『間違ってた探し』
一つの恋が終わるたびに立ち止まる。
今回は何が悪かったのだろうか。
何を変えれば上手くいったのだろうか。
次の恋への準備をする。
もう二度と間違わない、と胸に誓う。
間違った探しは、始まったばかりだ。
今度こそは、と期待をしながら、終わった恋の出会いから遡る。
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「iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
君は何も知らないままでいて。」
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僕は、情けなく笑って最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
優しい君に対して言うような嘘ではなかった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
君は何も知らないままでいて。
僕が抱える苦しみも、コーヒーのような苦みも、気がつかないでくれ。
これ以上、優しい君を傷つけたくないんだ。
少女がぐずぐずと泣いていると、少年はぺろりと白い頬を舐めた。
少女は目を大きく見開く。
「塩辛いね」と悪気もなく少年は言った。
「どうして、そんなことをするの?」嗚咽混じりに少女は問う。
「君の涙の味を確かめたかったんだ」と少年はけろりと笑う。
少女には全く理解できない行動だった。
一度でいいからパフェを独り占めしたい、と思っていた。
甘いものは好きだが、大量に食べられる自信がなかったから、避けていた。
でも、今日は誕生日。
どんなことを許されるはずの日。
食べ切れなかったら幼なじみに押しつけよう。
念願が叶う。
大粒の苺が乗ったパフェがテーブルに運ばれてきた。
湯船に浸かっていると、大海を思い起こす。
バスソルトが青いから余計に、そう感じるのだろう。
けれども、あたたかい湯船は、大海の前では霞む。
自由な日々が戻ってきたら、もう一度車を飛ばして大海を見に行きたいと思う。
それまでは湯船という小さい海で我慢だ。
浴槽でためいきが一つ零れた。
ふらりと少女は車道に向かう。
反対側からは自動車が走ってきていた。
それに少女は気がついていない。
少年はそっと、少女の腕を両手で包むように白線の内側に引き寄せる。
危機一髪。
少女も車も気づかないまま、すれ違っていった。
「どうしたの?」少女が問う。
「何でもないよ」と少年は言う。
『見たことのない恋人』
生まれつき視力が弱かった。
歳を重ねる度に視力は衰えていった。
それでも産んでくれたことに感謝している。
とうとう最後の日がやってきた。
ぼんやりとしていた光景は、薄暗がりになった。
それからしばらくして恋人ができた。
残念なのは笑顔が見られないことだった。
『泣いていた二人は』
泣いていた二人は、いつかこの時を笑い話にできるだろうか。
開いていく距離に慣れていくだろうか。
君がこんな傍にいるのに、涙があふれて止まらない。
どうして、この瞬間なんだろう。
堅く繋いでいる手に零れ落ちる涙は冷たくなっていく。
それはまるで心のようだった。
『丁寧な失恋』
いつの間にか解けていた蝶々結びのように。
いつの間にか歪な片結びになっていたように。
それは丁寧な失恋でした。
私だけが気づかなかった。
一方通行な想いを終止符を打つような言葉で言われました。
そんなにはっきりと言わなくても良かったような優しすぎる別れ言葉でした。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
こんなことしか言えないなんて。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
すがりつくような、あきらめきれないような言葉を紡いだ。
「絶対にあきらめたりしないよ」と。
君のことをすでにあきらめはじめているのに。
こんなことしか言えないなんて。
君への最後の嘘にしては往生際が悪すぎる。
寒さを言い訳にして、手を握り締めた。
実際、手袋をしていない君の手は氷のように冷たかった。
まるで雪女の手を握っているように凍える。
それでも君と手を繋いでいられることは嬉しくて、コートのポケットに誘った。
君も同じ気持ちだったのだろうか。
君の白い陶器のような肌が朱色に染まった。
『嘘をついてはいけない』それが父の教えだった。
『どんなことにも真面目に頑張りなさい』それが母の教えだった。
僕は両親の教えを守った。
初めて恋に落ちた時も、それを守った。
左手の薬指が輝く君でも。
結果は惨憺としたものだった。
恋に破れた僕は慰めてくれる人間もなく、涙を飲みこんだ。
君は日差しの中にいる。
僕は暗闇の中にいる。
君がいる世界が恋しくて、僕は暗闇から抜け出そうとする。
どんなにあがいても暗闇から抜け出すことができなかった。
いつの頃から、その行為に没頭するようになった。
暗闇の中で光る星々を無視して。
太陽が照らす日差しを恋しく思う。
君がいるから。
『あの日、ここに、いたのに』
あなたは確かに、あの日、ここに、いたのに、今はいない。
あの日だけだったのだろうか。
偶然という神様が用意してくれたのだろうか。
あの日、あなたに告げることがなかった言葉を反芻する。
もう、ここに、いない、あなたに言えば良かったと後悔しながら。
『あんまり気張らずに』
緊張でずっと震えている。
これからの人生を決める大学受験だ。
浪人生を抱えるほど裕福な家庭ではなかったから、受験を失敗したら就職することになっている。
「あんまり気張らずに行こうよ」と同じクラスの君は言う。
余裕がある奴はいいよな、と僕は思ってしまった。