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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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久しぶりに実家に帰ったら、産休の姉が生まれたての命を俺に託す。
「あとはお風呂に入れるだけだから」と押しつけられた。
息をしている小さな生命はふにゃふにゃで柔らかい。
「行ってきます」と慌ただしく、姉は出て行った。
湯船に赤子をつけたのはいいが、この後がわからない。
そこへ助け船。
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人生の春だった。
思い煩う年頃にやってきた春だった。
少し僕より背の低い彼女は笑った時、最高に可愛い。
彼女が堂々と、僕の腕を両手で包む。
「鍛えているんですね」と彼女が感嘆とする。
「いつでも君を守るためにね」と僕は言った。
少し気障だっただろうか。
彼女の顔を見ると赤面していく。
『君の死に際より、愛を込めて。』

僕よりも一秒でも長く生きる、と約束してくれただろう。
こんな形で別たられるとは、人生の設計に間違いがあったとしか思えない。
白いベッドで眠る君の枕元に座る。
本当に最期だと思ったら、目が熱くなった。
左手にふれる。
君の死に際より、愛を込めて。
『あの日の未来を、
 僕は今日と呼んだ。』

夢の輪郭は淡く儚く。
ぼやけて、まだ形にすらなっていない。
それでも、と期待した夢の後先だった。
あの日の未来を、僕は今日と呼んだ。
夢を絶対に現実のものにするためのおまじないのようなものだった。
隣にいてくれた君は僕に笑ったけれども。
『君を想ったんでしたっけ』

高校の同窓会で当時付き合っていた男性と再会した。
どこかさえない印象があった彼がすっかりと垢抜けていた。
二度目の恋に落ちそうで心臓が高鳴る。
「覚えてる?」と尋ねると彼は目を瞬かせる。
「そういえば、君を想ったんでしたっけ」過去のことのように言う。
「iotuは、震えないよう祈りながら最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

------

僕は、震えないように祈りながら最後の嘘をついた。
神様どうか、お願いです。
君にこの震えが伝わらないようにしてください。
嘘つきの僕がつく最後の嘘なのです。
それは悪あがきのような嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
僕は笑顔で見送った。
君はずっと、こぶしを握り締めている。
痛くはないのだろうか。
君はずっと、唇をかみしめている。
痛くはないのだろうか。
君はずっと、棺を見つめている。
泣きたくても泣けないのだ。
だから、僕は君の手を包みこむ。
そして「君のかわりに、泣いてあげる」と言った。
僕は哀しい君のために泣いた。
私は空気ではない。
常に貴方の傍に入れるはずがない。
貴方を包みこんであげられるわけではない。
当たり前は、当たり前ではないのだ。
酸素だけでは生きていけるはずがない。
多すぎる酸素は貴方を苦しめるだろう。
けれども、少なすぎる酸素では酸欠を起こすだろう。
空気は貴方に合わせている。
君は泣き顔で、僕の両手を指先でなぞる。
まるで幽霊か、はたまた透明人間を相手にするかなように。
そして、ひときわ大きな怪我に君の指が止まった。
「痛かった?」君が問う。
「もう、昔のことだよ。痕が残っているだけだ」と僕は答えた。
「こんな大きな怪我をしたの」と君は息を長く吐き出す。
『なくしてしまった時間は
 なぜこんなに美しいのか』

街灯が明るすぎて星すら見えない街の中で、私は一人で歩く。
かつてのように足音がハミングすることはない。
軽やかな足音に、密やかな内緒話に、耳を傾けることはない。
なくしてしまった時間はなぜこんなに美しいのか。
想い出が囁く。
『私の恋は、貴方の恋のプロローグ』

この恋は私にとって最後の恋になるだろう。
もう自由に想えることはない。
家に入るというのは、そういうことだ。
最後にふさわしく華やかに飾ろう。
せめて、楽しい恋にしようと思った。
貴方にとっては長い人生の中のプロローグに当たるような恋だろう。
『私を殺人犯にしろ』

「私を殺人犯にしろ」と君は開口一番に言った。
コーヒーを置いていったホールの従業員がぎょっとした顔をした。
「彼女はいつもこうなんですよ」と僕は笑顔でフォローした。
「誰を殺したいの?」僕はコーヒーに砂糖を一匙入れて尋ねた。
「過去の私だ」と君は言った。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

------

僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
これが夢なら、とっておきの悪夢だろう。
それは現状打破のための嘘だった。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と、僕は君に淡々と告げた。
悪夢に囚われるのは僕ひとりで充分だった。
本音を仕舞い込んだまま、君とは別れる。
幸せだったよ。
真っ直ぐ続く道路に引かれた車高通行帯のように、君と僕との境界線は記されていた。
僕は守らなければいけない境界線を乗り越えたくなった。
君は生まれたての子犬のような瞳をして僕を見つめる。
まるで許しを請うように。
僕の胸の内にあった加虐性が顔をもたげる。
まずは君にふれるところから。
「どうしてお父さんは、お母さんを選んだの?」私は疑問に思っていたことを尋ねた。
家族団欒の夕食時だった。
沈黙が漂ったのが幼い私にもわかった。
この場を取りつくろわなければ、と話題を探すが見つからない。
それに、どうしても知りたかったのだ。
「心が綺麗だったからだよ」と父は言った。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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