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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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かつての秘密基地は荒廃していた。
卒業後、誰も手入れをしなかった証拠だろう。
想い出に変わってしまった過去に腰を下ろす。
君がいたせいだろうか、ここから見る夕焼けは何よりも、美しかった。
残念ながら、まだ昼すぎで、僕の隣には君はいない。
我慢することを覚えた僕は、ためいきをついた。
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『ねぇ、泣いた日々よ』

もう帰ってこない。
ねぇ、泣いた日々よ。
明けない朝はないんだと慰められても、涙を流し続けた。
そんな私の背を優しく撫でてくれた。
そんな暖かさはもう帰ってこない。
泣き止まなければよかったのだろうか。
そうすれば永遠に傍にいてくれたのだろうか。
分からない。
『でも、彼女は旅立った。』

「僕たちのこと嫌いだったのかな?」隣のぬくもりが言った。
「彼女はいつだって、僕たちのことを好きだって言ってたじゃないか」
鏡のようにそっくりな存在に告げる。
「でも、彼女は旅立った。僕たちを置き去りにして」もう一人の僕が枕を抱きしめながら言う。
『それでは今夜にて』

青年は秘密話をするかのように、耳元で囁く。
それに少女の心臓は駆け足をしたかのように、ドキドキと脈打つ。
「それでは今夜にて。夢の中でも会いましょう」と少し寂しい香りがふわっと香った。
「わかりましたわ」と大人びた口調で少女は夢路での出会いを約束する。
「iotuは、無理に笑顔を作って最後の嘘をつきました。
それは最初で最後の嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

------

僕は、無理に笑顔を作って最後の嘘をついた。
君にはいつでも正直でいたから、それは最初で最後の嘘だった。
「まだ一人で生きていける」と。
家族を喪ったけれども、思い出はまだ胸の中にある。
一人で生きていくのは心細かったけれども、まだ笑顔が作れるのだ。
頼むよ、ごまかされてください。
夜空には銀の星たちが集っていた。
光年という尺度から見れば、刹那の生命である人だったがためいきが零れた。
星々はすでに春支度をすましており、まばらに輝く。
冷たい風が駆け抜けていった。
夜空を拭くように。
そこには冬の凍えるほどの寒さはなかった。
暴力的な春が来るのだ、と感じた。
愛猫を抱えこんで、夜の散歩に出た。
愛猫に銀河を見せてやりたかったのだ。
もうすぐついえる生命だったから、よりいっそう。
けれども、今日の夜空は霞んでいた。
「ごめんね」と愛猫に囁いて、撫でる。
腕の中の愛猫はあたたかく、終わる日が来るとは思えなかった。
愛猫は元気よく返事をする。
人の体を巡る液体は海にほど近いという。
それならば、こうして流される涙も海と同じ。
塩辛さとあたたかさは一緒だろう。
君は泣きそうになりながら、僕の手のひらを両手で包む。
「もう無理はしないでよ」と海のように広い心でささやく。
けれども、それを守る自信はなかったから約束はできない。
『風にとばした手紙の行方』

せっかく書いた手紙も宛先不明で返ってきた。
あなたと連絡を取る手段は、全て絶たれてしまった。
もうあなたと繋がっていた線が切れてしまったかと思うと、切なくなった。
私は風の強い日に手紙をとばす決意した。
最後の手段だと、風にとばした手紙の行方を探す。
『星さえも堕ちる時には身を焦がす』

落とし穴に落ちるように、すとんと落ちてしまった。
ただ君が笑って、僕の名前を呼んでくれただけで。
それ以来、夏虫のように身を焦がしている。
星さえも堕ちる時には身を焦がす。
ちっぽけな人間の僕だって身を焦がすのは道理だろう。
今日も君を想う。
『忘れられない日々に
 忘れられない君を』

僕はテーブルの上に置かれた写真立てを見る。
そこにはぎこちなく笑う僕と晴れ晴れとした笑顔の君がいた。
忘れ慣れない日々に忘れられない君を見つける。
懐かしいと思い出にするにはほんの少し痛い。
君は僕の青春そのものだった。
今も思い返す。
如月に入って、春めいてきたようだった。
テレビでは数々の庭園を紹介するコーナーで、花が映った。
そういえば最近、外出していないなと思い、妻を誘おうかと思ったが、やめた。
妻は花粉症なのだ。
残念に思いながら、テレビを消した。
「ミモザサラダよ」と卵が弾けるサラダが食卓に。
「iotuは、ぎゅっと手を握り締めながら最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「いなくなったりなんてしないよ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」

------

僕は、ぎゅっと君の手を握り締めながら最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
「いなくなったりなんてしないよ」と。
君の眼は疑り深い。
「本当に?」君は尋ねる。
「君が飽きるまで一緒にいるよ」嘘に嘘を重ねる。
誰か、いっそ笑い飛ばしておくれよ。
笑いもしないピエロの末路を。
「一度、言ってみたい言葉があるんだけど」君は微苦笑をした。
「なに?」僕は尋ねた。
「ざまぁみろ」と君は言った。
「何か悔しいことでもあったの?」僕は訊いた。
「全然」君は否定した。
「使う場面が少ないし、君に似合わないよ」と僕は微笑んだ。
「憧れない?スッキリしそう」と君は言った。
君との間に漂った沈黙が重くてテレビをつけた。
緊張した空間に、とりあえずの音があふれる。
君は盛大なためいきをつく。
逆効果だっただろうか。
僕はテレビに夢中な振りをして、画面を見つめる。
「そうやって逃げるのね」と君は静かに冷たく言った。
テレビを消したがもう遅い。
君は怒っていた。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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