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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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何故だかわからないけれど、部屋の片隅にいると安心した。
薄暗がりの中、膝を抱えて、過ごす夜は独りぼっちだというのに。
なんだか自分にふさわしいような気がした。
明るい朝を待って、秒針が時を刻む音を聞いていた。
目をつむれば眠れそうな気がしたけれど、このまま朝を迎えたい気分だった。
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ご自慢の羽根で青空を飛んだ。
敵情視察だった。
情報を制すものは世界を制す。
それはあちら側も同じだった。
羽根を持たない敵は、地上から鉄砲を放ってきた。
予想外の痛手を受けてしまった。
掠り傷の羽根の痛みに目を瞑る。
できるだけ早く本拠地に戻らなければ。
流れる血を感じながら滑空した。
ソファの上で並んで、借りてきたDVDを観ていた。
タイトルだけで選んだから、内容を確かめなかった。
どうやらホラーだったようだ。
お化け屋敷も怖がる君は目を逸らしつつ、僕の両手のひらにしがみつく。
失敗したかなと思ったけれども、君が近づいてくれるのが嬉しかった。
僕は君の悲鳴を聞く。
手紙代わりに、そっと黄色い百合の花が机の上に置かれた。
情報通信方法としては古めかしいだろう。
百合の花を置いた人物は耳元で『新人には気をつけろ』とささやいた。
確か、黄色い百合の花言葉は『二面性』。
スパイかもしれない、ということだろう。
私は「ありがとう」と微笑んだ。
『酔っぱらい地下鉄ホームラン』

酔っぱらいたちは不要になった傘をバッドに、輝く電球をボールに置き換えて、振りかぶる。
いつの日かノックしたように傘を振りぬく。
ボールは場外ホームランだ。
かつてはできなかったことを酔いの中で叶える。
地下鉄は滑るように列車がやってきて試合終了。
『せめて決心を』

時間というものは有限だということを知った。
限りがあるからこそ、輝くのだと知った。
それは痛みを伴なってくる。
初めての恋を終わらせる前に嫁ぐことを決められた。
せめて決心をするだけの時間が欲しいと願う。
それが家のためなら、心だけは置いていきたい、と思った。
『アフター・アフター・アフター』

物語の外に出たアフターは、いくつ目だろうか。
いくつものエンディングを迎えて、物語を終わらせてきた。
いわば、これはエンディングの後のアフターだった。
誰かが知りたいと願ったハッピーエンドのその先だった。
物語の終焉に飾られるアフターだった。
「iotuは、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。」

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僕は、どうしようもなく泣きたい気分で最後の嘘をついた。
いっそ、泣けてしまえば楽だったのかもしれない。
それは傷をいやすための嘘だった。
「まだ一人で生きていける」と。
覚悟も、意志もないくせに、言葉だけは立派だった。
こんな酷い嘘は、もう二度と吐けない。
心の傷が大きく開いていく。
そばにいてほしい、と思うのは贅沢なのだろうか。
こんな淋しい夜は一人きりで、やり過ごすのは辛い。
声が聴きたい、ぬくもりを感じたい。
一緒に言葉を交わして、笑いあいたい。
優しいあなたに言えば、我が儘を叶えてくれるだろう。
だから余計に言葉にはできない。
あなたの負担になりたくない。
電車に揺られていた。
握っていた携帯電話が振動した。
手元を見るとメールが一通、着ていた。
送り主は懐かしい名前が入っていた。
もう何年も会ってない旧友だ。
メールを開けると『顔を上げてみて』と表示されていた。
すると偶然だろうか、目の前に旧友がいた。
邂逅というのはこのことだろう。
そんなにいいもんかな、と青年は波打ち際ではしゃぐ少女を見ていた。
ご褒美に何が欲しい?と尋ねたら『海に行きたいです』と少女は言った。
原始の海というからには海には何かが詰まっているのだろう。
青年には理解ができなかったけれども。
帰ってきた少女は堂々と、指先を折れんばかりに握る。
風に揺れる灯火は儚く、今にも消えそうだった。
天に輝く星たちの方が、よっぽど明るいだろう。
そんな灯火を手にして、兄妹と鬱蒼とした森を進む。
もう帰る場所はなかったから、身をより合わせて、灯火を頼りに歩き続けた。
灯火の心細さと輪唱するかのように、妹の目から涙が零れた。
「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
これが本音なら、楽だったのに。」

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僕は、感情を抑えながら最後の嘘をついた。
それは自分が楽になるための嘘だった。
ダンジョンの中、君を逃がすにはそれしかなかった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と。
これが本音なら、楽だったのに。
獰猛なモンスターを前に、刃を構える。
最後が最期にならなければいいな、と思った。
初めて婚約者と顔を合わせた。
どうせ政略結婚だから、結婚式まで顔を見なくてもおかしくなかった。
一応、親も気を使ったのだろう。
私は「死体みたいな顔色ね」と言った。
ブルーブラッドのお貴族様らしい肌色だった。
「素直じゃないとこも可愛くてよろしい。気に入ったぞ」と婚約者は言った。
わざと帰り道を遠回りした。
君にも分かっていただろうけれども、何も言わなかった。
沈黙を埋めるように、二人の足音がリズムを生み出す。
僕も君ももう少しだけ、一緒にいたかったのだ。
本当に少しだけ、あと少しだけ、夕日が沈む間だけ。
ここで『サヨウナラ』は少し寂しいじゃないか。だから。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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