大人たちがいう『意味』なんてどうでもいい。
自分たちさえ気持ち良ければそれでいい。
二つが一つになるのが悪いなら、どうして私は生まれてきたの?
私たちはそれを真似しているだけだよ。
それなのに、大人たちは良い顔をしない。
これでも真剣に愛しているのよ。
たとえ、ひとときのものでも。
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美容室に行き、髪型を相談する。
いつものようにオーダーすると雑誌を手渡された。
白髪が多かったせいだろうか。
実年齢よりも年配の女性が読む雑誌だった。
こういう時、時間は冷酷だと思った。
若返って見えるかは、美容師の腕に前に託す。
もう『女』として見られないのだろうか。
不安になった。
バカップルと呼ばれてもかまわない。
僕はたった一つの恋を大切にしたいのだ。
君自身を宝物のように愛でていたのだ。
恋に憶病な君に「お嬢さん、お手をどうぞ」と僕が言う。
君の顔が少し和らぐ。
優しく、差し出された手の指先を握る。
君の手が微かに震えるのは、それだけ傷ついてきた証だ。
『にわか恋愛』
失恋、時々にわか恋愛。
それは雨のように降るでしょう。
傘の代わりに、レターセットを持ち歩きましょう。
意中の人がいる方は特に。
失恋したての空気を払って、新しい恋に出会えるでしょう。
ただし、大切にしなければ新しい恋も次第に止むでしょう。
きちんと恋心を忘れずに。
『手紙のすみで待ち合わせ』
誰にも見られないように、手紙を交換する。
万が一見られてもいいように、宛名も差出人の名前も書かない。
手紙のすみに小さな印がついている。
待ち合わせ場所を示す大切なマークだ。
そして僕らは今日も、手紙のすみで待ち合わせをする。
誰にも知られないように。
『できます。どいてください。』
「あなたにはできないんじゃない?」古参の従業員が言う。
いわゆるお局様だ。
「今月入ってから、まだ一軒も契約がとれていないんでしょ?」憐れみをした瞳で見下してくる。
「できます。どいてください。必ず成約させてみます」私は肩で空気をきって言った。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」
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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
嘘をつくのに神様に祈るなんて欺瞞だ。
それでも祈った。
それは歩き出すための嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
君に伝えるように一言一言はっきりと言った。
頼むよ、ごまかされてください。
君の隣に幸せはいつもあったということを。
星屑が大量に墜ちてくる夜だった。
月はなく、海の中は暗闇だった。
珊瑚を密漁する不届き者が現れるような夜だった。
海は月の満ち欠けに影響され、海から生まれた人の体も例外ではなかった。
星屑が不届き者を照らしてくれる。
珊瑚を盗んでいくなら、そのまま溺れてしまえばいいのに。
『縁をほどく熱にさえ』
小指に絡まった赤い糸をほどいていく。
私たちの恋は終わったのだから、他の誰かのために空けておくべきだ。
縁をほどく熱さえも、在りし日を思い出して、未練が残る。
私たちは偶然、出逢ったにすぎない。
絡まった赤い糸が結んだだけの縁だった。
もうほどき終わった。
『君を好きになるには
理由がありすぎる。』
「君が好きだよ」と青年は少女に囁いた。
「恥ずかしくないの?こんな子供相手に」少女は言い返した。
「君を好きになるには理由がありすぎる。一つ一つを挙げていこうか?」青年は言った。
「貴方は自分にないものを欲しがっているだけでしょ」
『行け。
私よ。
戦え。』
己に呪文をかけるように口に出す。
「行け。私よ。戦え。そして完膚なきまでの勝利を捧げよ」と剣を鞘から引き抜き、戦場を駆ける。
赤い雨が降り、柔らかな肉は切断される。
自分が傷つくほどに、相手も傷つく。
最後に立っている者が勝者だ。
それが戦いなのだ。
「iotuは、無理に笑顔を作って最後の嘘をつきました。
それは相手の幸福を祈る嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
本当に、ごめんね。」
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僕は、無理に笑顔を作って最後の嘘をついた。
それは相手の幸福を祈る嘘だった。
「世界で一番、大嫌い」と。
君には僕はふさわしくない。
もっと素敵な人がいるはずだ。
だから、鋭い言葉と柔らかな笑顔で、君とお別れをしようと思う。
本当に、ごめんね。
ひとときとはいえ君を傷つけるのは苦しい。
あなたは憎ませもくれない、ずるい人です。
どんなにやんちゃなことをしても、あなたの笑顔を見れば許してしまう。
たとえ「二番目に好き」と言われても、好きになってくれただけでも嬉しいと思ってしまう。
一番じゃなくても、あなたが笑ってくれるのなら、恋の深みに、はまっていってしまう。
古式ゆかしく顔を知らない相手と文通することになった。
同じゲームが好きで、周りにハマっている友だちがいなかったからだ。
どんな相手なんだろう。
妖精さんが書いたように可愛らしい文字が、花々が咲く便箋に書かれている。
同じ女の子だといいなぁ、とぼんやりと思った。
返信をしたためる。
「あれ、お姉ちゃん。どっかに行くの?」と妹が尋ねてきた。
「どうしてそう思うの?」私は訊き返した。
「だって、ちゃんと化粧しているから」妹は笑う。
「でも、デートは室内の方がいいよ」
「どうして?」と問うと、妹が肩に手を置く。
「天気予報ぐらい見よう。今日は午後から雨だよ」と言う。