『君は私に愛しているを』
「私から君へ、旅立ちの応援をするから」とあなたは言って、俯いた。
どれほど時間が経っただろうか。
意を決してあなたは顔を上げた。
「君は私に愛しているを、ください」とあなたは告げた。
「そんなこと、ずっと前から決まっているよ。愛している」と僕は笑った。
『じゃあね。またケンカでもしようよ。』
ホームに見送りに来てくれたのは、君ひとりだった。
逃げるように小さな町から出て行くのだから、当然なのかもしれない。
それでも見送ってくれる人がいることを感謝しなければならない。
「じゃあね。またケンカでもしようよ。楽しみにしている」
『死にたくなる理由なら
貴方だけのせいじゃないだろう?』
誰だ明日は明るい日だと言ったのは。
夜の心地よさと朝が来ることの恐怖を知らないのだろう。
死ぬ覚悟をして非常階段でビルの屋上までやってきた。
そこには先客がいた。
「死にたくなる理由なら貴方だけのせいじゃないだろう?」
「iotuは、まるでいつも通りに最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」
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僕は、まるでいつも通りに最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
嘘ですべてがごまかされたのなら、どんなにいいだろう。
君の涙をこれ以上、見たくないのだ。
「これ以上関わらないでくれ」と。
冷たく吐き捨てるように言った。
嘘だと言えたら、どんなに。
本当は君を抱きしめたい。
あの日、君は『大丈夫だよ』と言った。
その表情は全然、大丈夫ではなかった。
今にも崩れそうな顔をして、声だけは明るかった。
僕を安心させるために、浮かべた表情だということは分かった。
そんなに僕は、頼りなかったのだろうか。
あれから君を見ることはなかった。
君が吐いた嘘と本当だった。
七色のキャンバスが濁らずに華やかに描かれていた。
自分にはできない芸当だった。
それが分かって悔しい。
展覧会の一番目立つところに飾られた油彩を、見上げる。
どうすれば、こんな風に虹色を使いこなせるのだろう。
天才というヤツだろうか。
技量の差が苦しかった。
端に飾られた絵の自分には。
付き合っていることは誰にも秘密だった。
だから、学校でも赤の他人の振りをしていた。
一緒に帰ることもしないし、手を繋ぐこともない。
付き合う時『それでいい』と彼女の方から言ってきたのだ。
それなのに最近、恋人らしいことをしたいと盛んに言うようになった。
仕方なく、指先を両手で包む。
『君を好きになるはずの
5年後の私へ』
信じられないかもしれない、と便箋は書き出されていた。
あなたから5年後の私が書いているまぎれもない手紙です。と続いていた。
それを持って、失恋したての君の元へ走った。
友だちの二人に5年後、何が起きるのだろうか。
恋に落ちる理由が知りたい。
『おわりかけの失恋』
この恋もおわりかけを迎えたのだ。
私は盛大に失恋をするのだ。
それが分かってそっと微笑んだ。
おわりかけの失恋を物分かりの良い顔で見送る。
本当は泣いてすがりつきたかったけれども、それは迷惑だろう。
せめて綺麗な想い出になるように願った。たった一つの恋を。
『今夜だけの婚約者』
「お願いがあるの」学校中のマドンナが言った。
平凡な僕に何の用だろう。
「今夜だけの婚約者になって」とマドンナは言った。
ああ、それで、僕に話しかけてきたんだ、と納得した。
僕の家はいわゆる伝統のある旧家だ。
かりそめの婚約者に僕はふさわしい配役だろう。
「iotuは、夢を見るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「絶対にあきらめたりしないよ」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」
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僕は、夢を見るような気持ちで最後の嘘をついた。
目覚めてしまえば覚えていないような、頼りのない嘘だった。
それは自分が楽になるための嘘だった。
「絶対にあきらめたりしないよ」と。
すでにあきらめているのに、口にした。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
少なくとも夢に向かう君には。
「そんなことをすると、くすぐっちゃうからな」
「できるならどうぞ。倍に返してあげる」
今日もバカップルは教室だというのにお盛んだ。
私は大袈裟に溜息をついた。
それすら、かき消すようにじゃれあっている。
こちらは試験に向けて勉強中だというのに。
「黙れバカップルが」と言ってしまった。
「おい、いつまで寝てるんだ」
放課後、下校のチャイムが鳴ろうとしているのに、教室で爆睡をしている女子生徒がいた。
二人っきりだというのに、完全に安心しきっている。
それが少し悲しく、少し切なかった。
いつでも、面倒を見てきたせいだろうか。
今も机に突っ伏して女子生徒は眠っている。
青年は神剣・神楽を抜刀する。
するりと音もなく抜けた。
そのままの勢いで枝を切る。
何の抵抗もなく、枝は落ちた。
青年は斬れ先を睨みつける。
神刀というよりも、妖刀に近い。
青年は神剣・神楽を納刀する。
斬ってしまった花枝は少女に渡そう。
そうでなければ可哀想だ。
青年は花枝を拾いあげる。