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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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ずっと楽しみにしていた旅行だ。
新幹線を降り、改札口を出ると手を差し伸ばされた。
じっと見ていると「はぐれたら困るだろう」とあなたは言った。
「ただでさえ、土地勘のないところで、迷子体質なんだから」と続ける。
私は嫌々ながらも、両手を触れ合わせる。
なんか子どもっぽくて嫌だった。
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『季節の終わりで待っていて』

寒い夜が続く中、君は笑った。
白い息を吐きながら。
息はそっと闇夜に溶けていった。
「季節の終わりで待っていて。必ず、駆けつけるから」と君は言った。
季節の変わり目はもうすぐだ。
僕たちが自由になる春の足音が聞こえてきていた。
冬のはじでの約束だった。
『君の翼をかして』

空中から人が落ちてきた。
それを宙で抱きとめる。
地上に落下しないで良かった。
ほっと安心をしているこちらを無視して、空中から落ちてきた少年は笑う。
「君の翼をかして」と目をキラキラと輝かせる。
「有翼人はタクシーではないのよ」と少女はためいきをひとつ吐いた。
『季節のはじで待ち合わせ』

あなたは真夏のにわか雨。
あなたは夕立。
私は野に揺れるススキ。
同じ時間を共にしたいと思っても、どうしても一緒にはいられない。
季節変わりの夜に、袖を振り合わせるだけ。
来年もまた逢いましょう。
季節のはじで、いつまでもいつまでもあなたは待っています。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
本当に、ごめんね。」

------

僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
真っ直ぐに君の瞳を見ていられなかった。
嘘だとバレてしまうから。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「君の全部を忘れたいんだ」と。
君はどんな顔をしているのだろう。
本当に、ごめんね。
未来へと向かって行くのだから荷物は軽い方がいいだろう。
あなたは物憂げな瞳で私を見た。
何度もくりかえしてきた恋の終焉が訪れる。
私はこれからの未来を覚悟をする。
「愛してる愛してる、愛していたかった」あなたは少しかすれた声でささやいた。
優しいあなたは別れの言葉まで優しい。
笑顔で『サヨナラ』ができそうだった。
私も愛していたかった。
「私の扱い方をそろそろ覚えてくれた?」自称ツンデレな彼女が言った。
君は自分の心に素直になれない、寂しがり屋な女の子。
そんなことを言えば怒りを買うだろう。
「だいたいね」と代わる言葉を告げた。
「頼りないわね」君は目を三角にして言った。
我儘をいうまでのカウントダウンが始まった。
「君の瞳はダイヤモンドみたいだね」事実だったから、僕は恥ずかしく思わずに言った。
けれども君にとっては当たり前ではなかったようだ。
白い頬が薄紅色に染まっていく。
「こんな公衆の面前で言わないでよ」と君は言った。
「だったら、二人きりの時ならいいの?」と僕は問う。
「許さないわよ」
子どもたちが走らない公園。
日向ぼっこをする夫婦がいない公園。
感染症は世界を変えてしまった。
誰もが家にこもり、うずくまっている。
そんな中、僕たちは公園のベンチで並んで座っていた。
何故か、君は怒り顔で、僕の指先に爪を立てた。
それは子猫のように、わずかな痛みだったから笑った。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「世界は希望で溢れている」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

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僕は、どうしようも泣きたい気分で最後の嘘をついた。
それは自分が傷つくだけの嘘だった。
それでも、守れるものがあるのなら、そのために嘘をつくのは難しくはなかった。
「世界は希望で溢れている」と。
俯く君のために言葉を紡いだ。
僕の本音は仕舞い込んだまま。
君の前で泣いたりはしないよ。
どんな自分も演じることができる。
そう少女は思っていた。
実際、180度違う役柄も演じてきた。
「どんな私がお好みで?」少女は言った。
少年は「ありのままの君が一番好き」と微笑んだ。
「意外とつまらないことを言うのね」と少女はすねたように言う。
少女は恋愛遊戯をしたかったのだろう。
太陽圏からの脱出は悲願であった。
寿命を迎えた恒星は全てを灼熱の炎で飲みこもうとしていた。
生命が宿った奇跡の星も例外ではなかった。
選ばれた人々が宇宙船に搭乗していく姿は、残された者たちにとってはどんな思いを抱かせたのだろう。
音声の入っていない動画からは分からない。
-
悲劇は流転する。
誰もが望んだハッピーエンドへと作り変えられる。
小説家の手によって。
災いは幸いになり、涙は笑顔になる。
誰かが歌を唄った。
それがエンドロールのように。
幕は少しずつ下がる。
アンコールの拍手と共に。
作り変えられた喜劇に誰もが納得した。
かくして、悲劇は息絶えた。
「iotuは、小さく笑って最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、小さく笑って最後の嘘をついた。
それは歩き出すための嘘だった。
少なくとも、未来のための嘘だった。
ここで言わなければ、次の機会はないことは知っていた。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
君は不審に思いながら、先へと向かっていった。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
自転車を押して、歩いた帰り道。
空は良く晴れ、少し早いが夕暮れが二人を照らしていた。
ランドセルを背負った子どもたちが先を競って、走り抜けていった。
「愛してる愛してる、愛していたかった」とあなたは声を落として言う。
この恋も終わりを迎えようとしている。
それが分かって切なかった。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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