忍者ブログ
ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『嘘降りの夕闇に』

あなたは雨が降るように嘘をつく。
自然に、さりげなく、肩を濡らすように。
夕焼けの中であなたは『ずっと一緒だよ』と微笑んだ。
その赤さが嘘降りの夕闇に溶けていくようで『ああ、また嘘をつかれたのだ』と納得した。
私が頷く間に、太陽はすっかりと沈んでいった。
PR
『幸せかけ過ぎた朝食』

あなたから『別れよう』と言われた。
恋人同士になった時、初めて訪れた喫茶店だった。
恋人同士から、同棲を経て、結婚式を挙げた。
あなたは少ない荷物を持って、家から出て行った。
私は独りで朝食を食べた。
幸せかけ過ぎた朝食を作りすぎたから、ダメだったのね。
『恋の手紙』

故郷から遠く離れたあなたへ何通もの手紙を書きました。
息災を伝える手紙はどれほど溜まったでしょうか。
あなたが目にする手紙だから、丁寧な文字で、慎重に書きました。
これが最後の手紙になってもいい、と思って恋の手紙を綴りました。
あなたからの返事はあなた自身でした。
「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「これ以上関わらないでくれ」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

------

僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
それは前を進むための嘘だった。
「これ以上関わらないでくれ」と。
君が傷つかないように、これ以上背負うものがないように優しい声で告げた。
それでも、君の瞳は大きく見開かれる。
頼むよ、ごまかされてください。
君に対して、最後の嘘にするからさ。
政略結婚をすることとなった。
王族に産まれたのだから、いつかはやってくる日だ。
そのために勉強をし、そのために礼儀を学んだ。
恋というものをしたことがなかったから、未練があるとしたら、家族と会えなくなるということだけだった。
夫になる人は優しい人だった。
望んでいなかった幸せだ。
両親と血の繋がりがない、と知った時は衝撃が強かった。
本当の両親に会いたい、と思ってしまった。
けれども、本当の両親とは会わせない、という約束があった。
成人した今、それがどんなにも良いことだったろうと思った。
義理の両親は充分すぎるぐらいに、慈しんでくれた。
感謝の言葉しかない。
格好悪くてもいいや。
このまま君と一言も喋らずにお別れするよりも、ずっといい。
僕はさりげなく、自分の両手をぎゅっと握る。
「あのさ」僕は君に声をかける。
泣きそうな顔をして、君は振り返った。
「仲直りしようよ」と僕は言った。
すると君の目からボロボロと涙が零れた。
「ごめんなさい」
『卒恋写真』

アルバムを整理していたら、ずいぶんと懐かしい写真が出てきた。
一つ歳上の先輩に、無理を言って撮らせてもらった写真だった。
先輩は写真が嫌いだったから、これ一枚しかない。
甘酸っぱい初恋が詰まっている写真だった。
卒恋写真とでも呼べばいいのだろうか。
私は目を細める。
『美しい名前の死体』

ブリザーブドフラワー、というものを知ったのはつい最近のことだった。
硝子ケースに入ったそれは朽ちることはないのだという。
それはまるで永遠を渡る死体。
美しい名前の死体だった。
時を止めたそれを白い手が硝子ケース越しにふれる。
どちらの死が早いのだろうか。
『あの橋を渡れば、君との思い出が見えてくる頃。』

ずいぶんとゆっくりと来てしまった。
君が待ちくたびれていないか、心配だった。
此岸で引き止める者が多かったからだ。
自分自身、名残惜しかったのも事実だ。
懐かしい君よりも優先してしまった。
あの橋を渡れば、君との思い出が見える頃。
「iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」、と。
・・・どうしようもないな。」

------

僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
それは相手を楽にするための嘘だった。
これから別れゆく僕らにできることなんて、たかが知れている。
君につく最後の嘘はどれほど悲しいだろう。
「寂しくなんてないよ。大丈夫」と。作った笑顔で言った。
我ながら、本当に・・・どうしようもないな。
「どうしたの?」君が尋ねた。
「なんでもないよ」と僕は笑った。
それを見た君は眉根をひそめる。
うまく笑えてないのは自覚している。
滑稽なピエロのような泣き笑いの表情をしているのだろう。
「大丈夫?」と君は再度尋ねた。
君には心配をかけたくなかった。
だから「大丈夫だよ」と僕は答えた。
完全な寝不足だった。
ついつい夜更かしするクセを何とかしなければ、と思いながら昨夜も夜更かしをしてしまった。
朝食は牛乳を一杯飲んだだけだ。
用意されていた朝食に悪かったが、気持ちが悪くて食べられなかった。
午前の授業中にお腹が空いて、今とは違った気持ち悪さを感じるのだろう。
君は恥ずかしそうに、僕の指を指先でつつく。
「してくれているんだね」僕の左手の薬指にはシンプルなデザインの結婚指輪がはまっている。
それは君も同じで、永遠を誓った日から外したことはない。
紙婚式を迎えた僕らは奮発したワインで乾杯をする。
グラスとグラスを重ね合うとチリンと鳴った。
ずいぶんと君を待たせてしまった。
ようやく支度がすんで君の元へと行ける。
目から光が失われ、耳からも音が遠のいていく。
狭き門をくぐり辿りついた先に、君はいなかった。
天使に訊くと神様に愛された君は特別に地上に降り立ったという。
天国なんか二度と行くもんか。
PREV ← HOME → NEXT
プロフィール
HN:
iotu(そら)
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
フリーエリア
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH