星のように輝く少女が妬ましかった。
どうして自分じゃないのだろうか。
悔しくて眠れる夜を幾度、過ごしただろう。
一番暗いと言われる六等星でいいから星になりたかった。
そうすれば、あなたの瞳に映ることができるだろう。
あの少女ではなく、私を見つけてくれるだろう。
東の空が白々とした。
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与えられた部屋はすすだらけだった。
明かりがあるだけのマシの部屋だった。
あたたかい部屋で寝たいと、涙が自然と零れた。
それを拭うと、手のすすが移る。
きっとそれを義妹は嘲笑するのだろう。
どこにも行く当てのない私だから、すすだらけの部屋で我慢する。
王子様が来ないことは知っている。
僕はぎこちなく、君の両手を両手で包む。
そこに雫が一滴が落ちた。
君の体温と同じように、あたたかな水滴だった。
僕は君を見ると、君はうつむいた。
雨のように滴が落ちる。
これで、君とお別れなのだと、僕の心臓はきゅーっとつかまれたように痛くなった。
それなのに僕の目からは涙は落ちない。
『今夜だけこの恋をぬけだして』
LINEを送っても既読がつかない。
メールをしても返事が来ない。
君とは容易に連絡できたから僕は焦った。
何度も電話をかける。
車で君のアパートの前まで飛ばす。
そこで君を待つ。
君は明け方に帰宅した。
「今夜だけこの恋をぬけだしてみたくて」と君は笑った。
『キスさえもどうか飽きさせるほどに』
何度も唇を重ねていく。
貪欲な君は呼吸すら奪うように口づけを交わす。
それすら物足りないように、お互いの服に手をかける。
「キスさえもどうか飽きさせるほどに」と君はキスの合間に言う。
体中に口づけをしていく。
まるで順番でもあるかのように。
『水溜りに人魚』
僕は用なしになった傘を振りながら道を歩いていた。
そこで目を疑うものと出会った。
水溜りに人魚がいたのだ。
童話から出てきたような姿をした小さな人魚姫。
それに合わせて僕は屈む。
「こんにちは。迷子の人魚姫さん。もしかして王子様は僕かい?」人魚姫の頬が染まる。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
・・・泣いたりしないよ。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは君に対しての最初で最後の嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
初めてなのに、そんな悲しい嘘をついた。
君との幸せ探しも、もうおしまいだ。
君の瞳は動揺するような光を宿していた。
残酷な嘘をついた僕は・・・泣いたりしないよ。
僕よりも君は先に死んではいけない。
君に残された泣き虫の僕は、盛大に泣くのだろう。
君にもその様子が想像できるだろう。
だから、君は僕よりも一秒でも長く生きなければいけない。
だって、子や孫の前で大泣きする僕は、みっともないだろう。
最果ての約束だ。
お願いだよ、笑って頷いてくれ。
期末試験も終わり、やっと自由を手に入れた。
ここでテストの点数を落としたら、お母さんから雷が落とされるのだろうな。
そんなことを思いながら、ゆっくりと帰路につく。
ガーデニングに力を入れている家が多いから、蕾を綻ぼした花を見ながら帰れるのが嬉しい。
春の足音は間近に迫っていた。
意外と虹の中身は知られていない。
世界の秘密の一つだ。
虹の前に必ず雨が降るように。
神様が泣く竜を優しく抱きしめているから、雨が降り止み、光が差す。
竜は誰かが悲しいことがある度に、雨を降らす。
大空に虹をかけるために。
そのことを知っている人は少ない。
今日も誰かのために雨が降る。
普通に歩いているつもりだった。
それは勘違いで、白線からはみ出していた。
向かい側からスピードを上げた乗用車が走ってきていた。
ふいに白線の内側に引き寄せられた。
乗用車はスピードを下げずに走っていった。
危機一髪だった。
命を救ってくれた君は泣きそうになりながら、僕の腕を軽く握る。
『憧れた街で、愛想笑いの私。』
田舎の故郷が嫌で、小さな町を跳び出した。
不夜城のように燦然と輝く街へとたどりついたのは、若さゆえの選択だろう。
あれほど憧れた街で、愛想笑いの私。
下草に転がって笑顔を浮かべていた私は、今日もマネキンのような笑顔を貼りつけて過ごしている。
『人生の主題歌をならせ』
色々あった人生だった。
我ながらよくやったものだと褒めたくなる、そんな人生だった。
決して穏やかではなかった道を歩いてきた。
君と二人だったから、大丈夫だったんだろう。
人生のクライマックスが待っている。
人生の主題歌をならせ。
エンドロールは、まだ早い。
『私でしかいけない道』
真っ直ぐ見据える道は太陽に繋がっている。
全てを焼き尽くす恒星へと繋がっている道だ。
私は唾液を嚥下して覚悟を決めた。
私でしかいけない道だ。
青い故郷星を守るために、私は宇宙船のエンジンをあげる。
間違ってしまった軌道を修正するために、私は突っこんだ。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」
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僕は、冷静であるように心がけつつ最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
「怖いものなんてないよ」と。
君はそんな僕は見透かして「本当に?」と尋ねた。
だから僕は微笑みを浮かべて「本当だよ」と答えた。
これが本音なら、楽だったのに。
君を喪う未来が怖かったというのに。