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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『青春じゃない
 なんて
 青春していたじゃない』

「青春はなかったなぁ」と壮年に足をかけた俺は言った。
「私と一緒にいた時間は?」と腐れ縁の君が言った。
「青春じゃないよ。暗い日々だった」
「青春じゃないなんて青春していたじゃない。少なくとも私には青春だったわ」と君は笑う。
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「寂しさと隣り合わせ」

寂しさと隣り合わせだ、と君は言った。
僕が傍にいるのに悲しいことを言う。
僕だけでは君の寂しさを拭ってあげることはできないのだろう。
そんな無力な自分に落胆しつつ「僕も隣にいるよ」と君に言った。
曇り空を宿したかのような瞳が虚ろに僕を見た。
微かに笑む。
『幕間恋愛』

「緞帳が降りている間、恋愛しましょう」蠱惑的な紅い唇が囁く。
客席に観られていない間。
脚本通りに進行していく劇の外。
僕たちは本当の恋愛をしようと誘うのだ。
それは秘密の幕間恋愛だろう。
君の誘惑に僕は負けそうになる。
恋愛は一時のものだ。
幕はいつか開くのだから。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
どうか嘘だと気づかないで。」

------

僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
本当になったら嬉しいけれども、そんなことはない。
分かっていて君に嘘をついた。
「すぐに追いつくから、先に行っていて」と。
モンスターの足音は迫っていた。
君よ、これがどうか嘘だと気づかないで。
君と最果てまで一緒にいると約束したね。
それは嘘ではないけれども、君が先に彼岸に行くとは思わなかったよ。
僕は此岸で、毎年、君が帰ってくるのを待っている。
あの日交わした約束を破った君を恨む。
どうして僕も一緒に連れて行ってくれなかったんだい。
一緒に最果ての先まで行きたかったよ。
いくら街灯があると言っても、この時期は夜になるのが早い。
切れかかった電球がチカチカと光っていた。
それが不安をあおる。
まるでホラーゲームの登場人物になってしまったようだ。
月でも出ていれば、少しはマシなのだろうが、新月の今日は期待ができない。
早く夜が短くなればいい、と思った。
「私はあなたの純粋さの化身」と唐突に言われた。
身も知らずな少女は道中で言うのだから、何かの勧誘かと思った。
「君は、どこから来たの?」僕はできるだけ優しい声で尋ねた。
「あなたの心の中からです」少女は言った。
ますますあやしい。
「僕の純粋さなら、もっと霞むんだと思うんだけど」
海に来た君は涙を流した。
寄せては返す波打ち際に立って、一人泣いていた。
僕はいつになったら泣き止むのだろう、と思いながら眺めていた。
波の音と君の涙がシンクロする。
君は「ありがとう」と泣き顔で、僕の手のひらを包む。
あたたかな手に包まれて「別に」と僕はそっけなく言ってしまった。
『火傷の後はひどく目について』

掃除をしていたら、花火だ大量に出てきた。
来夏まではもたないだろう。
君と季節外れの花火大会をした。
そこまでは良かった。
面倒くさくなって、いっぺんに火をつけたのが悪かった。
君は火傷をした。
小さなものだったが、ひどく目について、僕は後悔した。
『否定形の恋人』

自信がないのか、なんでも否定形にする人だった。
だから、私も否定形の恋人。
肯定してほしいと何度も思うけれども、こればかりは仕方がない。
そんな人を好きになってしまったのだから。
今日もまた「君は僕の好きな人だけど、恋人じゃないよ」と口癖のようにあなたは言う。
『髪を短く切って告白を』

惰性で伸ばしていた髪を、春らしく切った。
美容院帰りの足は自然と弾む。
今だったら、言えるんじゃないかと思った。
突然、家に行ったら驚くかな。
どんな顔をするだろう。
想像したら楽しくなってきた。
ドアの前で呼び鈴を鳴らして待つ。
心の中に眠る告白をする。
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」

------

僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
君だけは逃がしたい。
信じてもいない神に祈りを捧げた。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、僕は笑顔で言った。
不安げな表情をして君は道の先を進む。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。
そうしたら最期まで一緒だ。
街灯に群がる蛾のように、男たちは私に群がる。
一睡の夢を見るのには、ちょうどよく見えるのかもしれない。
私がどんな女かも知らないで、仮初の愛の言葉をささやく。
私は嘘を吐きたくて、真っ赤なルージュを唇にのせる。
永遠が欲しいと思いながら、蛾たちの群れの中で夜の自由さを満喫する。
煙草を始めたのは、二十歳の成人式からだった。
振袖を着て、華やいでいる同級生を見て、羨ましくなったからだった。
こちらといえば毛玉のついたセーターにスキニーという姿だった。
それに自分だけ二次会の案内が来なかった。
それだけのことかもしれないけれど、きっかけには充分だったはずだ。
昏々と眠っていたようだ。
青年は寝癖をつけたままダイニングに降りた。
ダイニングでは少女と、すっかり冷めた朝食が待っていた。
この罪をどう許されればいいのだろうか。
一緒に食事をとるという約束を守ることができなかった。
少女は沈黙を保って、椅子に座っているのが悲しかった。
「ごめん」
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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