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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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『少年へ還る列車にて』

車窓は緑が深いものになっていく。
懐かしい光景に出会えるだろうか。
僕の期待はどんどん膨らんでいく。
「あら、こんにちは」と声をかけられた。
驚いて振り返るとあの頃の君がいた。
「こんな奇遇なことがあって良いんでしょうか?」と君が笑う。
少年へ還る列車にて。
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「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは切望のような嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

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僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
それは切望のような嘘だった。
君にすがりつきたい、そんな嘘だった。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。
僕は君を安心させるように嘘をついた。
こんなことしか言えないなんて。
真っ直ぐ見つめる君の瞳から、視線を逸らした。
嘘だと暴かれただろうか。
「僕は君のことを好きなんだ」と告白した。
今まで友だち同士だった君は、困惑したような表情を浮かべる。
「嫌いなら嫌い、って言ってよ」と僕は続ける。
優しい君はそんなことは言えない。
分かっていての告白だった。
僕は友だちでいるのに疲れてしまったんだ。
君と恋人同士になりたかった。
代々、伝わってきた水晶製のコンパス。
宝石のありかを指し示す貴重なコンパスだった。
コンパス自体も宝物のような出来栄えだった。
成人した息子を書斎に呼んだ。
そして充分に大きな手にコンパスを置く。
「国のために働く覚悟はあるか?」と問う。
息子の瞳はきらきらと輝く。
コンパスを伝える。
また悪ふざけに思われるのかな。
僕は恐る恐る、指先を触れ合わせる。
僕よりほんの少しばかり冷たい指先は、その分寂しそうな気がした。
僕は君の指先をぎゅっと握った。
「何の用?」君は不機嫌そうに言った。
「君をあたためたかっただけだよ」と正直に答えた。
君は大袈裟にためいきをついた。
『私の心ぐらい鷲掴んでみせて』

優しい貴方は微笑んで、私をくるむように包む。
まるで毛布にくるまれているような温かさだ。
それはそれで素敵だったけれども、物足りない。
私の心ぐらい鷲掴んでみせてよ、と駄々をこねそうになる。
みんなからは、私にはもったいない彼氏だと言われるのに。
『それでは、よい終末を。』

地球が青かった、そんな時代から幾千の時が過ごした。
今の母なる惑星は灰色に染まっていた。
人類たちも遺伝子改良をして、灰色の地球に馴染もうとした。
けれども滅びへの道に向かっていた。
そんな時、宇宙人が来訪した。
そして、それでは、よい終末を。と言う。
『夏目漱石ならなんて言うかな。』

月がしみじみと美しい夜だった。
二人の足音が並んで、それだけでも幸せだった。
「夏目漱石ならなんて言うかな。こんな夜」と君は僕を見上げた。
決まっている『月が綺麗ですね』だ。
僕は知っていたけど言わなかった。
「愛しているよ」と自分の言葉で言う。
「iotuは、穏やかに微笑んで最後の嘘をつきました。
それは悪あがきのような嘘でした。
「もう、迷わないよ」、と。
君は何も知らないままでいて。」

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僕は、穏やかに微笑んで最後の嘘をついた。
それは悪あがきのような嘘だった。
「もう、迷わないよ。僕は夢のために進む」と。
本当は今でもグラグラと迷っている。
夢を現実にする算段がついていない。
叶うことがあるのかすら分からない。
君は何も知らないままでいて。
君とは笑顔でお別れしよう。
「もっと自分を大切にした方がいい」と僕は言った。
肩を覆うほどに伸びた髪をショートカットにした君に。
何度目かの恋の終焉だった。
実ることのない恋をくりかえす君は哀れだった。
「うるさい、わかってるくせに!」君は涙を流しながら言った。
僕にはわからない。
君が恋をくりかえす理由は。
二人そろって電車の中で揺られている。
規則正しいレールの音は眠気を誘う。
車内でうつらうつらと舟をこいでしまう。
まぶたが重たくなってきた。
いよいよ眠りの世界に旅立つ。
そこで君は満面の笑みを浮かべながら、僕の腕に爪を立てる。
子猫のように小さな痛みだったが、バッチリと目が覚めた。
『ぜひキスしておいてください。』

眠っている私を置いて出て行くのなら、ぜひキスしておいてください。
素敵な夢を見られることでしょう。
たとえ隣にぬくもりがなくても、幸せでしょう。
だから、静かに部屋を出て行く前に私にキスをしてください。
眠り姫は起きたりはしません。
お願いです。
『結局、雨ざらしの希望を』

どこにも見当たらなかった。
傘をさしながら、探しに出たけれども。
通った道にも、その道の端にも、見つけられなかった。
この雨のように涙が零れそうだ。
鼻水をすすりあげながら、明るい希望を探しまくった。
結局、雨ざらしの希望を拾い上げることになった。
『たとえば、私の胸はつぶれそう。』

「好きって言うけど、どれぐらい好きなの?」悪戯っぽくあなたは問う。
私の気持ちを推し量る。
「たとえば、私の胸はつぶれそう。たとえば、泣きたくなるぐらい」と私は答える。
あなたへと、この気持ちが届くように。
精一杯の告白は成功しなさそうだ。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」、と。
・・・うまく笑えたかな? 」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「君の記憶から消し去ってくれていいよ」と。
本当はすべての思い出を覚えていてほしい。
僕と恋をしたことを忘れないでほしい。
けれども、これから嫁いでいく君には不要な記憶だ。
僕は・・・うまく笑えたかな?
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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