の成人式だ。当然だろう?」と青年は真面目に答えた。
わずかな間でも離れているのが寂しかった。
恋人同士の時は、もっと離れている時間は長かったのに。
次に会う約束が繋いでいてくれたのだろうか。
それとも歳を重ねたからだろうか。
君に会えない時間が苦しかった。
せっかく家族になったのに不満だった。
君もこの苦しみを耐えているのだろうか?
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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