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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「iotuは、痛みを堪えながら最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
本当の願いは、どうせ叶わないから。」

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僕は、痛みに堪えながら最後の嘘をついた。
それは鋭いナイフで切られたような痛みではなかった。
鈍らで痛みが残るような鈍い切れ味だった。
それは相手を楽にするための嘘だった。
「君が居なくても何も変わらないさ」と。
痛みを感じない振りをして言った。
本当の願いは、どうせ叶わないから。
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帰ったはずの恋人が戻ってきた。
「忘れ物をした」と玄関先で言った。
「もう忘れ物しちゃ駄目だよ?」と私は笑った。
さっきまで別れて寂しかったことを伏せて、言葉を紡ぐ。
「何を忘れたの?」と言うと頭を引き寄せられた。
そして額にキス。
唐突な展開に私は驚く。
「君を忘れた」と恋人は言う。
青年は部屋の片隅で、神剣・神楽と向き合う。
同胞殺しの妖刀は、微かに律動していた。
まるで血に飢えているかのように。
首を落とさなければ殺せない同胞のように、青年もまた首を落とさなければ死なない。
いつの間にか体が作り替わってしまった。
少女を守れればそれでいい、と青年は決意した。
湯船につかなりながら、自分の世界はなんと小さいものだろうかと思う。
目に見えるものが全てで、それ以外は世界の外、つまり境界の外だった。
それはハレであった。
そうやってくくってしまうことに、ハッとする。
いつでも世界は広く持ちたいものだ。
箱に詰めて大切にしても意味をもたない。
謎解きは得意だった。
どんなロジックも看破できた。
そんな俺を見て幼馴染はスマホにロックをかけた。
覗かれないように、気にしてのことだろう。
どんなパスワードも俺の前では児戯に等しい。
置き去りになっていたスマホを手に取る。
俺の誕生日を入力してみた。
音楽が鳴り開錠された。

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流れた音楽はエルガーの『愛の挨拶』のオルゴール。
俺は赤面してしまった。
こんなにも分かりやすい愛情表現はあるのだろうか。
スマホのロックを開錠したことを後悔した。
このことが幼馴染にバレてたら、どんな顔をするのだろう。
「お待たせ」と幼馴染は化粧室から戻ってきた。
そして赤面した。
『立ち止まる理屈、進む感情。』

立ち止まる理屈、進む感情。
それが恋というものだろうか。
どれほど理屈を並べても立ち止まってしまう。
激しい感情が道を進ませてしまう。
道の真ん中で右往左往していると背中を押すように。
恋に理屈はいらない。
恋に必要なのは感情だけだ。
そういうように。
『損して、恋をとれ。』

若人よ。損して、恋をとれ。
そう言ったのは誰だっただろうか。
学校は学び舎というように、勉学に励むところだ。
それなのに、ひとときの恋にうつつを抜かしてよいのだろう。
どれほど文学で恋の素晴らしさを知っても、身の丈に合うまでは恋はできない、と僕は思った。
『夏の夏休み』

その年は冷夏だった。
エアコンがいらないぐらい涼しい夏に、みな途惑った。
アスファルトが道を覆う前の昔に戻ったみたいだった。
首を傾げる大人たちに「夏だって夏休みが欲しかったんだよ」と子供は笑った。
『夏の夏休み』に、そのうち慣れられるのだろうか。
大人は思った。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それは現実逃避のための嘘でした。
「永遠を信じている」、と。
こんなことしか言えないなんて。」

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僕は、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をついた。
それは現実逃避のための嘘だった。
君に告げる最後の嘘だった。
僕ができる最後の祈りだった。
「永遠を信じている」と。
僕は慰めにもならないことを口にした。
別れの場面でも、君に対してこんなことしか言えないなんて。
僕は情けなさすぎる。
家に帰ってきたら、珍しくテレビがつけられていた。
珍しいこともあるものだ、と私は思った。
居間で姉は食い入るようにテレビを観ていた。
「ただいま」と私は声をかけた。
姉はびっくりしたように振り返る。
「いつの間に帰ってきたの?」姉が尋ねる。
「ついさっき」と私は答える。
姉の隣に座る。
水につけると占い結果が出るおみくじを引いた。
おっかなびっくりと水面におみくじを浮かべる。
じわじわと文字が現れる。
そして、その文字を見てハッとする。
日本語だけではなく、英語も書いてあった。
水面からおみくじを引き上げる。
破れないように気を使いながら。
おみくじの結果は吉だった。
季節は移り替わり、最も苛烈で、最も華やかな時がやってきた。
花々は鮮やかな色を添え、雲はどこまでも高く。
帰り道にコンビニに寄ってアイスを買うと、すぐにでも溶け始める。
君は堂々と、僕の両手のひらを指先でつつく。
「そっちも、ちょうだい」と君は無邪気にアイスのおねだりをする。
『君を好きにならせてくれて。
 ありがとうございました。』

君と会うのもこれが最後。
君は卒業していく。
僕は見送る側だ。
『どうしても伝えたいことがある』と一緒に過ごした美術室に呼び出した。
「君を好きにならせてくれて。ありがとうございました。これからも絵を続けてください」
『窓うつはレイン』

ぽつりぽつりと透明な硝子がはめこまれた窓うつはレイン。
雨と呼ぶよりも、レインと呼ぶ方がふさわしい降り方だった。
心をノックをするように、レインは降り注ぐ。
それは音楽的で美しい。
あたたかい室内で、外を思う。
傘を探してレインを浴びてみようか。
ふと微笑む。
『インスタントラブレターフォーユー』

インスタントコーヒーを淹れるように、君へのラブレターをしたためる。
軽々しいかもしれないけれど、失恋した時、重いよりはマシだろう。
コーヒーの香りをまとったラブレターは君の家の郵便受けへ。
差出人の名前は書かなかった。
それがふさわしい。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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