『秋はもう一度はおとずれず』
貴方に出会ったのは秋でした。
妙に紅葉が遅く、日ばかり短くなっていく秋でした。
今も覚えています。
夕焼けの中、私たちは言葉も交わさずに何度も帰りました。
冬がきて、もうすぐ春がきます。
貴方とは離れ離れです。
秋はもう一度はおとずれずに別れがきます。
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『貴方のことは遠くに感じていたいの』
君も僕のことが好きだ、と確信したから告白をした。
君は複雑な表情を浮かべて断った。
その断り文句も不思議すぎた。
「貴方のことは遠くに感じていたいの」と困ったような顔をして君は言った。
嫌いなら、いっそ嫌いだとはっきりと断って欲しかった。
『夢だけ逢いにこないで』
この恋は、あなたにとって都合の良い恋なのだろうか。
私は、あなたにとって都合の良い女のなのだろうか。
『ずっと一緒にいるよ』と睦みあいながら、次に会う約束をしない。
最後に逢ったのはいつだろうか。
夢だけ逢いにこないで。
虚しい気持ちになるじゃない。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」、と。
嘘だと見破ってくれたらいいのに。」
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僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
「くだらない毎日なんて、消えてしまえ」と。
日々は苦しくて辛いものだけではなかった。
なにより隣に君がいてくれたから。
君は不安気に僕を優しく見つめる。
君が嘘だと見破ってくれたらいいのに。
ティッシュの箱を買いながら、思わず喜んでしまう。
花粉症万歳だった。
インドアの私と違い、アウトドアの夫は、私を置いて一人で遊びに行ってしまう。
それでもこの時期は違う。
家の中で私と一緒にいてくれる。
花粉症で辛そうだとは思うけれども、離れなくてすむのは嬉しい。
会計しながら笑う。
手元を見ると一振りの脇差し。
父から譲られたものだった。
想い出がたくさん詰まっている品だった。
できたら墓の中まで連れて行きたいものだった。
けれども、困窮している一家のために手放すことが決まっている。
惜別の時が迫っていると思うと、心の中で涙が流れた。
「ありがとう」と礼を言う。
意地っぱりな君は、なかなか素直になれない。
僕はそんな君も可愛いと思うけれども、周りは違うようだ。
「なんで別れないの?」と君と一緒にいる時、友だちに訊かれた。
友だちは悪気はなかったんだと思う。
「離れちゃ嫌」と君は無理矢理、僕の両手にしがみつく。
「こんなところ」と僕は笑う。
今年はあなたに会えないから、自分用のチョコレートを買った。
いつもよりも奮発したチョコレートを前に、涙が流れた。
甘党なあなたに、このチョコレートを渡したかったな。
「君も食べなよ」と勧めるあなたに一つだけもらって、一緒に食べたかったな。
チョコレートは涙の味がした。
『一緒に帰って
ご飯炊いたり喧嘩したりしよう。』
家に君がいなかった。
どこへと行ったのかは当たりがついた。
きっと悲しいことがあったのだ、ということも分かった。
君は誰もいない公園でブランコを座っていた。
僕は声をかける。
一緒に帰ってご飯炊いたり喧嘩したりしよう。
君に言う。
『キミよ私の最後の願いに導かれてゆけ』
キミには、まだ輝かしい未来がある。
年老いた私に付き合っているのは、もったいない。
もっと外に出て、色んなことを見聞してほしい。
もし、それでも余裕があるのなら、帰ってきて私に話をしてほしい。
キミよ私の願いに導かれてゆけ。
最後の言葉だ。
『あいつん家の枯れた朝顔』
通り道だから気になっていた。
いや、わざと通学路にしていた。
遠回りになるとうのに、我ながら純粋だ。
あいつん家には、いつまでも枯れた朝顔が植わったままだった。
そして、傷心したような顔をして朝に顔を出すあいつ。
まるで朝顔とシンクロするようだった。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「ずっと君と一緒だよ」、と。
・・・うまく笑えたかな?」
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僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それは悪あがきのような嘘だった。
「ずっと君と一緒だよ」と。
君を安心させるための嘘だった。
それは君も薄々感じ取っていたようだった。
これが最後の嘘になるのなら、君の悲しみを拭い去りたい。
だから僕は笑顔を作る。
君の前で・・・うまく笑えたかな?
スマホもパソコンもタブレットも持っていなかった。
アナログなコミュニケーションしか持ち合わせていない僕らだった。
だから君と離れる別れ道に来ると、足を止めてしまう。
今日は君から交換日記を渡された。
サヨウナラではなく「また明日」と君は微笑んだ。
だから僕も「迎えに行くよ」と言う。
なんでも彼女はスマホのカメラに収める。
青い空も、薄紅色の薔薇も、昼間に食べたラーメンも。
まるで自分の記憶は信じられないように、シャッターを切る。
そこかに投稿するわけでもなく「ただの記念だよ」と笑う。
いつか真っ直ぐ夢へ向かって進む僕を撮ってくれないか、と言うと勿論と言った。
向かい側から、よたよたと蛇行運転をするドラックが走ってきた。
運転手はまともなのだろうか。
それぐらい揺れている。
無理矢理、隣を歩く彼女の両手を軽く握る。
「え?」驚く彼女を自分の傍に引き寄せる。
そこで彼女もトラックの存在に気がついた。
荷台を揺らしながら、トラックは通り過ぎた。