『悪夢の続き書』
父の書斎に入っては本棚を物色する。
それが僕の日課だった。父は怒らなかったが、困ったような表情を浮かべる。
母は無頓着だった。
だから、この日も父の書斎の本棚に貼りついていた。
学校にはない本が並んでいるのが面白い。
「悪夢の続き書?」重厚な皮に包まれた本だ。
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「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは現状打破のための嘘でした。
「君が居なくても何も変わらないさ」、と。
・・・どうしようもないな。」
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僕は、君から目をそらしながら最後の嘘をついた。
君と視線を合わしたら、嘘だと分かってしまうだろうから。
それは現状打破のための嘘だった。
「君が居なくても何も変わらないさ」と。
すぐにバレるような嘘だった。
本当に僕は・・・どうしようもないな。
こんな嘘が最後の嘘だなんて恥ずかしい。
短冊を渡されて困った。
願い事を書くのに、途惑ってしまったからだ。
自分が願っていることを正直に書けばいい。
そう言われてさらに困った。
渋々ながら、筆を取る。
『君が僕以外の誰かを好きになりませんように。好きになった奴が死にますように』
それを君は見て「なんて物騒な願い事」と言う。
「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」君が尋ねた。
「意味なんてないよ。したいからしているだけ」と僕は答えた。
回答はお気に召さなかったようだ。
君は不満そうな顔をする。
どう答えれば正解だったのだろうか。
僕は、君に格別親切にしたつもりはない。
自然に優しくしているだけだった。
『言葉の歩幅を』
おしゃべりな君が言う。
「言葉の歩幅をそろえて、どこまでも一緒にいましょう」どちらかという言葉の少ない僕には難題だった。
「私はあなたを愛している。あなたは?」君が尋ねる。
言葉の歩幅をそろえるのなら「僕も君を愛している」と照れながら言う。
君は嬉しそうだ。
『後書きで逢えたら。』
白含めの部屋で機械音が静かに響く。
息が詰まるような部屋だった。
「あのね」ベッドの上の少女が笑う。
また痩せたのだろうか、儚げだった。
「あなたという本の後書きで逢えたら。素敵なことだと思うの」と少女はひとつひとつ大切に言う。
「本編には出ないのか?」
『海は私が恋しい。』
電車を乗り継いで海が見える場所まで来る。
少女はさっそく靴を脱ぎ、裸足で波打ち際を歩き出す。
青年はぼんやりとそれをながめる。
一通り浜辺を歩いて落ち着いたのか、少女が戻ってくる。
「海は私が恋しい。っていうのよ」不思議なことを言う。
「逆じゃないのか?」
「iotuは、少しだけ震える声で最後の嘘をつきました。
それはたぶん最低の嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
いっそ笑い飛ばしておくれよ。」
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僕は、少しだけ震える声で最後の嘘をついた。
それはたぶん最低の嘘だった。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と。
幸せになりたがる君に告げた。
これで僕たちは心の迷子になる。
幸せはいつも傍にあるというのに、否定した。
君が見つけた幸せがほしい。
そんな僕をいっそ笑い飛ばしておくれよ。
土曜日のデートは延期になった。
つまらなくなって、一人で街をぶらつく。
そこで女の子と一緒の彼氏を見つけてしまった。
楽しそうな様子に思わず姿を路地裏に隠した。
次の日、彼氏は待ち合わせ場所に笑顔でやってきた。
私は「言わなくても分かるから」と冷静に言った。
彼氏は小箱を取り出した。
逆十字のピアスをしている青年が挨拶代わりに、剣を振るった。
浮かぶ表情は嘲笑。
神剣・神楽を抜刀する。
それと同時に、結界を展開する。
これで、どれだけ血まみれになっても、驚く通行人はいなくなるだろう。
血飛沫で逆十字のピアスをしている青年が霞む。
どれだけ血を流せば終わるのだろう。
幼馴染と同じ高校に受かった。
学校まで続く桜並木を歩きながら、また三年一緒にいられることを噛みしめていた。
「緊張してきた」幼馴染が言った。
「腕を貸そうか?」いつものやりとりだったはずだ。
それなのに幼馴染は恥ずかしそうに、俯いて僕の腕をぎゅっと握る。
震えが微かに伝わってきた。
『ハッピーバースデーケーキの上で
ひとりで待ちぼうけ。』
誕生日は毎年、ケーキを食べていた。
幼い頃からの習慣だ。
独り暮らしの今も、ケーキを買ってきた。
けれども、ホールのケーキは大きすぎたか。
ハッピーバースデーのケーキの上でひとりで待ちぼうけ。
誰かと食べたかったと思う。
『恋すれど後悔すれど』
「続き、なんて書く?」と紙を見つめた親友が尋ねる。
シャープペンシルで書かれた几帳面な文字列だった。
『恋すれど後悔すれど』と書かれていた。
「私は忘れられない、とか?」私は答えた。
「情熱的だね」親友は髪を耳にかける。
そして私の言った言葉を書きつけた。
『私だって毎年咲けよ』
緊急事態宣言が解除されたせいか。
それとも日本人特有の行動パターンなのか。
桜が咲いた公園は人でいっぱいだった。
誰も彼もが笑顔だった。
それを見ていいな、と思ってしまった。
咲いただけでこんなにも人を幸せにできる。
そんな自分になりたい、と心の中が焼けた。
虹の橋が架かっていたから、それを滑り台がわりに地上に降りたよ。
こっちは雨が降っていないんだね。
帰りはどうしようか。
たんぽぽの綿毛につかまって、風に乗って飛んでいこうか。
花が綺麗な季節だから、地上もいいものだね。
特にお気に入りなのは『ソメイヨシノ』と呼ばれる桜だよ。
白くて綺麗だ。